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9回目の訪問

あけましておめでとうございます。

今年もぼちぼちアップしていきたいかと思います。

お付き合いしていただければと思います。

杖を作った次の日の帰宅時のルートで異世界に行くことができた。


ピエロさん「・・・」


何故か、今日は何も言わなかった。謎である。


カケルは、ロボットのように言っていた言葉を言わなかったことに違和感を覚えつつも駅を離れた。

この間の帰りのようにまだ、冒険者で村はごった返していた。

この状況を知るためにギルドに行ってみるも、ギルド内にも大勢に人がいて奥まで行く勇気はなかった。

万が一ぶつかってしまうだけで、死ぬ可能性があるためだ。


ここにいてもしょうがないので、何か聞ければと思い魔法屋に行くことにした。

しかし、魔法屋も人が溢れている。戦闘準備をしているのか、魔法の書を買う者や巻物を買う者が押し寄せているようだった。

窓から店の中を覗き込むとガロウがあわただしく接客をしている姿がいつものいかつい感じがなく面白かった。


行ったことある場所は、回ってみたものの人が多い原因はわからなかった。

行ったことはないが、武器屋や道具屋、宿屋も人、人、人とこれまで全く見かけなかった村なのに、この世界の人がすべて集まったんじゃないかというぐらいいて、

しかも、何故か完全武装している者も多く物騒ではあった。


何もすることも無いので、冒険者を避けながら、ふらふら帰ろうかと思っていると、ピュアを見つけた。

相変わらず小さくて白くて可愛い猫人族の女の子。

覚えているか分からないが、ピュアに近づき話しかけた。


「やーピュ・・あ!この間の猫ちゃん!」

ピュアというのは、カケルが勝手に付けた愛称。本人には何も話していないから、ピュアとは呼べない。


「??」

可愛い仕草で首をかしげたピュアだが、しばらくして思い出したのか

「飴人間か、ずいぶん見かけなかったが生きていたんだな。弱いくせに!!」

ピュアは、目を大きく見開きカケルをじっと観察する。

「この間よりかは、強くなっているみたいじゃないか?また、飴を貢ぎに来たのかにゃー?」


「ハハハ。変わらないな。ハイハイ。飴ね。ミルク飴が好みかな。その代わりにこの状況を教えて欲しいのだけど」

昨日準備していたミルク飴を3つほど手渡し、この村の状況を確認した。


「何も知らないんだな。飴人間。しょうがないやつだにゃー、飴のお礼ぐらいに情報提供ぐらいしてやろう。」


ピュアは、語ってくれた。

要約するとこの荒野の向こうに魔王の領土があり、魔王が住んでいるらしい。

これまでも、多少の争いはあったが、つい最近、人間の領土を滅ぼすために魔王の手下(魔物)を4万体ほど連れてこっちに向けて行軍中との情報が近隣の村、町に流れた。そのため、人間の領土の最北端に位置する荒野村に冒険者や騎士団が集結して来た。

情報によると、もうそろそろ来るはずなのだが、いっこうに来る気配がなく誤情報なのかの真偽を確かめるため情報収集チームを結成して、情報収集中でギルドの発表を待っていた。


そんな話を聞いていると

ギルドから、発表があった。


「北の方向にこれまで見たことも無い、湖らしきものが発見されました。魔王の力で作られたと思われ魔王の力はとてつもなく強力なことがうかがえます。

気を引き締めて、もう少し待機していただきたい。」


それを聞いたカケルは

「魔、魔王ですか、この世界にはとんでもない魔物、化け物がいるんですね。

こんな荒野を攻めるんですかね?」


ピュアは、ほんと何も知らないんだなという顔をする。


「ここよりも、魔王の領土はさらに資源が乏しい国なんだ。魔物がほとんどということもあり、話が通じない。

魔王の強大な魔法の力で何とかやってこれていたらしいが、耐えきれずこちらの領土を侵略し、物資調達、資源調達をしたいらしい」


「なるほど、そんな理由があるんですね。仲良くすればいいのに・・・

この場所が戦場になるのか、なんか怖いな。」

カケルは、少し事情も分かった事だが、戦場になることを知って驚いた。

自分は戦闘経験も無いし、弱いままなので遠くから何か支援ぐらいはと思っていた。


「ピュア・・・おっと猫さんは、この戦闘に参加するんですか?」


「もちろん。そのために来たんだにゃー。この1年ダンジョンに潜り鍛えてきた。いつしか死を呼ぶ赤い猫と呼ばれるようになった。

それに、猫人族の強さを認められるために参加するにゃ。

貰った飴の・・・う、うん。なんでもない。強くなったはずだ。」


ピュアは、何か言いかけたが、最後まで言わなかった。


「そんなに飴がおいしかったのかな(ふふふ・可愛いやつだな)」

カケルは、独り言のようにぼやいてにやにやしていた。


ピュアと話しをしているとユキトも現れた。


「この音は、やっぱりカケルお兄ちゃんか」


「この音?どんな音??」

カケルは不思議そう。


「うーん。心臓の音と言えばいいのかな。個人の独特の音が兎人族は聞こえるんだ。あれ?言ってなかったっけ?」


「初めて聞いたよ。うん。そんな特性があるんだ。すごいじゃん」

カケルは、驚いていた。

この人数の中で、カケルの心臓の音だけを拾い、聞き分けそして、迷いもなく近づいてきたからだ。


「まー気にしないで、ところで、その子は?」

ユキトは、猫人族の女の子が気になったのか確認する。


「猫人族の子だよ。最近?知り合ったというか、助けて貰ったんだ。

めちゃくちゃ素早くて、強い子だよ。」


「人間、そんなに褒めても何も出ないぞ」

カケルは、照れながらも毅然とした態度をとるピュアにウケた。


「よろしくね。猫ちゃん。僕は、ユキトっていうんだ。カケルお兄ちゃんに名前を付けて貰ったんだ。

気軽にユキトって呼んでね。」

ユキトは、丁寧にあいさつした。


「わかった。兎、兎は、私の狩りの獲物だ。」


「緊張しているのかな。ははは」

カケルは、笑う。

こんな場に慣れていなかったのか、恥ずかしかったのか、ピュアは、言い直す。


「ごめんなさい。分かったにゃ。ユキトさんに、カケルさんよろしくお願いします。」

ピュアは、照れながらも素直に挨拶をする。


「ユキトもやっぱり、この戦闘に参加するの?」

カケルは、念のために確認する。


「もちろんだよ。おにいちゃん。

飴のおかげで、僕もAランク冒険者になったんだ。この戦いで成果を上げてもっと上のSランクを目指すんだから!」


「にゃ、にゃ、にゃ!!Sランク。

ユキト様は、Aランクの冒険者様だったですか!」

ピュアは、目を輝かせさっきふざけていた態度を一変させた。

そして、何故か様付けになっていた。


「うん。でも、カケルお兄ちゃんには、およばないよ。

この間なんか、4万匹ぐらいの魔物を一気に全滅させちゃったんだからね。おかげでレベルもいっぱい上がったよ。」


「4、4万匹!?もの魔物を倒すとは、素晴らしい強さだニャー」

ピュアは、何を勘違いしたのかユキトが4万匹もの魔物を倒したと思い込んでいる。そして、ひれ伏し拝んでいた。


「そっか、ユキトはこの戦いに参加するのか。そっか、そっか。

だったら、このナイフを護身用に渡しておくよ。

僕は、ほら魔法使いだからこのナイフはいらなかった。この間、杖も作ってみたしね」

カケルは、休みの日に作った杖を見せた。


ユキトに、以前現実世界で購入したサバイバルナイフをユキトに手渡した。

「おおぉぉぉぉぉぉお!!なんだこのナイフ。この輝きに魔力。魔力が感じられない僕でもわかるぐらい魔力が漏れている。

もうこれがナイフなのかも分からない。

僕が今まで愛用していたナイフがおもちゃに見えるほどだ。よくこんなおもちゃで戦えていたな。」

ユキトに手渡したナイフを見ると手も震えパニック寸前。

今すぐにでもナイフを振り回しそうな勢いではあったが、人も多いのでぐっと堪えているようだった。

そんなユキトを見て、カケルは、肩を軽く叩き少し落ち着かせる。


「にゃ、にゃ、ニャ!!カケル様、今までのご無礼をお許しください。」


ナイフを見てなのか、突然、ピュアの態度が激変する。(そこまですごいナイフではないはずなのだが)


「ん?そんなに驚くこともないよ。お店で護身用に買った安物だよ。ユキトの何かの役に立ててよ。」



まったり、雑談をしていると突然、村の鐘の音が響く。


「魔物の襲来だ!魔王顔きたぞー」

周りの冒険者が一斉に騒ぎ出す。

村の入り口(そんな境はないけど)では、バトルが始まっている。


辺り一帯、戦場の空気に切り替わり緊張感が走る。

でも、魔物は、数十体程度?魔王と思われる魔物は、空からの襲来だ。


カケルは、

「あれ??・・・4万の魔物はどこに?あれ?少なくないか??」

独り言のようにブツブツ言っている。


すると、声にもなっていないような小さい声だったはずだったのだが、魔王には、聞こえた?感知されたのかカケルに向かって飛んでくる。


「軍勢が少なくて悪かったな。4万の軍勢は・・・泣」

魔王は、遠くを見つめ、たそがれたのか、悲しい表情を見せる。


そんなことは、気にせず、カケルを守ろうとユキトとピュアは身構える。


「おい。魔王、自分の領地に帰れ!」

「死ぬ前に帰るんだにゃー!!」

ユキトは、武器を構え叫び、ピュアは爪を出して威嚇する。


「か弱い兎人族に、滅びかけの猫人族か。

その人間の近くだから、粋がっているのか?面倒だが、力の違いを見せてやろう。」


魔王とユキト、ピュアが戦いを始める。

2人の戦いは、目にも止まらない素早い動きで戦っている。

ピュアは、少し遅いのか、少しづつ攻撃を受け血で赤い猫になっていく。

見ていて痛々しく気分がいいものではない。


だが、ピュアは貰った飴をなめながら攻撃を止めたりも怯んだりも決してしない。

ダメージを全く受けていないような立ち振る舞いをする。


ユキトとピュアが劣勢なのかはわかる。

時間が立つにつれ、ピュアの回復量が遅くなる。

(今日は、ピュアに3つしかミルク飴を渡していない。多分もう3つ食べて効果が切れかかっているんだ。)

「ピュア。無理するんじゃない。ユキトのサポートに回れ!」

カケルは、名を付けたことを言っていないが思わず叫んでしまう。


ピュアは、耳を動かし声が届いたのか、一旦カケルの方に戻ってくる。

そして、代わりにユキトが前に出て戦いを始める。


ユキトvs魔王

ユキト一人になったことで、劣勢は依然変わらない。

ピュアがいたおかげか、ユキトはダメージをそれほど受けてはいなかったが、1人になったことで激しさが増す。


魔王は、魔法を使っているのか、動きに緩急がある。(きっと身体強化を使い素早さを上げているようだった)

ユキトも少しつづ傷が増え、そして、綺麗な白い毛が赤く染まっていく。

カケルは、見ているだけで何かできないか考えていた。


戻ってきたピュアに飴を渡してあげる。

ピュアは、取り上げるように飴を奪うと見ずにすぐに頬張る。


ピュアは、体力も魔力も回復し復帰する。

ピュアの動きが先ほどと全然違う。飴の効果でステータスが上がったのだ。


ユキトとピュア二人がかりで何とか対応できるまでになったが、決定打に欠ける。

強大な魔力を持つ魔王。なかなか2人を倒せずイライラしている様子。


「ふん!」

魔王は、少し力を開放し、身体強化をさらに強化したようすで、一段階シフトチェンジする。


「なかなかやるようだが、本気のワシには、勝てはしない。

人間どうした?お前の下僕を助けてやらんのか?」


「下僕ではない。友達だ!親友だ。

今から助けてやるつもりだったんだ。後悔しても知らんからな。」

さすがのカケルも勇気を振り絞った。

親友が傷付き、自分より小さく可愛い女の子が傷付きながらも、強敵に立ち向かう姿をみて

カケルは、弱いと思い込んでいた自分が情けなくもあった。


「ユキトさっきのナイフを使え。一緒に戦うぞ」

カケルの直感なのか分からないが、その時は何故かナイフを使うことを指示した。

その声に共鳴を示し、ピュアも一気に魔力を開放し鋭い一撃を放つ。


「この猫、なかなかの一撃、でも、ぬるい」

魔王は、余裕でその一撃を耐えピュアを反撃する。


「こんなものなのか、人間」

魔王は、挑発しカケルを煽る。


「この間のファイヤーボールのようになりたくない。ここには、大勢の人がいる。

気が引けるが、しょうがないだろう。」

カケルは、ブツブツ言っている。

魔王は、それを聞いている。


「ファイヤーボールだって?ワシを倒すだと片腹痛いわ。本気にならないならその兎を殺せばいいのか?くっくっく」

魔王は、魔法で速さを強化し超スピードでユキトを襲う。

ユキトは、そのスピードに対応できないのか、狂撃をくらう瞬間。

カケルは、何とか目で魔王の姿を捕え必殺のスマホを取り出しガードする。


「衝撃吸収素材の力だ!」

魔王は、渾身の一撃をちっぽけな四角い板のようなもので防がれて驚きを隠せないでいた。


「なんだ。その力は」


その少しの隙をカケルは見逃さず、次の1手を打つ。


「アイスボール!」

カケルは、作ってきた杖に魔力を貯めてとても小さく弱弱しい魔法を放つ。速度も遅くそして小さい。


「なんだ。その魔法は、ふざけているのか?それとも、なめているのか?避けるまでも無い魔法だな」

魔王は、見た目の弱弱しさからか油断し、避けようともせず魔法障壁も展開せずにいた。


「ユキトよく見て合わせるんだ。」

カケルは、ユキトに叫ぶ。


しばらくするとカケルの魔法は、魔王に見事命中する。

その直後、魔王を包み込むように直径3mぐらいの球体ができる。

その球体の中は、空気も凍り、魔力も凍り全ての物質が凍る。魔王も例外ではない。

球体ができた余波なのか、辺り一面銀世界へ切り替わる。少し離れてはいたが、冒険者も凍る勢いだったので、慌ててファイヤーボールを放ち魔王以外の場所を器用に温める。


球体の中は、この世界では考えられない絶対零度の世界。

全ての物質の分子運動が停止する世界。魔力も例外ではないようだった。

魔王は、ある程度魔法には耐性があり抵抗しているようではあるが、物理法則に逆らうことはできない。

抵抗も虚しくほどなくして凍る。


それと同時にユキトはカケルから預かっていた、ナイフを思いっきり魔王に向けて振り下ろした。

成すすべもなく、魔王は真っ二つになり倒す。

斬撃は、地平線の彼方まで飛び跡が残る。


「カケルお兄ちゃん倒したよ。」

あの攻撃力のナイフを持ち無邪気にはしゃいでいる。


「うんうん。よくやったな。ピュアもよくやった。」

カケルは2人を褒めた。同時にナイフの攻撃力にも驚いたが、きっとユキトが使ったからだと思っていた。


「良く分からないが、あのナイフ振り回さなくてよかったな。」


近くに居合わせた冒険者の目には、足止め程度で魔王を凍らせユキトが止めを刺したように見えていた。

地形をも変える超強力な一撃の方が目立ちユキトを英雄視していた。


冒険者達は、一斉に雄たけびをあげ、勝どきをあげた。


無事に戦闘も終わり、少し安心したカケルは手の甲を見ると0分となっていた。


「・・・も、もう。・・帰れないのか・・・」

魔王に勝って嬉しいはずなのだが、手の甲を眺めながら、うなだれている。

別に現実世界に未練があったわけではない。独身で彼女もいない戻らなくても会社だけが心配。無断欠勤でそのうち退職になるだけだろう。だが、帰れないと思うとそれはそれで寂しいものであった。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


カケルは、帰れないと知って脱力してしまう。

それと同時なのか、魔法効果が消えた。

そして、魔王の氷も解ける。


しばらくすると、何故か手の甲が光、5分と表示が戻る。

カケルは、何が起こったのか分かりもしないが、このチャンスを逃せばもう戻れないことを直感として理解し、


「!!!も、戻れるのか。急ごう。」


急いで駅の場所に戻る。

カケルは、周りは魔王を倒し祝杯ムードだが、駅に向かい現実世界に無事に帰れることができた。


ユキトとピュアは、少し我に返り辺りを見渡したが、既にカケルの姿はなかった。

祝杯ムードの中、2人は少し悲しく虚しく勝利を祝うことができずにいた。

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