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人気投票小話まとめ+新作小話

 人気投票結果を受けて、1位~3位キャラの小話を活動報告に公開していたので、それらのまとめです。

 今回、もう一人分新しく書き下ろしました!


 投票結果は、こちらで見られます。作品下部にもリンクを張っています!

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/596561/blogkey/1249150/

 

 

 

◆或る令嬢の教育◆

(ルイーゼが令嬢修行をしている頃の話)

※本編より3年前。ルイーゼが12歳。



 現世こそは、悪党落ちせず、ハッピーエンドを目指すのですわ。

 品行方正、深窓の令嬢を極めるために、ルイーゼは燃えていた。齢十二歳。十歳までは領地で過ごしていたが、今現在は王都に住んで令嬢修行中である。

 前世の記憶があるルイーゼにとって、社交界はそんなに緊張する場所ではない。

 ただ、前世までは貴族社会での振舞いについて最低限の礼節を身につける程度であった。貴族の社交は本職ではなかったので、仕方がない。使えない前世である。

 そのため、現世では一から令嬢作法の基本を学んでいる最中だ。


「こうですか、お母様。おーほっほっほっほっ!」

「違いますわ、ルイーゼ。もっと、気合いを入れてお腹から声を出すのですわ」

 一流の淑女たるもの、高笑いくらい嗜まなければならないらしい。母であるシャリエ夫人に指導されながら、ルイーゼは口元で扇子を広げた。

「おーほっほっほっほっほっ!」

「もっと、気持ちよく笑うのですわ」

 シャリエ夫人は楽しそうに笑いながら、ルイーゼの姿勢を正してくれる。腰に手を当て、胸を張る格好になり、ルイーゼは少々恥ずかしく思った。だが、これが令嬢作法の勉強なのだと思うと、気合いが入る。


 現世こそは、まっとうな令嬢として過ごして、ハッピーエンドを勝ち取らなければいけない。

 そのためには、完璧な令嬢作法が必要なのだ。前世で磨いた武術スキルは封印しなければ。あと、狡猾さも見せてはいけない。人を騙すのも、ダメ絶対!


 ただ、この姿勢での高笑い。どうも、既視感がある。


「お母様、この高笑いですが……どう考えても、悪役令嬢の定番スキルだと思われますわ」

「あくやくれいじょう? すきる? ふふ、それはきっと恋ですわね」

 シャリエ夫人には伝わらない言語だった。適当に流されてしまい、ルイーゼは苦笑いする。


 まあ、いい。これがフランセール貴族の令嬢作法だというのなら、完璧にマスターすべきだ。異世界だし、日本のネット小説で定着している悪役令嬢のイメージなど関係ないのだろう。


「おーほっほっほっほっほっ!」

 ルイーゼは腹の底から声を響かせて、心底気持ちよく高笑いし続けるのだった。






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◆或る王子の特訓◆


(ミーディアとエミールの特訓風景。第3章の裏側のようなもの)


 ルイーゼは、強い人が好き!

 筋肉を眺めてうっとりとするルイーゼの表情を思い出して、エミールはグッと拳を握った。

 あんな風に甘い顔をするルイーゼは、あまり見ない。なんだか、とても羨ましかった。

 僕も、少しは強くならないと……!


「いいですか、殿下」

 正面では、ミーディアが剣を構えている。

 動くので、ズボンを穿いて長い黒髪を一つに束ねていた。その姿はシエルとして男装していたときと同じように見えて、なんだか緊張する。

 基本の構えは教えてもらった。エミールは手に汗をかくのを感じながら、剣の柄を握る。

 最初は練習用の木の剣がいいと勧められたけれど、本物がどれくらい重いのか試してみたい。なにより、早く強くなりたかった。


「う、ぅ……ッ」

 しかし、剣を構えるどころか、持ち上げるだけでエミールの身体は傾いてしまう。鞘から抜くのも一苦労だ。

 腕にズンと圧し掛かる重さに耐えられない。手首が痛くて、掌もヒリヒリした。持ち上げるだけだというのに、こんなに上手くいかないとは思わなかった。

 みんな、軽々と振っているのに。軟弱者だと言われるアンリですら、剣を振る程度なら出来る。

 やっぱり、社交界に出るには、それなりに強くないといけないのかな。エミールは途端に不安になってしまった。


「大丈夫ですか、殿下?」

「う、うん……ご、ごめん」

 少し剣を持っただけなのに、エミールは目にいっぱい涙を溜めてしまう。泣きそうだ。剣が重くて手も痛いし、なにより、自信がない。

「殿下、元気出してくださいっ! 剣が持てなくても、大丈夫ですっ!」

 エミールに自信をつけさせようとしているのか、ミーディアはニパッと笑ってみせる。でも、気休めにしかならない。

 ふと、ミーディアは辺りを見回しはじめる。

 すると、ちょうどそこにルイーゼの執事が歩いていた。たぶん、ルイーゼの用事だろう。

「ちょうどいいです、見ていてください」

 物陰から見ているように指示して、ミーディアは軽い足取りでジャンの前に走っていった。エミールはなにが起こるのかドキドキしながら、二人の様子を見守る。


「失礼します!」

「はて?」

 ミーディアは首を傾げるジャンの前で律儀に礼をする。

 そして、一瞬でジャンの腕を掴み、そのまま小指を握ってあらぬ方向へ捻じ曲げた。

「あああああッ! ミーディア様ッ、どうされましたか!? とても、よろしゅうございますぅぅうあああ!」

「ていっ!」

 突然襲撃されたにもかかわらず、嬉しそうに身をよじるジャンの腕を掴んだまま、ミーディアは更に踏み込んだ。鮮やかな動作でジャンの懐に潜り込むと、ガンッと爪先を思いっきり踏み抜く。


「よろしゅうございます、よろしゅうございますよッ! 突然の襲撃、いいえ、ご褒美。ジャンは幸せにございます! 是非、お嬢さまにも、やって頂きとうございますッ!」

「ごめんなさいっ!」

 ミーディアは最後にそう言うと、喜び悶えるジャンの股間を力一杯蹴りあげた。その表情は非常に爽快で、とても楽しそうに感じられた。

 エミールはその一挙一動を見て、両手を握りしめる。


 すごい。これなら、僕にも出来る気がする! ミーディア、頭いい!


「どうですか、殿下。簡単でしょう?」

 爽やかな笑顔を浮かべるミーディアを見て、エミールはコクコクと夢中で頷くのだった。


 僕、絶対に強くなる!






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◆或る騎士の煩悩◆


(クロードの小話。ロレリア城で過ごしていた頃の話です。へたれクロード嫌いな方はごめんなさい)

※クロード、セシリア共に14歳。



「ねえ、クロード」

 唐突に声をかけられて、クロードは引っ張られるように後ろを振り向いた。同時に、片頬にツンと指先が当たるのを感じる。

「……なんですか、セシル?」

 悪戯っぽく笑いながら、頬をツンツンと突くセシリアから、クロードは目を逸らした。

 正直、こんな至近距離で侯爵家の令嬢に頬を突かれている状況が理解出来ない。意味がわからない。なんだこれは、夢オチか? ドッキリか?


「特に意味はなくてよ。機嫌が悪そうでしたから、少し和ませて差し上げようと思いましたの」

「別に機嫌は悪くないですよ。いつも、こんな顔です」

「そうかしら。だったら、こっちを向いて笑ってみて?」

 セシリアはクスクスと笑いながら、クロードの視界に回り込む。計算高くて、したたかな笑みだ。こんな笑い方をしているときは、たいていクロードの反応を見て楽しんでいるのだ。

 クロードは気恥ずかしく思いながら、表情を隠そうと手櫛で黒い前髪を顔に垂らす。その動きが不自然だったせいか、セシリアは本当に楽しそうな表情で笑った。


「思った通りの反応で安心しましたわ」

「……お戯れはよしてください。俺はオモチャではないので」

「あら、そんなこと、一度も思ったことはございませんわ」

 そう言いながら、セシリアは表情を変える。純真な少女そのものの笑みを浮かべると、彼女は両手を広げてみせた。


「あなたと話すのが、とても楽しいだけですわ。きっと、結婚したら毎日楽しいと思うの」

「け、けっこん!?」


 思わず声が裏返らせながら、クロードは後すさった。

 表情を見られないように片腕をあげて隠すが、あまり意味はないように思われる。

 顔から火が出るほど熱い。不味い。恥ずかしすぎて死ぬ。初めて、刺される以外の方法で死ぬ気がする。

「ご、ご冗談を! 俺はオモチャではないと言っているだろッ!?」

 物欲しそうに見上げているセシリアを押し退けて、クロードは足早にその場を去る。


 まったく、いつもいつも、セシリアはこんなことを言って自分を困らせるのだ。

 彼女は侯爵家の令嬢で、自分は爵位を持たない雇われ兵士。発言には気をつけてもらいたい!

 悩ましげに振り返ると、セシリアが変わらない表情で笑っていた。相変わらず、計算高くて、なにを考えているのかわからない。


 結婚か……結婚。セシリアの子だったら、やはり綺麗な金髪か。それとも、自分と同じ黒髪か。男だったら、勿論、武術を惜しみなく仕込んでやろう。女の子は可愛いけれど、嫁いで行ってしまうと寂しい――そこまで考えて、クロードはブンブン首を横に振った。いやいやいやいや、俺はなにを考えているんだ!?

 阿呆みたいな思考をリセットしたい。ここらで、都合よく首を狩ってもいい侵入者でも現れないものだろうか。

 悶々とした気持ちを抑えようと、刀を抜いて延々と素振りをするのであった。






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◆或る夫婦の密月◆new!!


(書きたくて書きました。微エロ注意。「或る伯爵の告白」の直後くらいの話。重ね重ね言いますが、書きたくて書きました)

※カゾーラン21歳、リュシアンヌ18歳。



 延び延びになっていた婚姻の契りを結んで最初の夜。

 正確には、初夜ではない。式の夕方に急用が入ってしまい、結婚式から数日、館に帰ることが叶わなかったのだ。

 忙しい仕事なので妻も理解していたが、やはり、結婚した直後の数日を別々に過ごしてしまうことは、カゾーランとしては気まずい心境となっていた。


 今日こそは帰ると約束したものの、もう深夜だ。月が空高く上がり、人々が寝静まった頃合いである。

 流石に待っていてはくれないだろう。カゾーランは重い息をつきながら、リュシアンヌの寝室を覗いた。

 予想通り、部屋は暗い。寝台横のテーブルには溶けた蝋燭が固まっており、遅くまで待っていたことがうかがえる。


「すまないな」

 小さく詫びながら部屋に滑りこむと、寝台の上でリュシアンヌが横たわっていた。布団も被らず、薄すぎる夜着で身体を丸めている。

「はあ……」

 誰の入れ知恵かわからないが、無意味に透ける薄い服だ。肌着の方がマシだろう。

 正直、色気があるとか欲情するとか、そんな感情よりも、寒いから早くなにか着せなければと焦ってしまう。実際、今宵はいつもより冷える。

 とりあえず、布団を被せてやろうと、カゾーランはそっとリュシアンヌを抱えた。毛布も使用人に取って来させた方が良い。


「んぅ……えりっく?」

「すまん、起こしたな」

 朦朧とする意識でリュシアンヌがカゾーランを見上げる。

「来てくれないのだと思っていましたわ」

「約束は約束である」

 眠そうな顔を撫でてやると、リュシアンヌが手を重ねてくる。緊張しているのか、強張っていた。


「今日はもう眠かろう。無理はするものではない」

 半ば呆れながら、カゾーランはリュシアンヌを寝台に横たえてやる。すると、リュシアンヌは眠い目を擦りながらも、必死に訴えてきた。

「で、でも、あたくしはあなたの妻で……ちゃんと役目を果たさないと……!」

「そんなもの、これから先いつでも果たせるではないか」

「ちゃんと予習もしましたのよ! セシリア様と一緒に!」

「予習の結果が、その寒そうな格好だと言うなら間違っているとしか言いようがないのだが……いいから、服を着て寝た方がいい」

 セシリア王妃は毎度毎度、リュシアンヌに変なことを教え込んで……カゾーランは頭を抱えてしまう。

「エリックは、黒の方が好みだったのかしら!?」

「脱げば一緒なのだから、そこにこだわらなくとも良いっ!」

 思わず切り返すと、リュシアンヌはしょぼんと視線を落としてしまう。叱られた子供のように落ち込んでいる。十八の娘には見えない幼い仕草だ。

 なんだか、こっちが悪い気がしてくる。


「だって、エリックは、その……いろいろ知っているのに、あたくし……なにも知らなくて。不安で……」

 面倒くさい。そう思う一方で、可愛らしくて仕方がない。カゾーランは妙に毒気を抜かれて、無造作に纏めた赤毛を搔いた。

「そんな気を回さなくとも良い。それに、その……そういうことは、私が全て教えてやる」

「忙しいのに、あまりエリックの手を煩わせるのも……」

「わざわざ言わせるなッ。そうしたいのだ!」

 どうも波長が合わない。煩わしく思って、カゾーランはリュシアンヌの身体を抱き締め、耳元で囁く。ズレたことを言っていた唇が震え、みるみるうちに動揺していくのがわかった。


「な、なにを、教えてくださるのかしらッ。肌着の好みですかッ!?」

「……そこから離れぬか?」

「だって、――ひっ」

 首筋に口づけると、リュシアンヌは急に黙ってしまう。ガチガチに固まった身体を解すように、カゾーランはリュシアンヌに覆い被さった。

 花の蕾のような唇に軽く口づける。それだけで、リュシアンヌの顔が赤く染まっていることがわかった。暗い部屋などではなく、灯りをつけてじっくり眺めたくもなる。


「エ、エリック、やっぱり眠いので、また今度に……!」

 耳の後ろに唇を寄せると、面白い具合に力が抜けていった。色気があるわけではないが、反応が良すぎて、もっといろんなことを試したくなってくる。

 余計なことを言わないように、何度も唇を塞いでやった。ただ唇を重ねるだけだが、息が出来ないのか、リュシアンヌの呼吸が乱れていった。

「ん……ッ」

 優しく口づけたり、荒っぽく口づけたりすると、そのたびに反応が変わってくる。そのせいで、こちらも中毒に陥ったかのように、自制が効かなくなってきた。


 こんな風に、相手の反応を観察したことなどないし、楽しいと思ったこともない。今までは、ただ作業のように女を抱いていた気がするが、そうではないとはっきり自分の中に答えが浮かんでくるのが不思議だ。


「リュシィ、愛してる」

 堪らず強く抱き締めて、耳元で囁く。

 リュシアンヌの反応はない。顔を赤くして固まっているのかもしれない。カゾーランは期待して微笑みながら、今は妻になった幼馴染の顔を覗き込んだ。


「…………はあ」

 寝息が聞こえた。

 もう夜も深い。いつものリュシアンヌなら、とっくに寝ている時間である。すやすやと安らかな寝息を立てて眠っていた。

 早く寝ろと言ったのは自分なのだが、複雑だ。カゾーランは調子が狂いながらも、とりあえず、制服の上着を脱ぎ捨てる。

 まあ、悪くはないか。

 寝ているリュシアンヌを起こさぬように抱き締めて、カゾーランもそっと目を閉じた。

 

 

 

※因みに、セシリアはリュシアンヌをからかって変な知識を与えているだけで、ご本人と陛下は健全な夫婦の営み(物理)を行っております。ええ、健全ですとも。


 次回は余話の更新です!

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