混乱しているようです。
花粉のせいで家から出れないっ! 少し太ってきたから運動したいのにっ!
きりが悪かったんで、今回は短いです。
幸と不幸は一緒に訪れるとかいう勇者の格言を聞いたことがあるが、俺は身をもって実感した。
ムスコのジョージと妻のアンナと共に、ドラゴンに乗った黒コートの少年が攻めたきた、と思ったらエルフの女王を奪還しに来た一部始終を眺めていた。
王様の恰好をした変なやつと少年が戦っていると、兵達が緊迫した表情で走ってくる。
「何をしている! 早く逃げんか!」
「うるせえ! 今いいとこじゃねえか!」
誰かがそう言うと、ほとんどの人が賛同したようだ。丁度狼男が飛来したところだった。
ショーか何かと勘違いしてるのか? 馬鹿なのか?
「あなた……」
心配そうな表情のアンナが俺の裾を掴んだ。ジョージも不安そうだ。
「……ああ、ここから離れよう。今すぐ」
ジョージを抱きかかえ、アンナの手を引きながら家に向かって走る。小さくなる喚声と兵達の避難指示を背中に受けながら走っていると、不意に淡い光を放つ赤い線が足元に現れて踏んでしまった。鉄臭くて赤い液体が靴の裏で滴っている。
「これ、血か?」
思わず声に出してしまった。それに反応してアンナが警戒心を露わにし、ジョージが小さな悲鳴をあげて俺の服を掴む。
血の線が放つ光が強くなっていく。やがて、空中に浮かび上がり、血の線は王都を覆う程の巨大な魔法陣を形成した。
「迷宮創造!」
人々の不安やらが混じった声の中で、一際大きく聞こえたほうを向くと、いつの間にかボロボロの悪魔の羽根を片方だけ生やした黒コートの少年が、両掌を合わせた狼男と対峙している。さっきの声はあの狼男のものらしい。
魔法陣が放つ光がますます強くなり、反射的に目を瞑ってしまった。
「……こ、ここは?!」
光が治まり、目を開けると、俺達は所々から灰色のクリスタルが飛び出している薄暗い通路に立っていた。良く見えないが、周りから人の声がするから何人か近くにいるのだろう。
「パパぁ……」
泣きそうなジョージを宥めていると、不意に大声が聞こえてきた。
「ざっけんな! そいつらは関係ねえだろ!」
ジョージがまた泣きそうになる。あやしながら大声が聞こえたほうを見てみるが、暗くて何も見えない。くそっ、何が起こってるんだよ。
「ねえもしかして、ここって迷宮じゃない?」
「は? いきなりどうした?」
ふと、アンナが口にした言葉に首を傾げた。
「なんとなくだけど、雰囲気が似てるっていうか……あいつも『迷宮創造!』って言ってたし」
「もしそうだとしても、どうやって俺達は入って来た?」
「それは……」
アンナの声を遮るように、周囲のクリスタルが一斉に光り始めて少し周りが見渡せるようになった。さっきの大声は黒コートの少年だったようだ。あの羽根はなくなっている。あれはどうしたんだろうか?
『愚カナ人間共、ヨウコソ我ガ迷宮ヘ! 全50層ノコノ迷宮ヲ攻略スルモ良シ。地上ノ王都ニ逃ゲルも良シ。精一杯生キ延ビ、魔王様復活ノ糧トナルガイイ!
今カラ100数エタ後ニモンスターヲ解キ放ツ精々逃ゲ惑エ』
99、98と狼男が数え始めると、いよいよジョージが泣き出してしまった。それにつられるように喧噪がだんだんと広がっていく。
「うわああああん! パパー!」
「大丈夫、大丈夫だから。パパとママが守ってあげるからね」
「ああそうだ。ジョージは何も心配しなくていいぞ」
本当……? と目に涙を溜めて首を傾げるジョージにアンナと一緒に力強く頷くと、黒コートの少年の頭上に光球が出来上がった。ふむ、あいつが現状を最も理解してそうだ。
「ちょっと話を聞いてくる。ジョージはママの言うことを聞くんだぞ?」
「うん」
ジョージをアンナに預けて、少年から話を聞いた。やはり、現状を理解していたが、いくつか信じられないこともあった。けど、こんな状況で嘘をついたりはしないだろう。
狼男が数えるカウントが0になると、灰色の魔法陣を伴って多数のアンデッドが現れた。武器がない状態でどうしたものかと考えていると、目にも止まらぬ速さで少年が先頭にいた犬型のスケルトンを叩き潰した。
今気付いたが、あのガントレットってアダマンタイト製じゃないか! しかもかなり純度が高いようだ。あれを装着するにはかなりの力が要るはずだから、ステータスは相当高いんだろう。しかもさっき魔法を使ってたから、単純な前衛というわけでもないのが窺がえる。
周りにいたアンデッドを一掃した少年は、みんなを一ヶ所に集めて話し始めた。
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