表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

灼とフクロウ

「ただいまー、母さん今日のご飯なにー?」

帰宅と同時に今日の夕飯のメニューを聞く。それが俺の日課だ。

そして母さんは、

「炒め物よー。」

と、返す。

だが今日の母さんは、いつもなら考えられないが、ニコニコしながら玄関まで俺を出迎えてくれた。学校の事が聞きたいのだろうと、口を開かずとも分かった。

「トモヒデと同じクラスだった。クラスメイトとも馴染めそうだったよ。」

「あら、トモ君も同じ学校だったの?それを気付かなかったなんてひどくない?」

「仕方ないだろ、私立高校だから受験生が多かったんだよ。」

「でも中学校の時、高校の話しとかしなかったの?」

「全然、結構学力差あったから、その手の話は話しにくかったし。」

「そう。」

母さんは納得したような顔をした。

「もういいでしょ、部屋入れないよ。」

「あ、そうね。ごめん。」

学校指定のローファーを脱ぎ、揃えて下駄箱に入れる。そして、すぐに玄関のすぐそばにある階段を上り、自分の部屋に行った。

階段を登る途中、母さんが、フーくんにエサあげるのよと言った。もちろんあげるよ、フーは俺の友達だから。

ドアを開け、部屋に入る。そして、勉強机に置いてある鳥かごを見る。

「ただいま、フー。」

声をかけると、今まで外を見ていた白いフクロウが、俺の手元を見つめていた。




このフクロウの名前はフー、俺が中学生の時から飼っている小さいシロフクロウだ。

フクロウといえば夜行性というイメージがあったが、どう言う訳か、フーは昼起きて夜寝るという、人間と同じサイクルをしている。たまに昼寝をしているところを見るが、それでも夜はしっかり寝るグータラフクロウ。結構なんでも食べるし好き嫌いもない。おまけに騒がないし散らかしもしない、世話をする身からすれば、相当ありがたいのだが、フーにはもうひとつ、最大の特徴がある。

それは…

「おい灼、ちゃんとメシは持ってきたんだろうな?」

このフクロウ、喋るんです。

「はいはい、持って来たよ。ご注文通りのフライドポテト。」

「うむ、ならばよろしい。」

そしてこの態度である。飼い主である俺をパシリにし、タメ口だし無駄に食べるし、特におやつ代が半端ない。

だが、それは仕方ないのかもしれない。フーと出会ったのは、普通のペットショップではなく、近所の公園でフーを見つけた。

最初はチラシや聞き込みで元の飼い主かペットショップからの連絡が来るまで待っていたのだけど、とうとう電話が来なかった。

そしてうちで飼うことになった日から、フーは喋るようになった。

ただ、今はもうフクロウとして見る感覚では無くなってしまった。フクロウの皮を被ったおっさん、そう考えている。

しかし、フーが意外にも頭が良く、勉強を教えて貰うなど、しょっちゅうな事で、どっちが飼われているのか分かった物ではなかった。

「ところで灼、学校はどうだった?」

「うん、面白そうだよ。中学の友達もいるし、クラスメイトもおもしろいし。」

「ああ、それで智英の名前が出て来たのか。ここからでもしっかり聞こえたぞ。」

「まさか、母さんとの会話?」

「もちろん、今日も灼は、夕飯の事を聞いていたな?」

「いつもの事だし本当に聞こえてるか怪しいなぁ…」

「も、もちろん聞こえている!!いや、ただあれだ。そう、あれじゃ。」

意味不明だった。ちょうどその時、携帯が鳴った。

「あ、ごめん電話だ。ちょっと静かにしてて。」

「おう。」

電話はトモヒデからだった。どうせ遊びの誘いだろう。

「…トモヒデから、どうせあいつ暇なんでしょ?」

「そうだろうな、あいつなら静かにしなくてもいいだろ?」

「うん、ぜんぜん。」

電話に出た。

「おーっす灼!今みんなで集まってるんだけど、灼もくる?」

「みんなって、クラスメイト?」

「そうそう、お前いっつもすぐに帰るから、そういう集まりって参加した事ないだろ?」

「ないけど…お前なら理由知ってるだろ。」

「ああ、もちろん。もちろん知ってるさ。でもな?灼、そんなんじゃクラスメイトと仲良くなれないぞ?」

「いいよ、放課後遊ぶほどの仲じゃなくても。」

「いいのかー?そんな事言ってて。それだからお前はいつまでたっても好きな子に告白も出来ないビビりなんだよ。」

「電話切るぞ?」

「じょーだんじょーだん、まあぶっちゃけ言うと、今日一人だけ学校来なかっただろ?それで連絡とれる奴がいたから、一部のメンバーで会いに行ってみようって。」

「…それを先に言えよバーカ。分かった、すぐ行くから場所どこ?」

「んー、フーさんに聞いてくれ。さっき家電に電話したらフーさんが出たからさ。」

「え?まじ?分かった、とりあえず切るわ。」

電話を切り、フーの方を向く。

「フー…どうやって電話に出た…?」

「ところでだなぁ灼。」

「また話を逸らすのかぁ、んで、何?」

「その今日学校に来なかった生徒は、わしだ。」

「…は?何を言っているのでしょうかこのフクロウは。」

「いや、だから、今日学校いなかったのわし。」

いやいやそんなわけが…

俺は急いでクラス表のプリントを見る。するとそこには、白鳥楓(しらとりふう)と、きっちりと名前が記されていた…

「まじ…で?」

「まじで。」

その後俺は、約1時間、動かないのであった。

帰宅と同時に今日のご飯の事を聞くのは私だけではないはず

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ