プロローグ
2024年.5月.28日
時計の短針が夜の9時と半分を回ったところ。
一人の少女は明かりをつけていない部屋にいたが、その黒い瞳には青白い光を写していた。
部屋には余計な物はない、白の壁に床には黒い塗装が施された木目が広がっている。あるのは、横方向に長い透明なデスクに彼女の体にしては大きいリクライニングチェアとパソコンだけ。
彼女はその椅子に座り、真剣な表情で机の上に並ぶ複数のモニターを見つめている。
そのモニターは、彼女の体とは似つかない巨大な画面が一際大きな光を放っており、そこには常人では捕らえきれないほどの情報が巡っていた。
数回のクリック音が窓のない締め切られた部屋に響く。
数刻の後に満足げな溜息が彼女の口から漏れた。
強張っていた表情は緩んで疲れた体を、どかっと頭ごと椅子に預ける。
両の耳が朱色に火照り、どのくらい集中していたかが見て取れた。
マウスを握りなおし、メイン画面の右下にマウスポインタを合わせる。
表示された時刻は21時40分。
そろそろ時間だ。
「いっちにの、さーーんー・・・」
手を振って反動で上体を持ち上げる。
が同時に、今度はデスクに顔を擦り付けて突っ伏してしまう。
「エネルギーぜろぱーせんと。寝たい・・・。」
もうこのまま眠りにつこう。睡魔が体を支配していく。
もし今日が金曜日でなければこのまま寝てしまっていただろう。
少しの小競り合いの後、小指の差で責任感が勝利した。意を決し顔を上げる。
大きな背伸びと小さな欠伸。
時刻は21時42分。
彼女は服の襟元をスンスンと嗅いでしかめ面になった。何時も以上の緊張からか、少し汗をかいてしまった。
一度シャワーを浴びることを決めた彼女は、いそいそと画面に表示されているウィンドウをテキパキ閉じていく。
他国にいる仲間には軽くチャットで挨拶をする。必要な情報は保存されていき、全てのモニターは消された。
椅子を立ち上がると、また欠伸が出てしまう。少女は部屋を出て、スライド式の扉を閉める。
室内は完全な暗闇に覆われ、部屋では22時にセットされた時計のアラームが気づかれぬまま止まってしまうのでした。
22時6分。
再び部屋に帰った彼女は、時間を確認しつつ下着しか身に着けてなかったその身体に手早く青いパジャマを着せる。
華奢な白く伸びた四肢が綿100%のさらりとした生地を受け付ける。
上気した頬をタオルで擦りながら、マウスをクリックして休止モードのパソコンを復帰させる。少女の顔は照らされるが、部屋の明かりは点いていたため
眩しいとは感じない。
光を放つサブモニターはメインモニターの半分の大きさで、目を動かさなくともモニターを全て見ることが出来る程。モニターの下部、
通信機能のアプリケケーションにお知らせと書かれた点滅マークが幾つも主張をしているのに気が付くと、うえぇと不満を漏らしながらそのアイコンを広げる。
と、同時に着信中と書かれたアイコンがモニターを覆いつくす。
ヘッドセット(ヘッドフォンとマイクが一体になったもの)に親指程の外部端末が両のこめかみ付近に当たる様に乗っかっている。
まだ湿っている髪を掻き上げてカチューシャみたく装着し、スピーカの向きを調整する。
同時に、聴覚の保護のためパソコンの音量レベルが最小値に近いことを確認する。
「今日は何時に開放されるかなー・・・。」
体調管理でも重要度の最も高い睡眠時間、を心配しながら受話器のマークをクリックする。
彼女こと、長瀬 真琴 はゲームの世界へと身を移す。
こんばんわ、ぽっけんです。まずは、ここまで読んでくださり、有難うございます。さて、ここからのストーリーですが、この小説のタイトル通り、戦争、ゲーム、部活の三つで進行していこうと考えています。少しでも期待して待ってくれるなら大喜びします。
この小説は、出したら消える程度の書き溜めしかありませんが、毎週日曜更新を予定しておりますので、宜しければ今後とも見て行ってください。