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第20話  岩手ファンタジー・ライムス

重厚なヒップホップのビートが、岩手の静まり返った夜を震わせていた。


しかし、そこには異世界の魔力がオーロラのように渦巻き、雅な和風サイバーパンクの様相を呈している。

「Yo……言いたいことはそれだけか? 『吹き溜まり』だと? 笑わせんな」

仁王立ちでマイクを握るのは、ケンジ。

着古した青ジャージが、異世界の魔力光を反射して不気味に輝く。50歳の渋みを湛えたその顔には、隠しきれない「日常」の年輪が刻まれていた。


「ここは掃き溜めの鶴、あるいはダイヤモンドの原石。岩手の肥沃な土壌と異世界の狂った魔力、これらを混ぜた危険なカクテルだ。……まとめて飲み込ませてやるよ!」

ケンジの背後に「岩手」「日常」という巨大なゴシック体の文字が、幻覚のように浮かび上がる。


「『背景』がなきゃ主役も立てねえ! 50(フィフティ)の渋み、この青ジャージは『日常』という名の戦闘服ギアだ! お前の薄っぺらなラップ、俺のツッコミ一撃で『説教』に変えてやる!!」

ドォォォォン!!

ケンジの鋭いツッコミが物理的な衝撃波となり、夜気を引き裂いた。


「オーッホッホ! 黙れ無礼者! 控えおろう!」

一転して画面を支配したのは、黄金の輝きを放つアリーシャだ。彼女がティアラを掲げると、周囲に高級ステーキや極彩色のケーキの幻影が踊り狂う。

「私の胃袋は『可能性』のブラックホール! ソースの一滴までが王家の矜持プライド! 貴様の安い言葉など、私のデザートの付け合わせにもならないわ!」

その横では、対照的な二人が鋭い殺気を放っていた。


黒豹のオーラを纏い、瞳孔を野生のそれに変えたシャノンが低く唸る。

「『野良猫』だと? 獲物を前に喉が鳴るぜ。理性と野性のハイブリッド……お前はただの『餌』だ」

対するラパンは、可愛らしくウサ耳を揺らしながらも、その目は一切笑っていない。背後には血塗られた「殲滅」の二文字。


「『マスコット』? ふふ、可愛くてごめんね! でもこれはガチの『殲滅』! ぴょんぴょん跳ねて、お前の薄っぺらなライムを塵まで踏み潰してあげる!」

そして、トドメとばかりに二人の影が重なる。

マリーシャが虎柄の衣装をはためかせ、ドスの効いた関西弁で吠えた。


虎柄トラ見てビビっとんか!? ウチがドラゴンになれば街ごと焼き払うんや! これがホンマの『破壊力』! ……知らんけどな!」

「『だっちゃ』は伝統芸能だっちゃ!」

隣でサリーシャが飄々と空間を歪ませる。「私は『何にでも変身できる(オールマイティ)』! お前を次元の彼方へ吹っ飛ばしてやるっちゃーーーっ!!」

「カ・オ・ス!!!!」


六人のエネルギーが一つになり、夜空に巨大な爆発を巻き起こした。


「な、なんてことだ……」


敵対グループ「Cat クロー 5」のリーダー、ニャン・キーは、がっくりと膝をついていた。

「ただの田舎アイドルグループだと思ってたのに……。この、岩手の土着的な力と異世界の魔力が混ざったライム……勝てるわけがねぇ……!」

一方、勝利した彼女たち――「World Angel 5fet.ケンジ)は、後光の差すなかで完璧なポーズを決めていた。

背後には雄大な岩手山、そしてなぜか空中に浮かぶ輝く魔法陣。その隣には、巨大な湯気を立てるお好み焼きが神々しく鎮座している。

「フン、見たか。これが我が『World Angel 5』のラップちからだ!」


アリーシャが勝利のドヤ顔で言い放つ。

画面には**【完全勝利パーフェクト・ビクトリー】**の文字が刻まれた。

……しかし。

魔法の光が消え、静寂が戻ったとき、ケンジの目に飛び込んできたのは惨状だった。

バトルの余波で半壊した農家の納屋。

そして、黒焦げになって沈黙するトラクター。

ケンジは白目を剥き、口から魂のようなものを吐き出しながら崩れ落ちた。

「……で、勝ったはいいけどよ……。この壊れた納屋とトラクターの修理代……一体誰が払うんだっちゃ……?」

あまりのショックに、ケンジの口調までがおかしくなっている。

それを見たサリーシャが、明るくツッコミを入れた。

「ケンジ、語尾が移ってるだっちゃ!」

ラップバトルは完勝!

しかし、農家の家計は、これから真のデスバトルへと突入するのであった。

(つづく)

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