#6
「…………疲れた……」
帰宅するなり、タカトは思い切りソファにダイブした。
染みだす疲れに、もう今日はこのまま眠ってしまおうとタカトは思う。
あの後、海に執拗に風呂を勧められ、仕方なくお湯を借りた。
20分ほどで出ると、おそらくタカトの汚れた服が入っている洗濯機が既に回っていて、洗面所に置いてあるカゴの中には綺麗なバスタオルと新しい下着、それから彼の(おそらく所持している中で一番小さい)ジャージが入れられていた。
視線を移すとドライヤーまでもがすぐに使える状態で置いてあり、海の完璧なまでの用意周到さにタカトは苦笑するしかなかった。
出されたものを身につけ、髪を乾かしたタカトがリビングへ向かうと、海がコーヒーを入れて待っていた。
一息ついて、そろそろ帰宅しようとタカトが席を立ったとき、彼は恥ずかしそうに俯きながら言った。
『洋服、綺麗になったらメールする』
推測するに、彼はなんでもいいからメールする口実が欲しかったのだろうタカトは思った。
「やっぱ海って、けなげだな。強引だけど」
バッグから携帯を取り出し、クッションに埋もれながらメールボックスをチェックする。
海からのメールは、まだ届いてはいなかった。
「俺ってホント、押しに弱いなぁ」
海の真っ直ぐに自身を見つめる瞳を思い出したタカトは、ぶるっと身震いをする。
今までに、あんな真摯な目を向けてきた人間が居ただろうか。
彼は強引で頭に血が上ると我を忘れる暴走癖があるものの、一度落ち着くと、ただの恥ずかしがり屋だ。
「なんつーか、子供だよなぁ」
タカトはふっと微笑をこぼし、携帯を床に置いて瞼を閉じた。