表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

第7話 大晦日のプラチナ・リズムと、爆誕!アイドルユニット『異世界ラバーズ』



「ええい! ケンジ! 貴様の国の『オオソウジ』とやらは、いつ終わるのだ!?」


アリーシャが三角巾をして、はたきを振り回しながら叫んだ。

館の中は、戦場のような慌ただしさだった。


「文句言ってねぇで手を動かすんだ! 新年神様を迎えるのに、ホコリ被ってちゃ申し訳ねぇだろ!」


ケンジは割烹着姿で、おせち料理の仕込み――黒豆を煮ながら指示を飛ばす。


「ふん! 王女たる我に雑巾がけをさせるとは……。しかし、この『カマボコ』という練り物は美味だな。つまみ食いしてやる」

「あーっ! それは紅白の彩りなんだから食うな!」

一方、廊下ではシャノンと、ラパンが、驚異的な身体能力で掃除をこなしていた。

「ラパン殿! 天井の蜘蛛の巣、2時方向!」

「ラジャーぴょん!」


ラパンが強靭な脚力で跳躍し、空中で回転しながら天井を拭き上げる。

シャノンは残像が見えるほどの速さで床の雑巾がけを行い、摩擦熱でワックスがけ以上の光沢を生み出していた。

「よし、あらかた片付いたな……」

ケンジがお玉を置いて一息ついた、その時だった。


ズズズズズ……。

除夜の鐘にはまだ早い時刻に、地響きが鳴り響いた。

庭の雪山が爆発し、銀色の巨体が姿を現す。

「グオオオオオ!! 我が名は『プラチナ・オーク』! バルバロ様より遣わされし最強の刺客なり!」

体長2メートル。その全身は、白金プラチナの名の通り、眩いばかりの金属光沢を放つ皮膚に覆われていた。

夕日に反射して、ものすごく眩しい。

「年末のクソ忙しい時に……!」

ケンジが包丁を構えるが、オークは鼻を鳴らした。

「無駄だ! 我が皮膚はオリハルコンに匹敵する硬度。物理攻撃も魔法もすべて弾き返す! 貴様らの絶望する顔を、おせちの重箱に詰めてやるわ!」


「なんて迷惑な詰め合わせだ! シャノン、ラパン!」

「「御意!!」」


シャノンとラパンが飛び出す。

しかし、剣や蹴りではあの硬い皮膚には通じないかもしれない。

二人は目配せをした。

「ラパン殿、昨夜テレビで見た、あのお笑い番組の『ネタ』……いけますか?」

「呼吸はバッチリだぴょん! リズムに乗せて、衝撃を内部に浸透させる作戦だぴょん!」

「なんだと?」

プラチナ・オークが怪訝な顔をした瞬間、ラパンが足を踏み鳴らした。

ズンズン、チャッ! ズンズン、チャッ!

「ウィー・ウィル・ロック・ユー」的なビートが雪原に響く。

「な、なんだこのリズムは……体が勝手に……!?」

オークが戸惑う中、シャノンとラパンが左右に展開した。

「「ここだ、ここだ、ここだ、イェーイ!」」

二人は軽快なリズムに合わせて、オークの脇腹と膝裏を交互に手刀で叩く。

それは攻撃というより、完全に『リズムネタ』の動きだった。


「右脇腹~♪」パンッ!(シャノンの手刀)

「左膝裏~♪」パンッ!(ラパンの蹴り)

「交互に見て~♪」パパンッ!(ダブル攻撃)

「ぐっ、うおっ!? なんだ、ダメージはないはずなのに、強烈な振動が……!」

プラチナ・オークの金属皮膚が、特定周波数の連続打撃によって共振レゾナンスを起こし始めた。

「とどめだぴょん!」

「合わせます!」

「「必殺! 3・3・7拍子・リズムネイションインパルス!!」」

ピッ、ピッ、ピッ!

ピッ、ピッ、ピッ!

ピピピ、ピピピ、ピピピッ、ドーン!!

最後の一撃が鳩尾に決まった瞬間、キィィィィン! という高周波音が鳴り響き、プラチナ・オークの全身に亀裂が走った。

「ば、バカな……。硬度ばかり気にして、柔軟性を捨てた我が肉体が、振動に敗れるとはぁぁぁ……!!」

パリーン!!

プラチナ・オークは美しい音色と共に砕け散り、その場には、とてつもなく上質な肉塊だけが残された。

「……勝った。けど、絵面がひどいな」

ケンジが呆然と呟いた。


「おお、こりゃあ見事な『白金豚プラチナポーク』じゃねえか!」

騒ぎを聞きつけてやってきたのは、近所の炭焼き小屋に住むドワーフにそっくり似てる源さんだ。

背中に背負った巨大な出刃包丁が鈍く光る。

「源さん! わかるのか!?」

「当たり前だべ。この輝き、脂のサシ、間違いねぇ。花巻が誇るブランド豚の最高級変異種だ。俺がさばいてやるから、ケンジは火をおこせ!」

源さんの手際は神業だった。

硬い外皮の下にある極上の肉は、瞬く間に美しいステーキ肉へと解体された。



その夜。

アリーシャの館の食卓には、分厚いステーキが山のように積まれた。

「これが……敵の肉か?」

アリーシャが恐る恐るナイフを入れると、肉汁が噴水のように溢れ出した。

口に運ぶ。

「……!! 甘い! 脂が果物のように甘いぞ! そしてとろける!」

「うまいぴょん! ほっぺた落ちるぴょん!」

「白飯が進みます! おかわり!」

ケンジ特製のガーリック醤油ソースが絡んだ白金豚ステーキは、悪魔的な美味さだった。

こたつを囲み、紅白歌合戦を見ながらの宴会は、最高潮に達した。


酒が回り、気分が良くなったケンジがスマホを取り出した。

「みんな、こんなにうめぇ肉を食って、最高の気分だ。一曲作るべ!」

ケンジが起動したのは、流行りのAI作曲アプリ『Suno』。

「キーワードは……『UFO』、『岩手』、『ファンタスティック』、『オンリーワン』……ジャンルは『昭和歌謡ディスコ』っと」

数秒後、とんでもなくキャッチーで中毒性のあるイントロが流れた。

♪~~(スペーシーな電子音)

「おお! 良い曲ではないか!」

アリーシャが立ち上がる。

「我らで歌うぞ! シャノン、ラパン、フォーメーションだ!」

酔っ払った3人は、AIが生成した曲に合わせて、即興で踊りだした。

ケンジはその様子を動画で撮影し、適当なDISCOエフェクトをかけてTikTokにアップロードした。


ユニット名:『異世界ラバーズ』

曲名:『UFOウルトラファンタスティックオンリーワン』

概要欄:『AIで作った動画です。岩手から愛をこめて。』

アリーシャの美貌、シャノンのキレのある動き、ラパンの愛くるしさ。

そして背景の生活感あふれる古民家と、無駄にクオリティの高い楽曲。


「よし、投稿っと。……さて、年越しそばの準備すっか」

ケンジはスマホを放置して、厨房へ向かった。

***

翌朝。元旦。

「ケ、ケンジぃぃぃぃぃ!! 大変だぁぁぁ!!」

アリーシャの絶叫でケンジは飛び起きた。

「なんだ!? 新手か!?」

アリーシャは震える手でスマホを突きつけた。

「見ろ! 再生数が……Mとかになっておる!!」

TikTokの通知は止まらず、再生数は一晩で数百万回を超えていた。

コメント欄は世界中の言語で埋め尽くされている。

『AI生成動画のクオリティ高すぎ!』

『このセンターの金髪の子、実在しないの? リアルすぎる!』

『岩手ってどこ? サイバーパンクな都市なの?』

『曲が頭から離れないwww UFO!!』


「やったなアリーシャ! これでお前、世界的インフルエンサーだべ!」

「う、うむ……。この世界での打倒バルバロの第一歩としては悪くないが……まさか歌って踊って達成するとは……」

アリーシャは複雑な顔をしながらも、満更でもなさそうにスマホを抱きしめた。

岩手の雪原に、世界中からの「いいね」が降り注ぐ。

波乱の年は去り、さらに波乱に満ちた新年が、幕を開けたのだった。

(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ