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第9話 空飛ぶ焼き鳥と魔神の翼(ジェットスクランダー)

お正月気分も抜けきらない1月7日過ぎ。

世間では七草粥で胃を休める時期だが、岩手の山奥にあるアリーシャたちの館では、依然として肉と魚の宴の余韻が残っていた。

「ううむ、タコも美味であったが……こう寒いと、やはり温かい炎が恋しくなるな」

こたつでミカンを剥きながら、アリーシャが呟く。

「贅沢言うなよ。七草粥も食っただろ。……ん?」

ケンジが窓の外の異変に気づく。どんよりとした冬の空から、不穏な影が急速に接近していた。

キェェェェェーーッ!!

甲高い鳴き声と共に、強烈な突風が館を揺らす。


「な、何奴だ!?」

庭に飛び出した一行の前に現れたのは、空を覆う巨大な翼。鋭い鉤爪と派手なトサカを持つ、巨大な怪鳥だった。

「クックック……! 肉のオーク、蛸のクランケンが敗れたと聞いたが、奴らは所詮、地を這う下等生物よ!」

怪鳥は上空でホバリングしながら、嘲るように見下ろした。

「我が名は『怪鳥参謀ロブラドン』! バルバロ魔導空軍の精鋭なり! 貴様らごとき、地上から動かずとも黒焦げにしてくれるわ!」


「空飛ぶ敵か! シャノン、ラパン!」

「御意! ……しかし、空では我が牙も届かぬ!」

シャノンが黒豹に変身し、牙を振るうが、ロブラドンは遥か上空。攻撃は空を切るのみ。

「届かないぴょん! 雪女の氷攻撃も届かないぴょん!」

ラパンも地団駄を踏む。

「ハッハー! 無力、無力! これでも喰らえ『バード・ミサイル・フェザー』!」

ロブラドンの翼から、鋼鉄のように硬化した羽根が雨のように降り注ぐ。

結界で、なんとか防いでいるが、今にも、結界は破れそうだ。


「くっ、防戦一方かよ!」

ケンジたちはアリーシャの防御魔法の結界(光子力研究所のバリアみたいな)に逃げ込むのが精一杯だった。

「おのれ、卑怯な! 降りてきて正々堂々と戦わぬか!」

アリーシャが叫ぶが、ロブラドンは高笑いするだけだ。

「馬鹿め高度な戦術と言え! このまま結界を削りきってやる!」

絶体絶命のピンチ。しかし、ケンジのアニメオタク脳が高速回転を始めた。

昭和のTVアニメ知識が、雪国の空にゲッタースパークする。


「……そうだ! 空には空だ!」

「ケンジ、何か策があるのか!?」

「アリーシャ! お前、昨日俺と一緒にAmazonプライム配信で見た昔のアニメ覚えてるか!?」

「あの3機の飛行機が合体するようなゲッターなんちゃらロボットか?」


「違う! 『マゼンダーZ』だ! 黒鉄(クロガネ)の城だって、最初はドロッケン伯爵の空飛ぶ機械獣軍団に苦戦したんだが、何かを開発しただろー!?」

ケンジの熱い問いかけに、アリーシャの記憶がリンクする。

「……ああ、赤い翼! 『ジェットスクランゴー』!か?

「そうだ! TEMUで、買った、おもちゃのドローンに改造ATP魔法をかけて、空飛ぶ翼を召喚するべな!!」


アリーシャがニヤリと笑った。

「フフン……貴様は平民のくせに、我が国の賢者並みに頭がいいぞ。褒めて遣わす!」

アリーシャは杖を天空に掲げ、意識を集中させる。いつもの「上から目線」だが、そのATP魔力は本物だ。

「天焦がす不滅の炎よ、我がしもべのドローンに翼を授けよ! 召喚・エターナルウイング!!」


ボォォォォォ!!

虚空から炎の鳥――フェニックスの幻影が出現する。

「シャノン! 紅の翼、受け入れよ!」

「御意!!」

フェニックスの炎が、おもちゃのドローンに、直撃し、

エターナルウイングとなって、大空を飛翔した。

さらに、

「シャノン スクランゴークロスだ」


黒豹の戦士シャノンは、エターナルウイングに向かって、猛ダッシュし、ジャンプした。


カッッッ!!

光が収まると、そこには背中から燃え盛る炎の翼を生やした、漆黒の黒豹戦士シャノンが浮遊していた。

「こ、これが……空を飛ぶ力……! 身体が軽い!」


「まさに、大空はばたく紅の翼、その名もジェットエターナルスクランダー」

ケンジがノリノリで昭和のアニメソングを歌う。


「な、なんだと!? 地上の猫が空を飛ぶだと!?」

ロブラドンが狼狽する。

「逃がしはせぬ! 覚悟!」

空飛ぶシャノンの機動力は、ロブラドンを遥かに凌駕していた。

音速で背後に回り込み、炎を纏った前足の爪の一撃を一閃。

「必殺! BLACK パンサー 火拳スラッシュ!!」

「ギャァァァァァ!! 羽根が、羽根が燃えるぅぅぅ!!」

ロブラドンは火だるまとなり、きりもみ状態で裏庭の雪山へと墜落した。

ドカーーン! という爆発音と共に、香ばしい匂いが漂ってくる。

***

その日の夕方。

戦いを終えた一行は、裏庭で宴を開いていた。

「いやー、いい火加減だべ。「備長炭は、遠赤外線で、最高の焼き鳥が焼けるんだべ」

ケンジがうちわを扇ぐ先には、源さんが丹精込めて作った備長炭でじっくりと焼かれた、巨大な鳥肉の山があった。


「これは……絶品だぴょん! 皮がパリパリで中がジューシーだぴょん!」


ラパンが巨大な焼き鳥(ネギ間)にかぶりつく。

「バルバロの刺客は、なぜこうも美味なのか……」

シャノンも翼を解除し、黙々と鳥モモ串を食べている。

「ケンジよ、タレも良いが、私は塩が良いぞ」

アリーシャは満足げに、熱々の手羽先を頬張った。

「マジンガーとやらの知恵、役に立ったな。これからも私が飽きぬよう、面白い知識を披露するがよい」

「はいはい、姫様。次は野菜焼きも食えよ」

雪景色の中、炭火の煙と焼き鳥の匂いが立ち昇る。

バルバロ帝国からの刺客は、またしても岩手の食卓を豊かにして去っていったのだった。

(つづく)



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