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声文~koebumi~  作者: mimori
第5章 ぬくもり
11/13

~11~

 そんな中、そっと彼の腕が伸びてきて、佑香の身体がグイと引き寄せられた。



(え……?)



 佑香は何が起こったのか一瞬分からなかった。

 彼の大きな腕が佑香を包み込むと、息が詰まる程に強く抱き締めてきた。 



「すみません、天羽さん……僕はあなたにそんな答えを期待していませんでした。何が何だか分からない……どうしようもなく……嬉しくて――」



 彼の心音とその言葉が重なって聞こえる。

 何が何だか分からないのは、佑香も同じだった。



「それって……信用してもらえたんですか、私……?」


「こんなに真剣に怒ってくれる人を、疑ったりなんてできません。本当に……ありがとう」


「じゃあ、いいんですか? 私があなたの傍にいても?」


「もちろんです。お願いします、どうか僕の傍にいて下さい」



 佑香の涙は止まらない。

 そのまま彼の胸に顔を埋めて泣き続けている。



「あの、天羽さん、まだ許してもらえませんか? 僕は本当にあなたの事――」


「ち、違うんです……これは……嬉し泣き、なんです」



 ほっとした彼の顔が優しく緩む。



「良かった……」



 彼はもう一度佑香を抱きしめ直そうとした。

 そこでふと何かに気付くと、佑香から少し体を離した。



「そういえば天羽さん、上着はどうしたんですか?」


「え、あ……持って出たつもりだったんですけど、慌ててたから……どこかに落としたのかも」


「一旦来た道を戻りましょう。もしかしたらさっきの喫茶店にあるかも」



 彼は自分のコートをふわりと佑香に掛けてくれた。


 

「とりあえず今はこれで我慢してくださいね」


「が、我慢なんて! でも、これじゃ中山さんが……」


「大丈夫ですよ。あの喫茶店からそんなに離れていないし、こうすれば僕も温かいから」



 そう言って佑香の肩を抱くと、ゆっくりと歩き出した。

 当たり前のように接してくる彼の行動に、佑香はいちいちドキドキとした。



(でも、本当に温かい――)



 夢なら覚めないでほしい……そう思わずにはいられなかった。


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E★エブリスタ
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