半魔の類
「………何が起こったんだ……?」
僕が海賊王に向けて放ったウシロガミの力。
それはとてもヴィルヘルム先輩と海賊王の激突に間に合うものでは、無かったはずだ。
完全に海賊王の一撃の方が早かった。
…だが、実際海賊王の右手に宿った魔力を打ち消した。
さらにもう一つよくわからないことがある。
僕はあんな状況下ではあったが、完璧に海賊王目掛けてウシロガミの力を放った。
それなのに、ヴィルヘルム先輩の任神の力まで打ち消してしまったのだ。
「…ヴィルヘルム先輩、右腕に異常はありませんか?」
「右腕?…特に何とも無いが、どうかしたのか?」
「……そうですか、…いえ、何でもありません。」
………どういうことだ、ヴィルヘルム先輩の任神の力を消してしまったのなら、文字通り、
ヴィルヘルム先輩の任神を殺してしまったはずである。
何がどうなっているのだ……。
「……(魔力や、任神の力だけを無効化した……?)」
ウシロガミの力は、他を殺すもの。
そんな、傷付けずに無効化するなんて都合のいい能力では無いのだ。
………やはり、一度じいちゃんに手紙を送っておくか……。
ウシロガミには、まだ知らないことがあるようだ。
「後神、まさか助けられるとは思っていなかった、すまない。」
しばらくしてから、ヴィルヘルム先輩が話しかけてきた。
「……い、いえ、…彼はどうするんですか?」
僕は海面に仰向けで浮く、海賊王の姿に目をやった。
「……あのまま、海の藻屑としてやりたいが……。奴の仲間の元に連れて帰るさ。」
「………そうですか……。」
その時だった。
『……ゥォォオオオオオォオオオオオオオォオオオォオオオオォォォッ……!!!!!!!!』
海賊王から、彼のものとは思えない、耳を劈く雄叫びのような声が、荒々しく辺りの海に響き渡った。
「………なんだ?!」
何故か全身のウシロガミの力が、雄叫びに呼応して躍るように湧き上がる。
「……………この感じ……、まさか……!!!!!」
ヴィルヘルム先輩が、目を見開いて奴を睨んだ。
「…何ですか!?」
「…………後神、覚悟しろ………。アレが奴、ディビッド・ジョーンズの異常な力の元凶だ…!」
海上の宙に浮くソレはもう、海賊王では無かった。
漆黒の片翼に、赤黒いオーラを纏った半身。
人の持つそれとはかけ離れ、肥大化した左腕。
そして、人を睨み殺すような真紅の眼。
「…………噂は本当だったようだな。…奴は初代海賊王、俺の祖先であるキャプテン・ヴィルヘルムを葬るために、悪魔の血肉を喰らった、史上最凶と呼ばれる三代目海賊王、ボルナルド・バットフィールドそのものだ。」
三代目、海賊王………?
「あぁ、………そして奴、ディビッド・ジョーンズは、棺に眠る三代目の体の一部を体内に取り込み、強大な力を得たんだ。単なる噂だとばかり思っていたが……。」
…日本にいた時、悪魔憑きと戦ったことがあるが、どうもその時の雰囲気と似ている。
「……いや、奴は悪魔憑きとは違う。半妖半魔の類の者だな。」
「どちらにせよまだ終わりそうにはありませんね……。」
「……ふっ、そのようだな。………行くぞッ!!!」
「…はいッ!」
おそらくこれが、この任務最後の戦いになるだろう。
僕はヴィルヘルム先輩と共に走り出した。




