死神ですが?
「お、お前誰だって聞いてんだよ!」
まだ膝が震えている。でも、精一杯の威嚇のために、声を張り上げた。
「あり?人だ」
今頃気づいたのか!....そうじゃなくて!
「あ、もしかして見られてた?」
「そ、それより....こいつ何とか....!」
「ああ、ちょっと待ってて」
そういうと彼は黒い影に近づき、頭らしき部分を掴んで........
「いただきまーす」
「........へ?」
く、食った!?う、うおぇ........。でも彼はとても美味そうに、手をもぎ、足をもぎ、胴体を噛みちぎり、全てペロリとたいらげた。
「う........な、何やってんだお前!」
「ん?あ!」
そういうと彼は急に何かを思い出したように、俺の前に座って両手を合わせた。
「た、頼む、今見たことは誰にも言わないでくれ!じゃないと俺捕まっちゃうんだよ!」
つ、捕まる?何のことだかさっぱりだ....
「頼む!な?命を助けたと思って!」
一生懸命に頼む姿に、折れないわけには行かなかった。
「い、いいですよ別に。話したところで誰も信じねぇし。そもそも話す相手いねーし...」
「ま、マジで!?よかった........」
しばらく無言が続いた後、彼は自己紹介を始めた。
「俺は死神。この世に強い執着を持つ死人を倒すためにこっちに来てんだ。さっきのが死人だな」
「........は?死神?」
「そ。まぁでも現世に来たのは面白そうだから、ってのが本音なんだけどね」
「おい何だよ。一瞬スゲーと思っちゃったじゃねーかよ」
「で、何で襲われてたの?」
「いや知りませんよ!」
「何かしてたのか?」
「普通に家に....そうだ家に帰ってたんだ。もう帰っていいっすか?」
それを聞くと彼は、何言ってるんだとでもいうように、鼻で小さく笑った。
「帰すわけないじゃん。秘密とか知られたし」
「........え?」
「とりま一回地獄行こうねー」
「えええっ!何で『一回署に行こうねー』みたいに言うんですか!そんな軽々しく....!」
俺の抵抗もむなしく、彼は俺を引きずる手を止めない。
「気にしない気にしない、さ、行こ☆」
「い、
いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
さっき彼が出てきた穴に、徐々に引きずり込まれていく。俺の絶叫は、こだまとなって消えていった........