3話
1話2話より多少短いですが、更新期間が空いてしまったので投稿します
夜8時の緊急報道番組で「やっぱりこうなった!デスゲームのラノベは預言の書だった!」を視聴。コメンテイターを始めとして終始自業自得論が支配する番組だったので、しょうがなくN○Kに変える。
それによると、MAKURA接続8万人、ベッド接続1万5千人、クレイドル接続100人がログイン。強制解除やゲーム内死亡での被害は、体調不良が2万人、意識不明が5千人、死亡15名。その他状況不明が多数。接続状態を維持しつつ病院設備への移送が成功した例は、わずか120件。PCにバッテリーを接続するのは簡単だったが、ベッドが搬入後の組み立て方式だったため、家から出せない例が続出。枠だけを解体しようとしてトラップセンサーに引っかかり、意識不明者を出したことから、現在は自宅で経過観察中の例が増加し、病院関係者に多大な負担がかかっている。
視聴者の大きな関心は、MAKURAだったら引っぺがしても体調不良で済むのではないかという点に寄せられていた。家族にとっては、「たかがゲーム」なのだ。気分が悪くなるくらいは自分の責任。ベッドとかクレイドルとかお金持ちの贅沢装備を使って入った人は、意識不明とか死亡しても自業自得。救助はクレイドル優先で、いつまでたってもMAKURAは後回し。被害者は接続から約12~24時間以上が経過、大小もらすわ、脱水症状で弱っていくわ、いいかげんにしろとお怒りの電話FAXメールが関係機関、報道機関に殺到しているという。
午後9時。終に首相が声明を発表。MAKURA及びベッドからの強制解除後、入院費・通院費は政府負担とする旨が発表された。ただし、死亡事故の責任を問わないという同意書にサインし、医師の立会いの元に接続を外すこと。
「デスゲーム」にしては死者の規模は少ないが、日本中で医師と救急車が不眠不休を余儀なくされることになったのだ。未曾有のテロ事件はまだ、進行中だった。
死者15名は、いずれもクレイドル接続によるものだった。内訳は報道されなかったが、内海メール情報では、4名が首謀者葛谷法靖との交戦により死亡。その際葛谷側の協力者1名が死亡。6名はゲーム内デッドに伴う生命維持装置の停止。4名が強制解除失敗による溺死。内海は、奴らしくもなく、俺の明日の決戦ログインに反対した。時間指定によるものか、葛谷から真新しい吸血鬼の棺のようなクレイドルが配送され、現在調査及び殺人機能の排除作業中という。しかし勝算が無く、リターンが小さい。
各アカウントはどうなっているか聞いた。俺のオーガは、指定時間までログインできないと表示された。ログアウト権限を持っているので、それを救助活動とかに使用されたくないのだろう。くぱりん・くぷりんは停止。葛谷が警察に与えたアメはなくなった。
救助活動の方は、5台の無水クレイドルとログアウト可能アカウントが用意されてフル稼働中。これは、処刑マシン製造の汚名を着たくないクレイドルメーカーの協力と、葛谷の知らないところで納期合わせのためのプログラミング外注が行われ、セキュリティホールを作られていたことから、可能になったそうだ。
内海は、暇なのか、捜査本部の情報をバンバン垂れ流す。知らなきゃ協力しようなどと言う気も起きないものの、俺がリークしてもかまわないと思っているのか。
まあ、俺にそんな暇は無い。ログインできなくても、やれることはある。
ある友人に電話をかけた。ネットゲームで知り合ったのだが、今はエロゲにはまっている。行ってもいいかと聞いたら、攻略本持って来てと言う。よし。俺はバッグ一杯にPC自作用の道具と機材を詰め込んでバイクに乗った。ごそごそやってたので感づかれる。
「どこいくの、おにいちゃん!」
警察に行ったり来たりしていたので、俺たちは休日ながら制服だった。もう十時近いので補導されかねないが、ついて来たがる妹を乗せない選択肢は俺には無い。
「バッグはお前が背負え。俺にしっかりつかまってろよ」
「うん!、・・・げぇ、重」
親は放任主義なのだが、妹は何かと言うとからんで来たがる性格だ。自前のメットで2ケツが好きだ。そしてスピード狂である。
親はTVの事件報道に釘づけだった。今日はどこの家でもそうかも知れない。
「また捜査協力してくる。風呂は帰ったらシャワーあびるよ」
「あたしもいっしょだから心配ないよ」
兄を死地に追いやる妹が、根拠のない自信を口にすると、父親が驚いて振り返った。
「一緒に・・・シャワーだと?パパですら小学生までだったのに」
「ば、何言ってんの!違います!一緒に出掛けるだけ!」
「はいはい、安全運転で気を付けて行ってきます、すぐ戻りま~す」
うちの親は甘くてチョロくてしかも金払いがいい。俺たちの成績がいいことも影響している。思考時間4倍である以上、付け焼刃のテスト勉強も、テスト中も、チラ見のカンニングでも、一般人と比べて圧倒的に優位にある。真の学力を要する100点は無理でも、80点は余裕なのだ。
バイクにまたがった。無改造の250ccに2人乗りだからそうスピードが出るわけでもない。妹はスカートで馬乗りだが、デカいバックをしょってるので、後ろから見えたりはしないだろう。
俺は、妹に手を出さない代わりにエロ本に耽溺していつもりだが、バイクに乗るときはいつもその決意がゆらぐ。日々成長する柔らかい双丘が、密着してくるのだ。普通冷静でいられるだろうか。まして明日は死ぬかも知れない戦いが待っている。
「どこに行くの?」
「治外法権の地さ」
その後は、教えてやらなかった。うるさくて会話が成立しないのに話しかけてくるとか、頭悪いだろう。
交差点で止まるたびに、後ろからの圧迫が気持ちいい。時々しがみつき直してくるのも、かわいらしい。だが、兄妹というのは、基本むなしい関係だ。どんなに愛おしく思っても10年以内には確実に他人の女になっているだろう。だからと言って二次元はもっとむなしいのだが、妹以上のいい女を彼女にできるような話術も甲斐性も自分にありはしない。
ショートカットのため、途中ラブホテルの駐車場に侵入した。ぎゅっとしがみついてくる。どうなんだ?俺は連れ込みたくてたまらないが、お前は覚悟くらいは決めたのか?はは、通り抜けてやったぜ。ばーかばーか。・・・ばーかな俺。
環状○号線。渋滞と事故のメッカ。毎日死者の出る殺戮装置。それをそうだと認識しないのは、この日本が、心臓部にできる血栓をどうにもできない重病人だからだ。飛び交う車両は制限速度程度でしかなくても、その合間を縫うのに失敗すれば、即死が待っている。加速に目覚める前は、怖くて怖くて仕方がなかった。だが今は、シューティングゲームでの弾幕と弾幕の合間を縫う程度の感覚で、一瞬しか開かない車両と車両の隙間が縫える。俺がドアミラーを畳んで、妹が戻して謝るなんてこともある。たぶんバコバコ音がしただけで、ドライバーはわけが分かってないだろう。分かった時にはもう先に行ってるし、他の通行車両が邪魔で何もできない。
都心部に侵入。行先は秘密なので明かさない。
四囲をコンクリ壁に囲まれた家に入った。セキュリティサービスの黒人大男が2人待っていたが、今日もアポがあるし、慣れた間柄なので、簡単に通された。ここは、都内にたくさんある治外法権の地のひとつ、○○王国大使館であるが、今や王子様とそのお友達の
失楽園なのであった。
○○王国は、国連に加盟していないどころか、周辺諸国から独立を承認すらされていない。日本資本による日本のためだけの資源鉱山で、土地所有者は非公式ながら、王国を名乗り、王子兼大使を日本に留学させていた。アフリカの陸に浮かぶ、シーランド王国みたいなもんだ。
日本のヲタクかぶれの黒人王子様と知り合ったのは、ゲームの中だ。日本語ができるが、基本努力とか根性の無い人だから、モンスターを倒したり、ゲーム知識を教えたりで仲良くなるのは簡単だった。王子はそうやって色々な人間をここに連れ込んでいる。明日本国がどうなるかわからないので、遠慮なく遊んでいる、現代の遊び人だった。
「やあ、オーガにアーザートの中の人!デスゲーム事件の被害者にならなくてよかったねー。僕もあのゲームやめて正解だったよー」
「王子。でも、あのサーバーは預かったままなんですよね」
「んー。クズッタニーの送金は確認済みだからねー。契約満了までは何もできないし、訴状も届いていないのでわからないなー」
葛谷は日本国内での治外法権サーバーの設置を欲した。規模はブレードセンター一基程度でしかないが、ゲームの根幹部分に使用されている可能性がある。また、増設時期からの類推だが、MAP上でここを使っていると思われる場所がある。葛谷も王子とゲーム内で知り合った模様。俺たちは友達の友達。
「はい、攻略本。それと、以前からご希望の対戦相手です。妹よ、王子様のお相手を頼む」
「え?別にいいいけど。ここに来た用って王子とゲームして遊ぶことなの?」
「んむ。すこし違う。お前は人見御供だ。王子の選んだゲームで、負けたら一枚脱げ。お前が対戦ゲームしている間、俺の行動を見逃してくれる手はずになっている」
「えーーー!!ま、負けないけどっ、なんで脱ぐのっ」
「兄を死地に追いやった代価である。四の五の言うな」
王子はうきうきしながら、古いファミコンにカセットを差し込んで準備万端だった。妹が知らないゲームで勝つ気満々なのだ。
俺は後も見ず、バッグを手に、遊戯室に隣接する電気室のような部屋へ入り込んだ。ずらっと並んだサーバーのタワー群が、ふんふん唸り、空調がフル回転している。王子が小遣い稼ぎにやっているのが、このレンタルサーバー業だ。配線や交換を手伝わされたことがあるから、葛谷のサーバーがどこにあるかはわかっている。バックアップバッテリを殺し、俺の持ってきたインターバルタイマーを電源に接続し、明日12時10分にサーバーダウンを引き起こす。ゲーム内で40分。ログイン直後から戦闘になったらまず、そこまでもたないので、携帯電話でメール着信したらアプリで電源ダウンするようにもしておく。
くくく。犯罪者相手に、ゲーム内だけで正々堂々戦うと思ったら大間違いさ。だが、サーバー境界とMAP境界が分かりやすい作りのゲームで、この地雷にうまく奴を誘導できるか、察知されないかは、不明である。今現在、自分の作ったゲームの攻略に夢中になって、葛谷が外界の情報を仕入れていない間抜けだと助かるのだが。
無論、非公式ながら大使館の副業のレンタルサーバーに破壊活動を行う俺は、状況次第では犯罪者扱いとされるだろう。未成年であることくらいしか訴訟に有利な点は無い。だが、生死がかかっている。俺的にやらない選択肢は無かった。
設置には小1時間かかった。戻ったら12時を過ぎてしまうがやむを得ない。
妹対王子の戦況は心配していなかった。初戦に負けて靴下をかたっぽ脱いだきり、妹は圧勝していた。一般人相手に大人毛ない加速をかましたのだ。落ち物、シューティング、格闘、パズルといったカセットが散らばっており、王子も全裸放心状態で床に倒れていた。日本の制服美少女を相手に脱がし対戦をやって、戦果が靴下1枚か。いかんな、接待対戦だというのに。
俺は、スーパーマオリブラザーズを刺して、妹に挑んだ。妹が知るはずもないブロックを殴ってファイヤーマオリになり、速攻でルイジンを焼き殺した。
「兄より優れた弟なぞおらぬわー」
「なにそれ、ずっるーい!」
コントローラーを握ったままの両手を片手で押さえつけ、手を突っ込んで無理矢理引きずり下ろした。許せ、この布キレが、俺たちの安全と勝利を保障する白旗となるのだ!
さんざん蹴られたが、靴下もうかたっぽゲット!
「王子、我々の勝利です。お納めください」
「さすがオーガだね、鬼畜のショギョー。ソチモワルヨノー」
日本かぶれの王子は、心を手刀で描いてそれを受け取った。
(でも本当は、あの白い布がいいね)俺たちはアイコンタクトで脳内補完し合った。
「では、明日の昼12時より葛谷と決戦しますので、決着まではなにとぞお目こぼしを」
「倒さなくても自滅する王様だけど、それでも戦うのかい?」
王子は、自分も、自分の国もうたかたの泡のようなものだと語っていた。葛谷と自分の親に類似点を見ているのだろう。
「ろくでもない奴だけど、一緒に遊んだこともある以上は、あいつも友達なのかなあ。言いたいことを言いに行くつもりです。全力でハッ倒した後で」
どうなるかは、わからない。出撃前に内海と首相に何か交換条件を付きつけられればいいのだが。
大使館を退去した。妹はブータレていた。だがな、王子がもっと好色だったら、性欲バリバリのマッチョだったら、今頃とんでもない目にあってるんだぞ。虚弱じゃなきゃ日本に送られなかった気もするが、ともあれ靴下くらいですんで御の字じゃないか。
「妹の○○を脱がすなんて~」
「今日のはいい勉強になっただろ。ああいうとこ入り込むとやられちゃうんだ。俺が連れ込んどいてなんだけど」
「鬼畜だ。やっぱりオーガだ」
ううむ。バイクとはいえ、そんなこと言いながら抱きつくな。
俺は、明日、妹との思い出を胸に、妹の分身であるアーザートの奪還に赴く。
中身の無い人形。だが、俺の理想の体現でもある。巨大で高速で妹似。奪い返したところでゲームが終わってしまえば、アバターの命も終わる。あの世界が続き、微笑むアーザートと結婚できたなら、現実で報われない俺も、多少なぐさめられるのに。
身近に妹がいるせいで、他の女に興味がわかないのが良くないのか。狙うべきは痴女の婦警なのか。なんかちがうな。
「加速しようよ~、加速~」
妹を無視して安全運転で帰ったら、1時近くになった。親はもう寝ていた。俺ももう寝たい。寝ている間に4倍で事態が進行している恐怖がよぎるが、覚悟を決めて寝てしまえ。
メットを脱ぎながら、妹が言った。
「オーガは勝つよ。あたしが勝たせる」
確かに、お前の応援程、俺の力になる物は無いが。
唐突に、俺の前に指が突きだされた。
「こういう漫画、あるよね」
指は、濡れていた。まさか、なめろと言うのか。いいのか。むしゃぶりついちゃうぞ。
気持ちとは裏腹に、俺は硬直していた。舐めた瞬間に暴走するかもと思うからだ。俺は妹への想いを断ち切ってアーザートにのめり込むと決めたはず。
「乾いちゃった。もう効果無いよたぶん。もう一度やるからね。絶対、明日の奥の手になるから。ふざけてると思わないでちゃんとなめて」
妹は、真剣だった。気合を入れて喉の奥というより、脳から何かを絞り出すようにして、口の中で指を濡らし、直後に俺の口にそれを突っ込んできた。
その瞬間、歓喜どころか悲しい想いに俺は囚われた。やっちまったのか妹よ。自分で使用するだけならともかく、加速脳内麻薬を体外に取り出して、あまつさえ他人に服用させることに成功してしまうとは。
何で考えないんだ。お前は、自力で加速できない旧人類にとって、神々の美酒に匹敵する存在になってしまった。もう俺が超能力に覚醒して世界を支配するしか、お前を助ける手段はなくなってしまった。だのに、なんだこのチンケな能力は!現実世界で4×2、ゲーム内で4×2×2になったところで、お前を守ることなんかできやしないじゃないか!
もう、疲れ切った俺は何も考えられず、スイッチが切れたようにベッドに倒れ込んで寝る事しかできなかった。
主人公の考えは、被害妄想を多分に含んでおりますが、どうなることやら




