スタート
ヘッドセットからは甲高い、雌鳥のさえずりの様だが、小さくした音量でも脳に突きつける大きな声が響いていた。
「おっそいッ!!時間厳守しなさいって昨日もいったでしょ!いつになったら時間みるようになんのよ!」
「まぁまぁ。落ち着いて優佳さん。まーちゃんは遅刻するき満々だったからもう諦めたほうがいいと思うよ。」
イライラしてる先輩をたしなめる声は女性にしてはやや低く中性的なイメージを受ける。
アカウント承認。ナガセ マコト様。
「まーちゃん早くきなよー。優佳さんがさっきから爆発しそうだよ。」
「私、C4 (粘土状の爆薬のこと)じゃないからね?」
ステータスを照合。現在のバージョンは最新です。
「ほんっとうの本当に!今度、遅刻したらあんたの練習量倍に増やすからね!」
「ヤバイよー。先輩今日は本気だよ?明日は用事早めにすませるんだよー。」
ゲームスタート
Welcome... PIW (PowerIntelligenceWar)
彼女のゲーム内の分身であるアバターが姿を露わにする。透けていたその形から色を持ち、電子情報であったそれらが
視覚的に捕らえやすく人に近い、好感を持てる姿になっていく。
彼女のアバターは、発育途中の小柄で起伏ない身体つき、白いワンピースからスラリと健康的な褐色肌の手足を覗かせる。
麦藁帽子の裾からは自慢の長い髪の毛を風で揺らしている。
真夏の太陽が照らす山の中で、ひと時の間水浴びで涼む女の子といった感じだ。清潔感が溢れ、かわいらしいと思う。
でもそれは、周りをビルに囲まれておりネオンの光が支配する、都市でなければの話。
彼女の髪を正に揺らしていたのは横を通り抜ける大型トラックで、それが何台も連なり、大地をも揺らしている。
交通の主要として存在するこの町では他の町に行く時に通行しなければならず、大小様々な車が行き交っていた。
ゲームスタート時の出現ポイントはフリーマップの場合ランダムで選ばれるので仕方がないことなのだが、顔には不機嫌ですと言わんばかりの
への字がくっついていた。
このPIWというゲームはもともとオンライン機能を使ってプレイする、よく見かける対人ガンシューティングゲームだったそうです。
少し人気が出ると、それに従い様々なコンテンツをマネして取り入れました。
まずは使用する銃のパーツを変えて性能アップとか、使用できるアバターの種類を今程ではないけど増加させたとかでした。
しかし、そんなことを続けていてる内にプレイヤー達も変化になれてしまい、このゲームから離れていきました。
過去の遺産として、そのままサービスを終了するのでした。するはずでした。
PIWが4年間の低迷期の中、様々なゲームが発表されていきました。
体に電極を貼り付けてボクシングをするゲームや脳波を受信することで考えるだけで動かせるゲームとか、
色々なゲームが発表されて、燃えて、冷めるの繰り返しでした。
同じくして、様々な対策を練って練りまくったPIWですが、数々のアップデートを続けても人気を取り戻すことは出来ません。
唯、それは各国軍事演習の一部として使用されるまでのお話。