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ちょっと短いです。
私は今日で17歳になった。村を出て王都に向かい、ギルドに登録する予定だ。
本当ならこの世界での成人の年、16歳で村を出る予定だったのだが、両親や村人達からとても惜しまれ惜しまれ、惜しまれまくって仕方なく一年延ばしたのだ。
もちろん両親は私を甘やかしただけではない。父は自分の持てる剣の技を。母は自分の持てる魔法の技を。魔物が出るこの世界で一人でも生きていけるようにしっかりと教えてくれた。
父の剣の腕はすでに語るまでもないが、母が魔法の天才だった事はとても驚いた。その容姿だけでも国で五指に入る美女だと言っていたのだが(父談)、まさか魔法の腕でもトップクラスだったとは。
この世界の魔法には8つの属性がある。火、水、土、風、木、金、時、空というまあよくある属性だ。火や水については言うまでもなく理解できると思う。そのまんまだし。ただ火については、極めると炎という上級の魔法になる。属性でないのは火を極める者がほとんどいないかららしい。
土や風もそのまんま。でも土は外なら威力を発揮できるだろうが、屋内などではあまり役に立たなかったりする。
木は植物系の魔法で、使えるのはエルフらしい。まあエルフ自体森からあまり出ないので見た者は少ないのだが。
金はその名の通り金属を扱う魔法で、ドワーフが使える魔法だ。彼らは他の種族とも交流を持っており、街にある鍛冶屋はドワーフの店である。
時と空の属性は昔人間が使っていたという記録はあるが、現在使える魔法使いはいないと言われている。なのでどんな魔法なのかは分かっていない。
つまり人間が使える属性は火、水、土、風の4つという事だ。他にも獣人や妖精などがいるが、獣人は基本的に魔力が低いので魔法は使わないし、妖精はエルフと同じように森から出ないのでその実態も分かってなかったりする。
唯一全属性を使えるのが世界最強の種族といわれるドラゴンらしいが、その姿を見た者はいない。まあ火のないところに煙は立たない、と言うしもしかしたら見た者はいるのかもしれないが。
ちなみに火の属性は攻撃力が高く、水の属性は癒し、土の属性は身体能力低下、風の属性は身体能力上昇、という特徴もある。水の属性で攻撃魔法を極めた猛者もいるらしいが。
母が使う属性は水と風。癒しの魔法も結構な腕だったが、風の攻撃魔法は凄まじかった。その為ついた二つ名が風姫。これは父が教えてくれた事だ。
(村で魔法を使える人は母以外にいなかったからどれだけ凄いのかはよく分かってないんだけど)
私が使える属性も母と同じ水と風。母譲りの高い魔力と攻撃力を見て、父が微かに震えていたのは武者震いだと信じたい。
「王都までは馬車で一月ほどですか。まあ魔法で飛んでいくのでもう少し早く着くでしょうが」
17年間暮らしてきた村はここ、ラウネル国の辺境に当たる。両親が駆け落ちする前にいたのは東に二つの国を超えた先にあるレーベル国。追手を避ける為にかなり遠くまでやって来たのだ。名もなき小さな村は如何にも訳ありな両親を優しく受け入れてくれ、その一年後に私が産まれている。
『フライ』
風の魔法を唱えると、私の身体はふわりと浮き上がる。頭の中で方角を決めればそちらに向かって飛んで行った。私に向かって手を振る両親や村人達に手を振り返しながら。