ある意味才能のようです。
やっと課外が終わった! 勉強して大学に合格して遊ぶぞ!
「おはようございますっ!」
宿の扉が勢いよく開けられて、その音に驚いてエビフライを落としそうになった。宙に浮いたエビフライを素早く箸で掴み口に放り込む。うむ、美味い。さて、一体どこのどいつだ僕のエビフライを亡き者にしようとした極悪人は。
扉の方を向くと、プレクラーラ様だった。僕に睨まれたからなのか、ちょっと涙目になっている。
「プレクラーラ様」
「は、はい」
「ちょっと来てください」
「はい」
ビクビクしながら近づいてくるプレクラーラ様に嗜虐心が芽生えそうになるが今は我慢だ。
「さて、どっちがいいですか?」
右手の人差し指を立てて、左手をパーにする。すると、プレクラーラ様はおずおずと右手を選んだ。
「んじゃみんな支えててね」
「「「「「は~い!」」」」」
契約が強くなったことでより人の姿に近くなり、服のようなものを身に着けた精霊達にプレクラーラ様を後ろから支えてもらう。互いの思考が少しばかり共有されたからなのか、ペスタがプレクラーラ様の両腕に上げられなくなるぐらいの重力をかけた。
「え? え? な、何をするのですか痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 眉間を強く押さえないでください今ミシッて聞こえた気がするんですけど!!」
眉間をグリグリ。ひたすらグリグリ。グリグリグリグリグリグリグリグリ。プレクラーラ様が涙目になったところで手を放すとペスタも重力を解除した。プレクラーラ様はその場にしゃがみ、眉間を押さえながら上目遣いで睨んでくる。
「急に何をなさるのですか……」
「プレクラーラ様が勢いよくドアを開けるからエビフライを落としそうになったんですよ」
「でしたらまた作ってもらえば……」
「また?」
右手の人差し指を立てると、プレクラーラ様はしゃがんだまま小さな悲鳴をあげて後ずさった。彼女の精霊達が面白がって真似をしている。
「衣食住のうち、最も大事なのは食です。人は服や家がなくてもなんとかなりなすが、何か食べないと生きていけません。食べ物を粗末にするのが1番いけないんです。分かりましたか?」
「分かりました。分かりましたから手をワキワキするのをやめてくださいませんか?」
ちっ、分からないって言ったらアイアンクローをお見舞いしてやろうと思ったのに。
「何故そんなに残念そうにするのですか……?」
「まあまあ、ユキトはエビフライが好物なのよ」
あ、言いやがったなカエデさん。
「そうなのですね。ではわたくしが作ってあげましょう!」
さっきまでの様子とはとって変わり、元気に立ち上がったプレクラーラ様は厨房に駆けて行った。
「あれ? プレクラーラ様いかがないさいました?」
「わたくしにもエビフライをつくらせてください!」
「どうしてエビフライを?」
「ユキト様に召し上がっていただくのです! さあ!」
「わ、分かりました。作っていいのでむやみに食材に触らないでください!」
……ま、期待せずに待っておこう。頑張れリーナさん。
お茶を飲みながらのんびり雑談をしていると、右胸にエンブレムが彫ってある鎧を着たエルフが宿に入ってきた。確かプレクラーラ様の護衛の1人だったはず。
「失礼。こちらにプレクラーラ様はいらっしゃいませんでしたか?」
「プレクラーラ様ならエビフライを作りに厨房に行ってますよ」
「なん……だと……またあの悪夢が蘇るのか……」
震えた声を出したエルフは青ざめて一目散に宿から出て行ってしまった。声をかける暇もなかったよ。
「何だったんでしょうね?」
「さあ?」
カエデさんも分からないようだ。
「お待たせしました」
「「……ん!?」」
僕とカエデさんの声がハモったのは仕方ないだろう。プレクラーラ様が大きな皿にてんこ盛りにして持ってきたからだ。……青紫色のエビフライを。
いやいや、1回落ち着こう。ここは異世界だ。地球じゃない。異世界だ。もう1度。ここは異世界。蛍光色のカニが高級食材だったりする世界だ。青紫色のエビフライがあったっていいじゃないか。そうだ、『解析』してみよう。
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☆@#~※
『%*』
「毒Lv,\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?」
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「駄目じゃねえかあああああああああ!!!」
「がう!? くぅ~ん……」
驚いたレオが四角牛の肉を落として悲しそうに泣いた。何だこのエビフライ。 文字化けしてエビフライじゃなくなってるし。しかも毒が顔文字じゃねえか。食ったら記憶喪失になりそうだ。
「ねえセリアってあれいない!」
よく見るとクロネとレオもいつの間にかいなくなっていた。逃げたなあいつら。後でタップリと食わせてやる。
「ラーラちゃん、一応聞くけどそれは?」
「エビフライですっ!」
「そんなに強く言わなくても……」
「せっかくですからみなさんも試食してみてください」
カエデさんや、頬が引き攣ってますよ。
「カエデさん、これ……」
『視覚共有』と『解析』を使ってプレクラーラ様以外の今ここにいる人にエビフライ(の形をした毒物)を見せる。メイドさん共々絶句していた。
「……えーっと、私はお腹がいっぱいだから遠慮しておくわ」
「俺もだ」
「わ、私も」
プレクラーラ様が小皿に分けたエビフライを押し付けてくる。お前らも食えよ! と心の中で叫ぶ。王族に言えないしね。とはいえ食わせないという選択肢はない。
「プレクラーラ様が作ってくださったんですから、一口だけでも食べてみましょうよ」
ウィドに『ウィスパー』という他人には聞こえない魔法の専用回路を繋いでもらう。
『あーあー聞こえますか。プレクラーラ様には聞こえないのでご自由にどうぞ』
『ちょっとユキト、あなたなんて物食べさせようとしてるのよ!』
『大丈夫です。僕の耐性スキルを複製しましたからまず死ぬことはありません』
『にしてもこれはないわ……ラーラちゃんって凄い才能を持ってたのね』
『ぜんっぜんいらない才能ですけどね。さ、食べましょう』
『おいおい、これを食うのか?』
『ステータスに表示されたらすぐに【分離】しますので安心して食べてください』
『そういうことならまあ……』
『お兄様!?』
『お前も食えローズ。食わないならお前が密かに書いてるポエムを街にばらまくぞ』
『お兄様それをどこで!?』
『城のメイドなら全員知ってるぞ』
『…………』
ノックアウトォ! とりあえず言質はとったぞ。『ウィスパー』を切ってもらい、目の前の毒物を眺める。んじゃ、食べますか。
エビフライを食べた幸人達はどうなるのか!? 次回、最終回!
もちろん冗談です。
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