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母に恋人  作者: 玉城毬
2/10

母の新居

 なんじゃ、こりゃ……!

 にこやかに笑い合う母達の写真を見て、「結婚しました」「新しい家族が誕生しました」みたいな、年賀状幸せ家族アピールを感じた。

 新年早々、頭が痛い。

 去年、文がなかったのは、このためか!

「……」

 遊びに行っていいなら、確かめさせてもらおう!!

 一応年賀状の返事を手早く書いて、私は母からの年賀状と両方を持って出かけた。

 母の新住所は30分ほどでわりと近く、すぐに着いた。

 新しめの、きれいな戸建て。

 人の気配はなかった。

 呼び鈴を押して1分ほど待っていたが、案の定、留守だった。

 お正月だからゆっくりしてるかと思ったけど、やっぱり突然の訪問じゃこうなるか……。

 10年かけてない母の電話にコールする。

「留守番電話サービスに接続します」

 即座に電話を切った。

 ……仕方がない、年賀状だけ投函して、帰ろう。

 私が立ち去ろうとすると、少し離れたところで立っていた初老の男性が声をかけてきた。

「うちになにか、ご用ですか?」

 振り向くと、その人は母の年賀状の写真のなかの一人だった。

 接触できた、と喜ぶ一方で、母のパートナーかもしれない、と緊張が走った。

 私は母からの年賀状を差し出し、切り出した。

「こちらを頂いた件で伺いました。

 野村の娘の藍です」

 ああっ、と男性はわかりやすく反応し、察したようだった。

「美桜子さんの娘さんですね?

 初めまして、田中和男と申します。

 家族みな、お世話になっております」

 田中さんは丁寧にお辞儀した。

「こちらこそ、母が大変お世話になっているようで……。

 突然来てしまってすいませんでした!

 さっき母に電話したんですが、繋がらなくって。

 また出直しますね」

 私が帰ろうとすると、男性は慌てて引き留めた。

「せっかくいらしたんだから、少しお話でも……!

 ああでも、恋人の娘さんと二人きりになるわけにはいかないしーー」

 慌てふためく田中さんの姿に、私はくすっと笑ってしまった。

 気にしませんよ、と言いかけながら、まぁそうだよね、と考え直した。

「じゃあ、どこかお店でお茶しながら、母のこと教えてくれませんか?」

 田中さんもほっとして、笑顔になった。

「それがいいね。

 じゃあ、一番近くのお店に案内するので、ついてきて下さい」

「よろしくお願いします!」

 私は、田中さんの後についていった。 


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