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母に恋人  作者: 玉城毬
4/10

母と電話(10年ぶり)

「もしもし、藍?」

 店を出て、長く待たせた電話に出ると、懐かしい声が聞こえてきた。

「……久しぶり」

 第一声は、ちょっと照れくさい。

「よかった、元気そうで。

 明けましておめでとう」

「今年もよろしく……。

 元旦から、初売りでも行った?」

「ああ、お友達とカラオケ新年会だったのよ!

 盛り上がったわ~~。

 着信気づかなくってごめんなさいね」

 マイペースな母は健在だった。

「年賀状見たよ。

 田中さん、素敵な人だね」

「でしょう!?

 うれしいわ~~」

「さっきまでお茶してて、二人の馴れ初め聞いちゃった」

「えっ、もう和男さんに会ったの??

 驚かせたかったのにーー」

「年賀状で十分、衝撃だったよ。

 ちょっとパニクったけど、うれしいサプライズだった。

 ーーおめでとう、お母さん!」

「藍ーー。

 ありがとう~~」

 感激だったのか、少しの間、沈黙していた。

 息を整えた母は、話し始めた。

「藍、今、田中さんちの近くなのよね?

 この後、空いてる?」

「まぁ、お正月休みだからーー」

「よかったら夕飯に来て!

 ああでも、和男さんに確認してみるから、一旦切るわね」

「ちょっと!!」

 私の返事を待たずに、母は通話を切った。

 人の話ちゃんと聞かないで突っ走っちゃうんだから。

 ……。

 まあ、いっか。

 これといって予定のないお正月、久しぶりに家族に会うのもね。

 田中さんちには息子さんとお孫さんもいるから、家族が多くて気まずくないだろうし……。

 おせち料理も食べられるしねっ。

 すっかり気持ちはほぐれ、訪問がむしろ心待ちになっていた。

 3分後、母からの電話。

「和男さん、了解してくれたわ!

 どこかで2時間くらい時間つぶしてから、また来てくれる?

 お母さんもこれから帰宅して準備するから」

「わかった!

 お店でなにかお菓子買ってこうと思うんだけど、食べられないものある??」

「えーーと……。

 なかったかな。

 お任せするわ」

「了解、ところで、私の実家の荷物、処分しちゃった!?」

「大丈夫、まとめて引っ越して置いてあるわ!

 ちょうどいいから、来たついでに整理してって」

「……。

 わかった、じゃあまた後で」

 通話を終え、最寄りのデパートで服や化粧品をチェックする。

 お菓子はなににしよっかな~~。

 あーー、冬だからチョコレートコーナーが充実!!

 うーーん、けど虫歯とかやばいかなぁ……?

 考えた結果、チョコクッキーにした。

 そろそろ、約束の時間15分前になった。

 買い物を終えて、私は再び田中さん宅へ向かった。

 途中の小さな公園を通りかかると、子連れ家族が結構遊んでいた。

 大人は寝正月万歳だけど、子どもは体動かしたいよね~~。

「伊央ーー、そろそろ帰るぞ!

 お客さん来るから」

「お客さん、誰~~?」

「美桜子さんの娘さん」

 えっ!!

 聞こえた方を見ていると、父子が公園出口の自分の方に歩いてくるのが見えた。

 急いで母の年賀状を取り出して、確認する。

 やっぱり!!

 私は年賀状を片手に、思い切って二人に声を掛けた。

「すいません、田中さん……ですか?

 野村藍です」

「え、あっ!

 美桜子さんのーー。

 どうも初めまして、翔太です。

 こっちは息子の伊央です。

 伊央、美桜子さんの娘さんの、藍さんだよ。

 ご挨拶して」

「こんにちは」

「こんにちは、伊央くん。

 藍です、よろしくね」

 近所で出くわした私達は、驚いて挨拶を交わしながら、田中さんのおうちに一緒に向かった。


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