【終わりと始まりの創星神話 0巻 第一章0話】
懐かしい、昔の夢を見ていたようだ。
しかし、現実という悪夢が僕を無常にも引き戻す。
「ーーボクが起こしてあげたのに、また寝ちゃうの?」
遠くの方から、少女の声が聞こえたような気がした。だがしかし、それはーー直接頭に響くような声だった。薄目を開けると、霞む視界にはその声の主が居た。
その声は遠いどころか、僕の胸の上に跨って発せられたのだ。
「クロネ……良かった、無事ーーみたいだね」
僕は上体を起こそうとして、しかし思うように身体が動かず仕方がなく目の動きだけでクロネと呼んだ少女を見た。
彼女は僕の腹部にのしかかり、目を細めて見下ろしながら、口元を笑みの形に変えてその顔を僕に近寄らせる。
「このままだとーーお兄ちゃん、死んじゃうね?」
クロネの吐息が頬にかかる。彼女の言う通り、僕の命はーーそう恐らく長くはないだろう。
チラと左肩を見やると、ざっくりと抉り斬られた傷口から、夥しいほどの鮮血が溢れ出していた。
今も流れ出していく血液が僕の体温を急激に奪い取っていくのにつれて、覚めたばかりの意識が遠退いていく。
このままでは、いずれ出血多量で死んでしまうだろう。
離れた所からは、未だ続く戦闘の音が響いている。このまま意識を手放してしまえば、どれほど楽な事だろうか。
辛うじて繋ぎ止めている意識もそう長くはない。微睡むような感覚に襲われて視界が霞む中、近寄らせたクロネの頭に無事な方の手を寄せて、そっと撫でる。
そして、喉を鳴らして喜ぶクロネを抱き寄せて口付けを交わす。
「ーーお兄ちゃん、良いんだね?」
恍惚の笑みを浮かべるクロネに僕は頷いた。
「ああーー全部、終わらせよう」
そうして、僕はクロネと溶け合うように一つになる。
何でーーこんな事になったのだろうか。
僕は、闇に溶けていく意識の中でこれまでの経緯を思い返していた……。




