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歴史


少し狭い部屋の中、中央に冷たさを感じる白いテーブル、周りを木製の椅子が雑然と囲んでいた。

窓から見える景色は、ここが高層ビルの一室であることを教えてくれる。



私はその六畳程度の小さき部屋に入場すると同時に、一畳の半分に立つ大きな鬼を見た。



「はい、三行で謝罪して。長瀬ちゃん。」



「ごっ

 めぇぇぇっぐ。

 んっなさい!目黒めぐろせんぱいぃぃぃ~。」



クランルームに入場した私は直ぐに、仁王立ちで待っていた目黒めぐろ 優佳ゆうか先輩に肩を捕まれて前へ後へ、ぐわんぐわんされました。

彼女は銀色のラメがかった金髪を後で結っており、、血色が良く艶のある肌をしてました。

その豊満なスタイルを包んで隠すように白い巫女さんの服を、ゆったりと着ている。



「ごめんなさいじゃなくて、どうして遅れたのかしらー?」



優佳さんは笑顔だけど、目はどう見ても笑ってない。




「ちょっと道に迷っていたお婆ちゃんをスーパーまで連れて行ってて遅れました。いやぁ、人助けって大変ですよね。」



「夜の10時に買い物に行くおばあちゃんなんてどこにいるのよ!警察に届けなさい!」





キーキーと怒る優佳先輩をなだめるように隣に座ってやり取りを見ていた彼女は、どおどおと手を動かします。



「先輩、その辺にしとかないといつまでも練習できませんよー。」


「うっさいわね!この子は一回身体で分からせる必要があるのよ。千夏ちかはこのまま甘やかしてていいと思うのかしら。」



尋ねられた彼女は、何やっても変わらないと思いますよーっと受け流す。


中学からの友人である雪崎ゆきざき 千夏ちか。世渡り上手な彼女は曇りのない笑顔を先輩に向けていた。


彼女はジーパンツに無地のシャツという格好だが、モデルみたいなスタイルをしているので、すごく、かっこいい。

短くて犬みたいな髪、モシャモシャとしたこげ茶色から活発な印象が伺える。




そこでの現実の私はと言うと、頭を揺らされているという情報がヘッドセットについた外部端末から脳へと伝達されていた。

実際はリクライニングチェアに座っている真琴まことだが、脳に伝達された信号によりモニターにリアル3Dで映し出される

部屋の空間と、そこにで揺らされてるアバターの状態が現実の自分にフィードバックされるので、ゲームの中にいるとの錯覚を起こす。




「そ、それで目黒先輩。今日は何をするんですか?三人しかいませんけど。」


疲れた頭にこんなことが続くと気持ち悪くなるので必死に話題変更を試みる。


「確かにそうだねー。優佳さん何するんですかー?」


千夏ちかも援護射撃をしてくれる。



優佳先輩は少し考えた後に、これぐらいしか思い浮かばないといった感じで、首を少しだけ傾けながら、まっさらな笑顔で


「三人で、殺し合い?」


「物騒なゲームですね。他に言い方ないんですか?」







PIWの本来の使い方であるガンシューティングによるプレイヤー達の試合。

今でこそ、様々な情報が軍事関係者から提供され武器等に縛りはない。使おうと思えば戦闘機やICBM(大陸間弾道ミサイル)

なんかも持ち出せる。でも今日の練習は銃で、銃だけを持ち合い、一秒でも長く生きるというゲームになった。






「昨日と同じでつまんないと思うけど、真琴はショットガン、千夏は軽機関銃と、拳銃ね。それぞれ100MTマネーポイント以内でレンタルしてくること。」



「了解です。」

「分かりましたよー。」


これからの 殺し合い(トレーニング)で使う武器を購入するために今入ってきたばっかりの扉に触れる。



「30分には始めるから、ち こ く するなよ?」


町へのテレポートが始まり、体が透明になっていく途中、千夏は敬礼をビシっと決めるのでした。

私はと言うと、背を向けたまま舌を思いっきり出して逃げるのでした。







二人のいなくなったクランルームで、巫女服の少女は一枚の紙を手に取っていました。




第11回TPIW世界大会。

一年に一回ペースで行われるPIWのチーム戦の大会で、年々出場者は増えていきました。

彼女達みたいな一攫千金を狙った高校生や中学生。有名な著名人や実際に軍に仕える人たちも参加していました。その大会は優勝賞金は日本円で1000万円ほど、

規模にしては大した額ではないが、毎年国々は自分の国の軍事力を示すために様々なプロチームを結成し、優勝を狙っている。

メディアにも大きく取り上げられるため経済は大きく動く。世界の富豪たちの中では毎年、勝つのは何処かで数千億が動いている。それほどまでに世界情勢に影響を与えてるゲームなのだ。




そんな到底勝てないゲームに、高校生は勝負を挑む。

彼女の念願でした。ゲームの為に青春の生活を捨てて、三年間つぎ込んできた目標だった。



紙はくしゃくしゃに成るほど両の拳を強く握り締めて。



大きく見えた彼女の体では、まだそれ程には大きくない心が戦っているのでした。
















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