星空の下で……
渚はいつものように、屋上のドアをあけ後ろ手にドアを閉める。
一人になれるからとここに来たのだが、驚いたことに先客がいた。
「こんな所で何しているんですか、師匠。」
「師匠はヤメェゆーたやろ。ホンマ融通きかんやっちゃなー。いや、京ネェがなかなか降りてこーへんから、いっぺん学校の屋上見とこう思てなー。うちのチューガク立入禁止やから。」
シシンだった。他の場所に行こうかとも考えたが、その提案は却下してシシンの隣に寝転がった。このバランスの悪い少年は、不思議なことに、渚のような人間でもそばにいて安心できるような不思議な包容力を持っている。今のこんがらがった、心を整理するにはこの少年の傍にいたほうが、いいだろう。
「でも、どうやって入ったのですか?鍵かかっていましたよね。」
「ああ、ちょっと、排水用のパイプ伝って登ってきたんや。」
「ははは、またまた、ご冗談を…………。」
この学校の排水用のパイプは、予算の関係かあまり丈夫にできていないため、人の体重を支える事など出来ないはずなのだが…。
突っ込むと面倒なことになりそうなので渚は早々にこの話題を切り上げる。
「師匠。」
「なんやー。」
「女の子、泣かせちゃいました。」
「五秒やるから遺言考えとき。」
「ホント極端ですね師匠!?あと、それだと考えただけで言えていませんよね!」
なにやら危険な空気を放ち始めた、シシンから距離を取り、渚は今までの出来事を包み隠さず話した。
「ほほー。一目惚れなー。とうとう渚くんにも春がきよっかー!」
言わなきゃよかったと思った。
「ま、冗談はこんくらいにしてやなー。はっきり言わせてもらうと、そらお前が悪いわ、渚。」
いつの間にか、呼び名が変わっている。それは、なにかを伝えようとしている合図だった。
「渚の過去は知っとるし、正直同情もしとるよ?でもな、やっぱり人間は一人では生きていけへんよ。ありきたりな事ゆーたけど、でもやっぱりコレは一つの真理みいなモンやからな。」
「そうですか………。」
やはり、間違っていたのは自分なのだろうか?
「とか言いつつ、実は渚の方が正しいゆーてみたりー!」
「はぁ!?」
「とか言いつつ、実は唯一正しいのは俺とかおもとったりー!!」
「どっちなんですか!?」
混乱する、渚を見てシシンはケタケタ笑った。
「俺が言いたいのはな渚、あんま若い内から何でも決めようとすんなゆーこっちゃ。」
シシンはそういうと、ピョンと立ち上がり、クルクルと踊るように、飛び跳ね回る。
「俺の中に昔は絶対的な正義があると信じていたり。お前が昔幸せだった時、今とはまったく違ったように。人の信念、考えゆーもんは『時』や『場合』や『人』によって、千差万別、十人十色。さっぱり綺麗にうつろうもんや。
せやから、こんな若い時に『これこそ、絶対的に正しい事や!』なんて、決め付けんのは、時期尚早やで。」
シシンはひとしきり踊り終えると、ペコリと頭を下げて、再び渚に向き直った。
「もっと色々経験し。もっと色々見て聞いてき。もっと色々、悩んでき!何かを決めるのは、それからでも遅ないやろ?」
まったく、この中学生は………。
「はい。わかりました。」
どうして、こうもまぁ清々しいことを言ってくれるのだろうか?
「ま、とりあえず今日のところは、渚ニィが真ネェに謝らなあかんでー。」
「うっ。善処します…。」
苦い顔で、渚が頷くのをみてシシンは再びケタケタと笑った。
…†…†…†…†…†…
「おー、京ネェ?ちょい屋上に来て。渚ニィが話があるんやって。やから真ネェもつれてきてやー。」
そう言って携帯をきるシシンをみて渚は情けない表情になった。従来の、臆病さが発揮されたのだ。
「ど、どうしましょう。もし許してくれなかったら……。」
「うーん。惚れた弱みがあるから大丈夫やと思うで。」
「それ頼りにしている時点であまり誠実じゃないですよね!それに、相当怒っていましたし……。」
また震えだした、なぎさを見て、シシンは苦笑を浮かべた。
「まあ、舞台設定は俺がしたるから。安心しー。」
シシンがそう言って渚の肩をポンとたたいた時、
「シシン、来たわよー。」京香が屋上に入ってきた。どうやら約束どおり、真を連れてきたようだ。
真を見た瞬間、渚が一瞬で凍り付いてしまったのを見て、一緒に来ていた平八が渚の後ろに回り込んで、豪快にその背中を叩いた。「シャキッとしろ!男だろうが!?」
「は、はい!」
そんな光景を満足気に見ながら、シシンは京香に話し掛ける。
「おお、早かったなー!京ネェ………。」
シシンの言葉が途切れた。
「片桐くん…災難だったわね♪」
「委員長!皆さんまで!?」
京香の後ろからSクラスのメンバーが顔を出したからだ。
「…。」
「そこでバッタリ会ってついて来ちゃったの。」
「…………………………。」
「正直悪かったと思っているわ。」
シシンとしてはこの後二人きりにして謝らせるというプランだったのだが、京香のせいで台無しだ。
非難タップリのシシンの視線に、京香は思わず謝ってしまったのだった。
「ま、ええわ。演出はかわらへんし。」
「演出?」
京香が不思議そうな顔をして訊ねてくるが、シシンはニヤリと笑うだけで答えなかった。
「はあ、皆さんまでもう真っ暗なのによくこんな時間までいましたね。」
「夏休みの予定が決まんなかったのよ。」「なあー彼女持ち!どうせならお前が決めてくれよ!!」
「アラ、ダメよ!!片桐君と桐原さんは夏休みの間は二人っきりですごすんだから」
「おっと、そうだった!!コリャ余計な事言っちゃったかな!?」
ニヤニヤと笑みを浮かべ自分をこづいてくるSクラスのメンバーに溜め息をつき、
「もう、どうにでもして下さい………。」
色々とノリと記憶力の良すぎるクラスメイトに絶望と、諦めの極地(もう、二度と忘れてもらえないから)に達していた渚だったが、
「あ、あの…………。」
真が話し掛けてきたとき、笑って離れて行ってくれたことには、心の底から感謝したいと思う。
「あ、あの…私…………。」
「真さん!」
何か言い掛けていた真を遮り、渚は勇気をだして声を振り絞った。
その時、
「おい、上を見てみろ!!」
平八が大声をあげたため、その場にいた全員が、空を見上げた。そこには…
「うわ……………。」
「え、なんでこんな都会で!」
「綺麗…………………。」
そこには、
すっかり暗くなった夜空に、まるで宝石のような美しい星達が輝いていた。
都会ではすっかり見れなくなってしまった満天の星空に、その場にいた全員が絶句していた。
いや、正確にはそのうち二人は違う反応をしていた。シシンと京香の姉弟だ。
京香は皆と同じように空を見上げるシシンを、何をしたのと?と言うように見つめており。シシンは、星空を見上げて満足気に微笑んでいた。
そして、真と渚は………。
…†…†…†…†…†…
なるほど、演出とはこういう事でしたか。でもどうやっているのでしょう?これ…………。
そんな事を考えながら、渚はチラッと真のほうを見てみる。
真は自分の大きな瞳に星の光を輝かせながら、その光景を見ていた。そして渚の方へ向き直り微笑んだ。
「綺麗ね。」
「ええ、心が洗われますよ。」
「でも、私は貴方の笑顔の方が好きよ。」
「恥ずかしいこと言わないでください。」
そう言った後二人は再び空を見上げて無言になった。
暫くたって、渚は漸く口を開く。
「さっきは、酷いことを言ってすいません。」
「良いわよ。傷ついたけど、気にしていない。」
「でも、僕はやっぱりまだ、あの生き方が間違っているとは思えません。」
「それは………。」
「でも、貴方の言い分も、間違っているようには思えませんでした。」
「…………!!!!」
「だから僕は少しだけ、この高校生の間だけ、もう少しだけ人と一緒にいたいと思います。」
「……あ!」
渚が手を握ってきたので、真は真っ赤になって渚を見るが、渚は空を見上げたままだった。
一瞬、不服そうな顔をした真だが、渚の耳が暗い中で真っ赤に染まっていることに気が付き、満足気に微笑んだ。
「放送みたいに、結婚を前提にと言うのはまだ早いと思います。だから………僕の友達として、親友として、一緒に居てくれませんか?」
「もちろん。断るわけ無いじゃない。」
そして、二人の影は寄り添い合い、いつまでもこの奇跡の星空を見上げていた。
…†…後…日…談…†…
今日から夏休みに入る。初日から一週間は他の寮生は里帰りするので、渚の住む男子寮は随分と静かだ。
いつものように、六時に起きた渚は日課のジョギングを終え、シャワーを浴びていた。
風呂場から出てきたあと、携帯に着信履歴がたまっていることに気が付いた。昨夜、Sクラスや鬼瓦先輩などとメアドの交換をしたため、早速使って来ているのだろう。
渚はその着信履歴を流し見していき、とある名前の処でバーを止めた。
その名前を見た後、渚は苦笑し電話をかける。
「もしもし?」
その人の名前は、桐原真。
彼の親友だった。
《END》
終わったー\(^O^)/
お初にお目にかかりますm(_ _)m
小元数乃(♂)です。
どうでしたか、俺の発原稿?
ん?真があんまりきつい性格ではなかった?
一応この物語には続きがあり、そこで真を暴れ回らせる予定だったのですが、…………………あんまり人気無いんですよね、これ。(T-T)
というわけでここで切り上げさせて貰いました。
丁度もう一つの連載を始めたいと思っていましたし。
次の話は今回のとはまったく違う、ファンタジーモドキ!?
是非とも、楽しんでください。それでは!!!!
―ギョームレンラク―
最後にこの小説のご意見御感想を募集しています。批判良アドバイス良なのでガンガン書いてねー!
でも誉めるところは誉めてくださいよ!?
………ついでに…………
こんどの連載が終わるまでに、この小説のお気に入り登録が十人を越えたら続きを書こうと思っているので、是非とも登録お願いします(o^∀^o)




