プロローグ⑴
こっちを見て騒いでる人たちがいる。うるさいなあ。
これからお前らのお望み通り死んでやるよ。けど、次に会うときは僕と同じ身体にしてやる。
さあ、一歩踏み出そう。重力が僕を地面に引きつける。コンクリートが近づいてくる。けど僕の意識はあと数cmで途絶えた。
次に見えたのは真っ白な世界と、1人のイケメンだ。金色に光る髪を肩まで伸ばし、僕を見てニコニコしている。
「誰あんた? ニコニコして気持ち悪いんだけど。」
「初対面の人に対してひどいな君は!」
イケメンは敵だ。
「まあいいや。こんにちは、前川 幸人君。僕は君たちで言うところの神だよ」
ふぅ〜ん。神様ねぇ……
「今疑ってるでしょ? でしょ?」
「どうでもいっか」
「いいのかよ!」
「それで何の用なの? 早く復讐したいんだけど」
「スルーですか……」
この神様だいぶ喜怒哀楽が激しいな。今度は落ち込んでるぞ。
「まあいいや、僕が君を呼んだのはその復讐心からなんだ。君が死ぬ前に残した怨念は相当強くてね、このまま地球に残っちゃうとちょっと見過ごせないことになるんだ」
神様が腕を振るうと、青白いスクリーンが出てきた。そこに映っているのは、僕が一番望んだものだった。
僕をいじめたやつらが1匹の黒い狼によって阿鼻叫喚の絵になりつつある。
左目を潰したおじさんも、右膝の皿を粉々に砕いたヤンキーAも、左手の全指を切った委員長も、肋骨を3本叩き割った先生も。みんな僕と同じ体になりつつあった。
「ざまあみろ! 僕をいじめた罰だ! やれ!! もっとやれ!!!」
久々に興奮した。ヤンキーBの尾骶骨を割った時以来かなあ。すぐに僕も同じ場所やられたけど。
「とまあこんな風にね。言っとくけどこれはもしもの話だからね?」
あ、スクリーンが消えた。もうちょい見せてくれたっていいじゃないか。
「神様としては、これは防ぎたいんだよね。そこでだ」
真剣な顔をして
「異世界に行ってくれないか? チート特典はもちろんつけるからさ」
おっときましたか。よくある話で伝説の剣とかもらって魔王を倒してくれ的なあれだよね。
僕はもちろん
「いやだ」
断った。