びっくりするようです。
総体があるので、金曜が休みになりました。3連休です。やっほい! 引きこもるぞおぉ!
「おお~……」
「すごい……」
「にゃあ……」
エルフの街を見た感想がこれだ。リルは見慣れているのか、特に思うところはないようだ。
石やレンガ等は見当たらず、芝生のような草が生えた道に、巨木をくり抜いて作られた家や露店。所々に浮いている光は何かの魔道具だろうか。たくさんのエルフが街を行きかっている。まさに、幻想的な光景だ。
ちなみにレオは、そこらへんの茂みから顔を出した小動物を追いかけようとしてこけた。何やってんだか。
「初めてエルフの街に来たやつはだいたいこんな反応をするんだよな」
「ダリアもこうだったくせにね」
「母上は「キャー、ファンタジー!!!」と大声で叫んでいたではありませんか」
「ちょ、それを言うならローズはリスを追いかけて迷子になって、結局飴ちゃんペロペロしながら歩いてたじゃない」
「母上!!」
どうやらカエデさん達は来た何度か来たことがあるらしい。暴露大会になってるけどね。
「……」
で、僕達の中で唯一エルフのユリウスはというと、僕を、いや、僕の周りを見て固まっている。よく見ると、周りのエルフ達もだ。どうしたんだろ?
「ユリウス?」
「……え、あ、どうしたの?」
「そっちこそどうしたの? 何か僕の周り見て固まってたし」
「やっぱり、たくさんの神から加護を受けた人は違うわね。ユキトの周りにとてつもない数の精霊が集まってるのよ。それこそベッタリとくっついてね。
これだけの数、女王様でも見たことないわよ」
同調するように、周りのエルフが一斉に頷く。そんなにいるのかね?
「むー! くるなくるなー!」
突然アインが胸ポケットから飛び出してバタバタと手を払う。するとすぐに、何かに押し流されるように悲鳴を挙げながら胸ポケットに戻って行った。
見えるといいんだけどなあ……。そうだ、魔素操作でどうにかならないかな?
「姿を見せろ。うおお!?」
多っ! 多すぎるわ! 前が全然見えないんだけど!? すっげえカラフルなんだけど!?
アインと同じような姿をした精霊達が僕の目にいっぱいしがみついてるのが見えた。違うのは色だな。赤、青、黄、緑など色んな色の精霊がいる。あと、何だか輪郭がはっきりしないのが多い。顔が美術室にある石膏像のようにのっぺりとしてる。カラフルなんだけどね。
僕が瞬きをしたせいで落ちたアインとそっくりな精霊達が、また目に捕まろうとしたところで目が合った。
「あ~!」
「みられた~!」
「なんで~?」
「わかんな~い」
「きゃ~」
「かくれロ~!」
ちょっと楽しそうに、僕から身を隠すようにあちこちへ隠れる精霊達。そしてチラチラと僕を見ては引っ込む。それを何度か繰り返しているうちに気付いた。もしかして、人見知りなだけなのかな?
(そういうことなのだ!)
(出てこんでよろしい)
とりあえず話しかけてみますか。気分的にしゃがんで手を広げる。
「おいでおいで~」
「う~……」
こらアイン、唸って威嚇するんじゃありません。
「おこらない?」
「こわくない?」
「なぐらない?」
僕はどこの暴力教師だ。
「怒らないし、怖くないよ。もちろん殴ったりもしない」
「ほんと~?」
「ほんと」
「「「「「わ~い!」」」」」
一斉にすごいスピードで飛びかかってきた。おっふ、また前が見えない。
「とりあえず、ちょっと離れてくれない?」
「それじゃあね~」
「まりょく~!」
「まりょくちょ~だ~い!」
「いいよ。ほら」
全身から魔力を放出して、服のように体に纏う。すると、もの凄い速さで魔力が吸い取られていく。『自己再生』が間に合わないって、どんなスピードだよ。
「ん~」
「おいしかった~」
「ごちそうさま~」
「またちょ~だ~イ」
僕の魔力が0になるまで吸い尽くした精霊達が、動ける程度には離れてくれた。視界の半分は精霊で埋まってるんだけどね。
「ユキト、どうして精霊と話せるのよ」
「あれ、言ってなかったっけ? 僕が加護の効果で魔素を操れるの」
「そういえばそんなこと言ってたわね……。そんなに好かれてるのは、加護の『妖精の寵愛』かしら?」
「だろうね。妖精と精霊って性格の違いだけっぽいし」
「俺達は蚊帳の外か?」
「あ、すいません。ここじゃあまり話したくないので、移動してから話します」
「そうか。なら、ついて来い」
ダリアさんについて街を歩く。精霊達もついて来るから超目立ちましたとも。
「ここだ」
ダリアさんについて到着したのは、『ココココ亭』という何とも言えない名前のちょっと高級な宿だ。
「ここですか? もっと高級なことじゃなくていいんですか?」
「ここが母上のお気に入りなの。入れば分かるわ」
そう言われて中に入る。扉についた鈴が鳴ると、出てきたのは褐色の肌のエルフだった。
……ダークエルフだと!?
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