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第7話-ちょっと[私達]の大学回想シーンに付き合って!?[1]

場面は、東京まで巻き戻る。


そこは、いつぞやの多田家の高級マンション内にて。


先程までの、多田潤に対しての怒りは多少収まったらしく、父親[多田人志]は、少し冷静な態度をしている。


だが、その内面を引き出すようにその口からは、愚痴とも取れるような言葉がでる。


そして、その矛先は、母親[多田由紀]へ飛んでいくのであった。


[なんなんだ!あいつ[多田潤]は!幼い時から愛情を持って育てていたのに、何故ああなったんだ!]


声のボリュームは、限りなく高い。


次いで、母親が口を開く。


[まあまあ、あなた、落ちついて。私に八つ当たりするならまだしも、潤に当たる事はなかったんじゃない?しかも、追い出すなんて。]


八つ当たりされている当の本人である多田由紀は、至って冷静だ。


[今からでも遅くないわ。潤を探しに出かけましょう。捜索願も出しながらね。]


[それに、あの二人も協力してくれるわよ]


母親の視線の先には、TVを観ながらビールを飲み、談笑している、姉の[遊]と、その友人[小松里奈]の姿があった。


先に、[遊]が話し始める。


[えー!なになに?潤のやつ探しにいくの?Ok!手伝うよ!]


相変わらず、超陽キャ丸出しの台詞である。


何故か、潤には、とても優しいのだ。オタク弟なのに。


[ね?里奈っちも潤探しに行くっしょ?行ってくれるよね?]


言われた本人の同人作家である[小松里菜]は、夏コミで出す、同人誌作成に夢中で、遊の言葉が耳に入ってないようだ。


[おーい!里奈っちーー聞こえてるー!]


大音量で、遊は、里奈の耳元で騒ぐ。


すると、やっと気がついたのか、腐女子代表の小松里奈は、素っ頓狂な声で返す。


[ほえっ?あー、遊ちゃんかー、めんご、めんご。ウチ、趣味に興じると周り見えなくなっちゃうんだよねー、ごめんちゃい。]


そう言うと、その顔にしている眼鏡をクイッと、上にずらし、また同人誌作成に興じ始める。]


ここで遊の鋭いツッコミが炸裂!


[おーい!なんでやねーん!そこは、話聞くとこでしょーがーい!]


またも遊の大音量が室内に響き渡る。


[うーん?まてよ?プロットをこうして、ああして?こうした方がいいかにゃ?]


もはや、聞く耳持たずとはこういった事を言うのかもしれない。


加えると、小松里奈が作成しているものは、主に男性受けするような同人誌ではない。


簡単に言うと、BLものである。


まあ、腐女子といえば、ボーイズラブものというオタク特有の見解があるからして、(いや?あるかな?)一般人には到底理解不可能だろう。


[にゃはー?結構いい出来だニャ?やっぱり、キャラ個性が立たないと、ストーリーもつまらなく感じますなー?]


そして、またも眼鏡をクイッとあげて、PCのキーボードを叩き始めた。


[はぁ、駄目だこりゃ。完全に里奈っちゾーンに入っちゃってる。もしかすると、あと何時間も気づかないかも。]


話は、遊と里奈の出会った大学時代の過去に遡る。


元々、二人にはほとんど接点など無かったのである。


学部も違えば、学科も全然関係ないような所だった。


その出会いは、必然的とでも言うようなものであった。


それは、[小松里奈]が同人誌サークルに所属していた頃だった。


部員集めに奔走しており、ビラを自分で作成し、新入生やら、在学生に渡すといった事をしていた時まで遡る。


それは、里奈が2年の時であった。そして、渡された遊は、3年であり、1年先輩だ。


サークル部室には、小松里奈がサークル長であり、もう一人部員がいた。


彼の名前を、[長谷川信]と言う。


長谷川の見た目を現すならば、俗にいう昔のアキバオタクそのものだ。


体型は、超肥満であり、体からは汗が滴り落ちている。まあ、見た目の通りといっては、失礼だが、彼は、生粋のアニオタ兼電子機器オタクだ。


流石に、BLものには興味がないのか、小松里奈のBL論にもなにも反応しない。おそらく、百合物だと興奮すると思われる。


まあ、俗にいう萌え豚という表現が近いだろう。


その萌え豚である長谷川信が口を開き始める。


[いやはや!こうも部員が集まらんと、同人誌作成どころではありませんなー、里奈殿?]


キモオタが、サークル長である、小松里奈に対して喋りかける。


当の本人である腐女子代表の小松里奈は、パソコンに夢中で、これまた気づかない。


[あれれー大丈夫ですかな?里奈殿?何か考え事でもしてるのですかな?]


キモオタは、私物であろう美少女タオルで汗を拭う。だが、それだけでは、彼自身から滲み出る汗を全て取り去る事は出来ないようだ。そして、その汗は彼の美少女Tシャツにも染みわっていく。


[それにしても、暑い!暑いですぞー、さすが夏真っ盛りといった所ですなー!里奈殿?]


[もう7月に入りましたからなー!いやはや]


彼の巨体(体重130kg)を支えている椅子そのものが、可哀想だ。


そして、話を振られたサークル長さんは、ガン無視といった所だろうか。



[うーん?やっぱり駄目だニャー。前回の冬コミケ出版の売り上げじゃ、サークルを維持する為の費用に回せ無いかなー]


[ちょいキツイっすー]


キモオタに、返事した訳ではなく、自分自身に話しかけているような感じだ。


それを聞いていたキモオタはこう話し始めた。



[やっぱり、部員増やさないと駄目ですよ!里奈殿?このままじゃサークル潰れますって!]


二人は、同じ2年だ。猶予はあまりない。


[サークル潰れる]という単語に反応したのか、里奈がキモオタに話す。


[確かに、長谷川が言う事も一理あると思うニャー。でも、何で部員集客しないかと言うと、ビラ作成がただ面倒なんですよ。これが!]


サークル長が言う台詞ではない。


[だってあれじゃないっすかー、長谷川ちゃん?ビラ作成とか、そんなもんに時間割くくらいなら、同人誌作成したほうがいいもん。ウチ]


小松里奈の眼鏡がキラーんと輝く。


[な、何を呑気な事を言っておられる!里奈殿!今や一大事なんですぞ?あーもういいです!わたくしがやりましょう!ビラ作成は]


キモオタが、小松里奈のやる気の無さに呆れたのか、何故かやる気を出し始めた。


[まあ、そう言ってくれると助かるニャー。まあウチは、ビラ配りだけでも手伝うし。]


そう言うと、サークル長さんは、またパソコンに興じ始めた。


長谷川は知っていた。こうなると小松里奈は現実との境界線をシャットダウンしてしまう事を。もう彼の声は彼女には当分耳に入らないだろう事も。


[仕方ないですな!吾輩が一肌脱ぎましょう!全力でサポートさせて頂きますぞー!]


[まあ、頑張ってにゃー。]


長谷川が頑張る事に微塵も興味が湧かないのか、サークル長さんは、パソコンを打ちながら、右手をひらひら~と振って答えた。


その一部始終を部室の外から覗いていた人影があった。


[多田遊]である。何故3年で、いかにもオタクとは無縁であろう彼女が同人誌サークルを覗いてるかというと、彼女の友人から、面白いサークルがあるよ?と聞いた為だ。


最初は、微塵も興味が沸かなかった。[遊]自身、腐女子やらキモオタが話しているオタク議論なぞさっぱり理解不能だったからだ。


それは、今のこの同人誌サークルの事を指しているといっていいだろう。


だが、次第にどういった活動をしているかについては、興味が湧いてきた。


アニメとか、同人誌とかは見る気が起きなかったが。


[うーん?私、3年間も大学に在籍してたけど、同人誌サークルなんて、知らなかったなー。ちょっち、興味あるかも?]


部室の外で小声で呟く。



















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