ライフル銃の少女
「ローライト法術学校ってここであってますよね?」
僕は見張りの門番に尋ねた。
「ほう!君も我らがローライトへ入学希望か?」
遠目屈強に見えた門番の老父は、愛想よく表情を緩めて言う。
「ええ、祖父に言われまして、」
「良いこころざしだな!その髪色、ここら近隣の国では無いな、一体何処から来たのだ?」
「日本です、」
すると、門番は首を傾げて言った。
「…にほん?…聞いた事が無いな……。西か?東か?」
「ここと比べると極東の島国ですね。」
「極東か、よく黄金が取れると聞くが………。ははっ、それはさて置き通行証の提示を願おうか。」
僕は肩から下げた鞄から一枚の紙切れを取り出して門番に手渡す。
「……よし、本物のようだな。君はー、なんだ、魔法が使えるのか?」
「魔法…ですか、どっちかというと技体術の方が得意ですね。」
「わしと同じだな!得意不得意は元来の素質で左右されるから厄介なもんだ!」
得意不得意以前に僕は魔法を扱ったことが無いのだがな。
「そういえば、さっきも君と同じ黒髪の女の子が来たよ、その子は欧州出身だったがね。」
「ここら辺で黒髪は珍しいみたいですね?」
「ああ、居るには居るがあまり見ないなー。まぁ、何がともあれ遠路はるばるご苦労だったな!さぁ入るがよい。」
門を過ぎ、水路をまたぐ小さな橋を渡るとやたらと広い広場に出た。
中央に大きな噴水があり、この学校の生徒たちの溜まり場になっているようだ。
数人の生徒が噴水を囲んで談笑を楽しんでいる。
噴水の広場を抜け、校舎へと続く異常に長い階段を登っている最中に、段差に座ってヘタレこんでいる少女が視界に入った。
やけに目に入ると思えば、その少女は背中に自分の背丈ほどもある大きなライフルを背負っているのだ。
「……、大丈夫か?」
「……………、……大丈夫に見えますか?」
「………大丈夫じゃないな。」
「……………その通りです。」
思わず声を掛けてしまったのだが、少女はこちらに見向きもしない。
「……スコーピオンM80_10、こんなに重いとは思いませんでした…………。」
「……スコーピオンM80_10?このライフルの事か。」
「…………はぃ、」
「はぁ、…持ってやろうか?」
男子たるもの困っている女性に救いの手を差し伸べるべきであろう。
「………そうして貰えれば…嬉しいです。」
少女の肩にさがったライフルのストラップを掴み、自分の肩に回して立ち上がろうとした瞬間、
「重ッ!!!」
ライフルの想像以上の重さに足元がふらついてしった。
「……、っと。」
危うくもう少しで階段から足を踏み外してしまうところだったな。
ていうかこんな物担いで来たのか、この少女。
「………役立たずさん、ですね………。」
そこで少女は笑顔を見せた。
よく見れば、少女の髪色は僕とよく似た黒髪だ、門番のおじさんが言っていたのはこの少女のことか。
「このライフル、女の子が扱うような代物じゃないだろ。」
「はい、兄の形見ですから。」
「………、形見か。」
「まぁ、死んで無いんですけどね。」
「なんだよっ。」
なら形見じゃないじゃないか。
「……、色々あるんですよ。」
「……、そうか。」
ところで、と、少女は話を切った。
「あなたはここの生徒さんですか?」
「あー、いや。ここに来たのは今日が初めてだよ。」
「……え、じゃあこれから初期審査受けるんですね、」
「うん。」
ここローライト法術学校では、完全に能力によってクラス分けされるランク別制度を適用してあり、入学時に個々の実力を測るために初期審査が行なわれる。
ちなみに評価ランクは、
Sα>S>Aα>A>Bα>B……………Eα>E
と、12段階に分けられ、学校内外での待遇もランク相応で増して良くなるそうだ。
「目的は同じですね。」
「ああ、これからよろしくな。また会う機会があれば、」
「そうですね。」
審査会場まで向かう途中、交わす言葉は無かった。
「……銃、運ぶの手伝ってくれてありがとうございます。」
「あぁ、いいよ別に。」
そして別れ際にきびすを返し、少女と行動を別にした。
「………………、……。」
名前くらい聞いたら良かったかな。




