プロローグ⑶
夢を見た。唯一友達と思えた猫の夢。唯一楽しいと思えた時間の夢。
今頃どうしてるかなぁ? 誰かに拾われてるといいなあ。
なんて思いながら起きると、いた。ベットの真ん中で丸まっている黒猫のクロネだ。
「起きた? その子の夢を見てたから連れてきたんだよ」
ふふんと胸を張っているが、ここは懲らしめよう。
「この覗き魔」
「ぐはあっ」
なんか汚い汁を吐いて倒れた。よし、クロネと遊んでもう一眠りしよう。
「クロネ」
「にゃあ〜」
体を伸ばし、2本の尻尾を振って蒼い目を爛々と輝かせながら近づいてきた。なでなでゴロゴロ。
ってあれ? おかしいな。尻尾は1本のはず。あと目は黄色だったはずだ。
こんなことをしたのは神様だろう。
「ねぇ、クロネを改造した?」
「………」
返事がない。ただのしかばねのようだ。
「ザ○リク」
ゴン
「いったあ! いきなりなにすんの!?」
「殴っただけだけど? それで、クロネを改造した?」
「もちろん。ただの猫をここに連れてこれるわけがないじゃん。まあ強くなっただけだし問題はないよ」
ならいっか。 ……いいのか?
「おやすみ」
「おやすみーって、待てい!」
「ああっ、なにすんだよ!」
布団をとるとはいい度胸じゃないか。
「君にはまだ説明したいことがあるし、もう朝だよ。朝ごはんの時間だ」
時計がないのに時間なんてわかるか。
神様が指を鳴らすとテーブルにご飯、みそ汁、スクランブルエッグ、ベーコン巻きとキャットフードが出てきた。
「いただきます」
「にゃ」
がっついてものの5分で食べ終わった。
「そんなに急いで食べないでも誰もとらないのに」
「……あ」
まあいっか。クセみたいなものだし。
「それじゃあ説明しようかね。あれは半年くらい前だったかな……」
要約すると、5の大陸に分かれてて、北大陸はノースタル、東大陸はイースティ、南大陸はサウスター、西大陸はウエスタン、そして中央大陸はセントリアという。
ノースタルは山が多く寒いが、良質の鉱物が採れるので鍛治職人が多い。
イースティは季節によって寒暖差が激しく、独特の文化を持つが排他的。
サウスターは温暖で、魚や香辛料がよく採れる。
ウエスタンは砂漠や荒野が多く資源に乏しいから、大陸を支配する帝国はしょっちゅう戦争をしている。
セントリアは涼しく気温の変化はほとんどない。技術や人が多く集まるため五大陸の中心。
そして剣と魔法のファンタジー世界であり、各所に迷宮と呼ばれるダンジョンがあるそうだ。更に、魔法を使うモンスター、魔獣もいる。レベル制、スキル有りだからゲームのような異世界である。
金の単位はメルンで1円=1メルン。
石貨=1メルン
石板=10メルン
銅貨=100メルン
銅板=1,000メルン
純銅貨=1万メルン
純銅板=10万メルン
銀貨=100万メルン
銀板=1,000万メルン
純銀貨=1億メルン
純銀板=10億メルン
金貨=100億メルン
金板=1,000億メルン
純金貨=1兆メルン
純金板=10兆メルン
これ以上はないらしい。ちなみに、硬貨は500円程、板は1,000円札程の大きさだ。
あと、これが長さの単位。
1センチメートル=1センル
1メートル=1メール
1キロメートル=1キロル
最初に2文字と最後の1文字を取り出した感じ。質量の単位も同じだ。
「とまあこんなとこだよね」
「すごいねえ。僕そんな簡単にはまとめられないよ」
「あんたが説明下手過ぎなだけ」
神様がうぐっと喉をつまらせた。
「まあ行ってもいいかな」
「ホント! やったー!」
ぶっちゃけ異世界トリップとかしてみたかった。にしてもあんたガキみたいだな。バンザイはないと思う。
「それじゃあ特典をあげようかな」
「特典?」
「スキルだよ。この中から好きなのを5つなんでも選んでね」
大きなバインダーが出てきた。めっちゃ分厚いからぶっちゃけ辞書だ。
「後ろに索引があるから活用してね」
『技術系』『ステータス系』『魔眼系』『日常系』『超能力系』『特殊系』の6つに分かれてた。
『技術系』は剣技や魔法、鍛治のスキル。
『ステータス系』はステータスに関するスキル。
『魔眼系』は魔眼のスキル。
『日常系』は交渉や司会等のスキル。
『超能力系』はサイコキネシスやパイロキネシス等のスキル。
『特殊系』は5つに属さないスキル。
……どれを選ぼう。
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