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第10話 新春、魔導王国ジャングリラのク-デタ-と黄金の国岩手の誤算



コタツで、TVの新春隠し芸大会見ていた、金髪縦ロール(ネット通販でヘアカーラーを買った)の美女・アリーシャ、彼女はフランス貴族のようなコスプレドレス(ネット通販TEMUで買った中国製品)を埃まみれにしながら、わんわんと泣いていた。

「ううっ……ひっぐ! 悔しいですわ! まさか、あの禿大臣のバルバロめに国を奪われるなんて……!」

「あー、うん。分かった、分かったから。とりあえず鼻かめ、鼻」


青いジャージ姿の白髪頭、ケンジは、ティッシュの箱を差し出した。

アリーシャの横では、うさ耳のラパンが人参をかじりながら呑気に揺れているが、青い軍服を着たシャノンは、猫耳を伏せ、悔しそうに拳を震わせている。

「ケンジ殿、聞いてくれ。我々は無念なのだ……!」

シャノンが語りだした。

「魔王オモンナと結託した悪大臣バルバロが、ジュリアス国王陛下を幽閉し……あろうことか、国民に『前王は疾走した』などと嘘を吹き込み、権力を手に入れたのだ!」


「ほう、そりゃまたハリウッド映画並みのクーデターだな」

「さらに!」アリーシャが涙目で叫ぶ。「私の館を襲撃し、あまつさえ呪術師団長ゲオグマの力で、我が精鋭なる国王軍を『動物』に変えてしまったのですわ!」

ケンジは、シャノンの頭(猫耳)と、ラパンの頭(うさ耳)を交互に見た。

「……なるほど。でおめぇさん達も、その『動物化』の影響で?」


「とにかく!」

アリーシャは立ち上がり、力説する。

「私は上級魔導士としての全魔力を使い、次元転移魔法で逃げ延びたのです! ……まさか、着いた先が『イワテ』なる辺境の、しかも肥溜め臭い納屋だとは思いませんでしたが!」

「肥溜めじゃねえ、有機肥料の香りだ。失礼なやつだな」

ケンジは頭をかきながら、ため息をついた。

目の前の少女は、国を追われ、父を幽閉され、命からがら逃げてきたのだ。その境遇はあまりに重い。しかし、彼女の瞳にはまだ「再起」の炎が宿っている。そして何より、さっき出したケンジ特製「焼きおにぎり」を3個も平らげた食い意地がある。



(……見捨てられねぇなぁ)

ケンジの内に眠る、東北男児の義侠心がうずいた。

「……話は分かった」

ケンジは立ち上がり、ジャージのチャックを首元まで上げた。

「アリーシャちゃんよ。おめぇさん、これからどうするつもりだ?」

「決まっていますわ! 軍を整え、バルバロを討ち、王都を取り戻すのです! ……でも、今の私には兵も、金も、作戦もありません」

シュンと肩を落とすアリーシャ。

ケンジはニカっと笑い、自分の胸を親指で指した。

「だったら、俺がなってやるよ」

「え?」

「**『軍師』**にだよ。俺はこう見えても、昔は……まあ、色々あったんだ。地元の消防団の副団長まで務めた男だぞ」


「消防団……? それは、イワテにおける近衛騎士団のようなものですの!?」

「まあ、火消しという意味じゃあ、似たようなもんだ。おめぇさんの復讐劇、このケンジおじさんがプロデュースしてやる」

「おお! ケンジ! 貴公、なんと忠義に厚い……! では、そなたを『イワテ方面軍・最高司令官兼軍師』に任命しますわ!」

「おう、よろしくな。で、軍師としての最初の進言だ」


「バルバロからの追っ手はどうなってる?」

その問いに答えたのは、猫耳のシャノンだった。彼女は急に鋭い目つきになり、納屋の入り口を睨んだ。

「……来ている。気配があるぞ、殿下」

「なにっ!?」

ザッ!

シャノンが目にも止まらぬ速さで抜刀し、納屋の引き戸を開け放つ。

そこには――

見るからに邪悪なオーラを纏った、黒装束のゴブリンアサシンが立っていた。

ただし、一人だけ。しかも、ちょっと息切れしている。


「ハァ……ハァ……! 見つけたぞ、王女アリーシャ……!」

「刺客か!」ケンジが身構える。

アリーシャが冷ややかな目で見下ろした。

「あら、バルバロの私兵ですわね。でも、たった一人?」

刺客は悔しそうに歯ぎしりした。

「くそっ……! 魔王軍の転移魔法コストが高すぎるんだよ! 岩手までの次元転移には膨大な魔力が要るせいで、今は一回に一人しか送れねぇんだ!」

「セコい! 魔王軍の財政事情がセコすぎる!」

ケンジが叫ぶ。

「問答無用! シャアアアッ!」

シャノンが野生の本能丸出し(黒豹モード)で飛びかかり、わずか2秒で刺客をボコボコにして簀巻きにした。

「……岩手の平和は、敵の予算不足に守られているようだな」

ケンジは安堵のため息をついた。


刺客を納屋の隅に転がした後、アリーシャは瞳を輝かせて提案した。

「ケンジ軍師よ! 敵の弱点が『魔力コスト不足』であるなら、こちらは圧倒的な『財力』でねじ伏せるべきですわ!」

「財力って、俺の財布には夏目漱石が数人しかいねぇぞ」

「いいえ! 私は感じますの……この土地、イワテの地底から溢れ出る、強大な黄金の気配を!」

アリーシャは杖を振り上げ、高らかに宣言した。

「金山です! この地には眠っているはずですわ、莫大な黄金が! それを魔力で掘り出し、オリハルコン級の強力な武器を量産して、魔王軍を殲滅するのです!!」

ケンジはあごに手を当て、「あー」と唸った。

「黄金ねぇ……。確かに、岩手は昔『黄金の国』なんて呼ばれて、平泉じゃあ金色堂なんてのも建てられたが……」

「やはり! さあ、すぐに掘りに行きましょう! 私の探知魔法が、あちらの山を示しています!」

アリーシャが指差したのは、奥羽山地の険しい山並みだった。

「いや、アリーシャちゃん。落ち着いて聞け」

「なんですの!?」

「そこにあるのは金山じゃなくて、今はもう廃坑か、あるいはただの岩盤だ。おめぇが感じてる魔力っぽいのは、たぶん……」

ケンジは少し言いよどんでから、真実を告げた。

「近所の農家が撒いた、**『高級堆肥(黄金ブランド)』**の匂いだと思うぞ」

「……え?」

「あと、強力な武器を作るって言うけどな」

ケンジは納屋の隅にある草刈り機をポンと叩いた。

「今のところ、俺たちの最強戦力は、この**『草刈り機(まさお君)』と、軽トラの『キャリイちゃん』**だけだ」

「嘘……嘘ですわ……! NHKの正月特番の『岩手黄金郷ジパングの伝説』は……!?」

ガクッと膝をつくアリーシャ。

お腹が「ぐ~~」と鳴り響く。

「ま、腹が減っては戦はできねぇ」

ケンジは笑いながら、ジャージのポケットからコンビニの袋を取り出した。

「金はねぇが、岩手には美味いもんは山ほどある。まずは『わんこそば』でも食って、作戦会議の続きと行こうや。……払いは俺が持つからよ」

「……ケンジ……」

アリーシャは涙を拭い、ティアラを直して立ち上がった。

「よろしい。その『ワンコ・ソバ』なる聖なる食事、平らげてやりますわ! 覚悟なさい!」

こうして、おっさんと異世界王女の、岩手からの逆襲劇がゆる~く幕を開けたのであった。


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