7回目の訪問
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カケルは、ギルドに討伐報告する時間がなかったことを現実世界に戻った時に思い出し、早く異世界へ帰る必要があるとずっと思い、
その日は、仕事がまともに手につかなかった。
頭の中でずっと考えていたおかげなのか、何なのかは分からないが、その日の帰りの道中で異世界に迷い込むことができた。
ピエロさんは、いつもの呪文を唱えているのを見て見ぬ振りをして、早速村へ向かう。
ギルドに着くと、討伐部位であるゴブリンの耳を受付嬢に提出する。
「はい。依頼達成ですね。この部位で大丈夫ですよ。」
そういうと、早速銅貨だろうか、赤茶けた金属の小さい板のようなものを1枚貰えた。
貨幣価値は、分かっていないので、こんなものかとも思ったが、ユキトから貰ったものは、今のとは色が違い銀貨2枚の価値を知ることになった。
「飴玉で銀貨2枚とは、悪い事をしたな。」
ぶつぶつつぶやき、ギルドを出た。
この間、夕方に来たときは、朝のように明るかったが、今回は、異世界も同じような時間帯だった。
荒野の地平線が見え、太陽が沈む綺麗な風景が見ることができた。
地球と同じように、空が赤く夕日が沈むのがとても綺麗だった。
風景に見とれているとユキトが現れた。
本当に久しぶりに見て、ユキトは少しはしゃいでいる様子だった。
「カケルお兄ちゃん?久しぶりだね。1年以上も見なかったから心配してたよ。」
「ん?(そうだった。エルフさんにも言われていたな)ごめんごめん。色々忙しくてこの村には来れなかったんだ。
少しは強くなったかい?そういえばね。おにいちゃんね。魔法を教えてもらったんだよ。(まだ、まともに使ったことはないけどね)」
「え!そうなの!!」
ユキトは、大変驚いた様子で答えた。
「じゃーさ、ねえねえ。使って見せてよ。お願いおにいちゃん。いいでしょう?」
カケルは、ユキトにこんなに慕われて素直にお願いされて、弟でもできた気分で悪い気がしなかった。
「まだ、覚えたてだからユキトが想像するようなすごい魔法は、使えないかな。がっかりしないでくれよ」
ユキトは、目を輝かせながら答える。
「うん。大丈夫だよ。
僕なんか、全然だから、使えるだけでもすごいよ。でも、ここは村の中だから少し離れた場所に行こう。
あの少し高い丘に行こうよ」
ユキトは、地平線の向こうにあるぐらい遠くの少し小高い丘を指さした。
「え!あんな遠く!!」
カケルはかなり驚いた。手の甲を見たら40分は残っていたが、戻ることも考慮すると間違いなくいけない距離だ。
でも、それに気が付いたのかユキトは、さらに提案する。
「大丈夫だよ。僕も強くなったんだよ。この間よりもさらに早くなったんだよ。
おにいちゃんの飴のおかげでね。ふふふ」
ユキトは、意味深な笑みを浮かべ笑う。黙っているとさらにこれまでの出来事を話したそうな顔をしていた。
なので、すぐに返事をする。
「そうなのか、じゃー。おにいちゃんをあそこまで連れて行って。そしたら、魔法を使ってみるね。」
話し始めては、魔法を使って見せる余裕も無くなると思い、その提案に乗ることにした。
「うん。じゃー僕に掴まっていてね。」
カケルは、ユキトの手を握り掴まる。
あっという間に、地平線の小高い丘に到着した。
ものの2分もかからなかったと思う。途中早すぎて息ができなかったが、短い時間であったため、窒息死することはなかった。
「はぁはぁ。危なかった。
意識が飛ぶところだったよ。また早くなったんだな。」
走っていないカケルが息を切らして何故か疲れている。ちらっと手の甲を見ると30分は残っていた。
まだ、大丈夫そうだった。
「へへへ。さ!村は向こうだから、反対方向に打って見てよ。
確かあっちには、何もなかったはずだよ。!ん????」
「わかった。分かった。ユキとは元気だな。
まずは、魔法はイメージだったかな。」
エルフさんに教えて貰ったことを思い出しながら、そして、火の玉=太陽を思い描き魔法を発動される。
「ユキト見てごらん。これが、ファイアーボールだ。」
カケルの頭上には、見たこともない大きさの火の玉が出現する。
何故かユキトは見てくれなかった。
そして、反対側へ飛ばそうとした瞬間。
「ちょっと待って。おにいちゃん。向こうに何かいる?遠すぎて良く見えない。
少し待って確認するから、スキル:反響」
探知スキルの一つの反響。兎人族は、聴力に優れているので小さな音を発生させ周囲に反射音で魔物かそうでないかを広範囲判別可能とするスキル。
ダンジョンのような狭い場所では使いづらく、荒野の広い場所ではかなりの範囲で正確に探知が可能となる。
そのスキル中は、耳をピコピコ動かしあたりの音を探っているようだった。なんだか可愛らしい姿だったのだが、カケルには、じっくり鑑賞してる余裕はなかった。
「ちょっと待ってって言ったって
もう、止まらないよ。止め方知らないよぉぉぉーーーーー」
突然なことで、放つタイミングを失う。
魔法を発生させただけでこの周り一帯かなりの高温になる。
自分は、魔法使用者特典なのか分からないが、あまり影響はなかったが、辺りの草木は干からび枯れ始めていた。
そんなものをこの場所に留めることはできなかった。
ユキトも綺麗な白い毛が少しづつ焼けチリチリになっていくのが見て取れた。
もう限界だ。ユキトが燃え尽きてしまう。
なるべく遠くの影響が及ばない場所に落とそうと火の玉を投げようとした瞬間。
「あの黒い辺りに落として大丈夫だよ。あれは魔物だよ。何千、何万もの魔物の群れだ。
噂に聞いていたスタンピードってやつだよ。」
ユキトは、向こうの黒い場所を指刺す。
スタンピードというものは、良く分からなかったが放つ場所が決まって安堵した。
いち早く落とさなければ、ユキトに危険(焼け死ぬ)がおよぶため勢いよく魔法を放つ。
「いっけーーー」
現実世界では味あえないなんとも言えない爽快感があった。
ものすごいスピードで飛んで行き
ものの数秒で目的に着弾しとんでもない高熱と爆風があたり一面に広がり、焼き尽くす。
地面は、凹みそして溶け硬質化している。
カケルは、もうなんて表現してよいのか分からず、ただただ震えている。
「こ、こんな威力がファイヤーボールなわけがない。良くは見えないが、あの黒いシミが蒸発している・・・ゴミのように燃えている。
綺麗な荒野にクレーターが、地平線が凹んで地平線じゃなくなっている。」
地面は凹み、熱で溶け硬質化する。
地下水も噴き出し、硬質化した地面を冷やす。そのためにさらに亀裂も入り地下水が噴き出す箇所が増える。
(冷えたのちにその場所は湖になったらしい。荒野のオアシス)
ユキトは、この威力に大感激。いつものように飛び跳ね喜んでいる。
自分の自慢の毛がチリチリになっているのは気づいていないようだった。
「おにいちゃん。魔物が経験値にしか見えない。魔物が宝の山にしか見えない!こんなファイヤーボール見たことが無い」
本来なら魔物を倒すと魔物の素材や魔石を落とすらしいのだが、今回は火の海の中で素材は燃え尽きている。
だが、回収すべき魔石はある程度の熱にも耐えられ、壊れにくいようだった。
喜んでいたユキトが突然
「おにいちゃん。おにいちゃん。回収って叫んで、お願い。!!」
慌てた様子でカケルに話しかける。
言われるがままに、その【回収】の意味は分からないが、叫んだ。
(回収なんてスキル持っていないけどなと心の中では思っていた。)
「回収!!」
だが、何も起こらなかった。
何故かがっかりするユキト。
ユキトは、何故かレベルが上がった感じもあったので、今度はユキトが【回収】と叫ぶ。
「回収:魔石」
ユキトが叫ぶと大量の宝石のような石がファイヤーボールを放った方向から飛んでくる。
「やったー。パーティとして成立していたんだ。おにいちゃんが回収使えないとは、思わなかったけど、兎人族の能力だったのかな。」
首をかしげているが、ユキトは嬉しそうだった。
回収とは、異世界の人なら誰でも使える基本スキル。
魔物を倒したときに得られる素材や魔石などを自分の手元(倒した人)も戻すスキル。
複数のパーティなどで戦闘を行う時に、争いの火だねにならないようにこの世界の理のようだった。
今回のような爆心地(多分行くだけで焼け死ぬ)にわざわざ回収しに行かなくてもよい便利すぎる救済スキルだった。
後から分かったことだが、この回収スキルは、カケルも使うことはできた。
では、何故今回利用できなかったかというとあまりにも遠すぎたためスキルの射程外だったようだった。(ほとんど目視もできないし、声も届かない範囲だったためと思われる。)
ユキトは、反響との併用である意味かなりの広範囲まで音を飛ばすことが可能であったためユキトの回収に反応したのだと思われる。
何はともあれ、ユキトはとんでもない数の魔石を目にかなりご機嫌だった。
直後、何故かしょんぼりし始めた。
「感情の起伏が激しいな」
カケルは、ユキトを見ていてぼそっという。
「どうした?何か困った事でも起こったの?」
落ち込んだ理由が知りたく、続けて聞いた。
ユキトは、答えた。
「この量の魔石をどうやって村に運ぼう。僕一人じゃ何往復すればいいのやら・・・」
ユキトは、この魔石を運ぶ方法に困っていたのだ。
ユキトも冒険者。簡単な袋のようなものは持っているが、当たり前だが、入る量を逸脱している。
カケルもリュックは持っていたが、こちらも当たり前に入るわけがない量だ。
2人で分けたとしても、10往復は必要だろう。そんな量だ。
「なるほど、それは考えていなかった。」
カケルは、考え込む。
魔石そのものは大きく無いが数は多い。普段ユキトもどうやって持ち帰っているのか分からないが、多分あの小さなカバンに入れているのだろう。
村への距離もかなりある。
カケルは、色々悩んだがどうしても普通には、持ち帰れる量ではなかった。
「マジックバックがもう少し大きければ・・・」
ユキトは、つぶやく
それを聞いたカケルは、何故かエルフさんの顔が頭によぎり自分のステータスに時空属性の魔法があることを思い出した。
「マジックバック、いっぱい入れる袋、異次元ポケット、アイテムBOX・・・」
カケルは、ゲームであったような言葉をブツブツ唱えながら、考え込む。
「魔法はイメージだったな。」
ブツブツ独り言を言って、腕を組んで考え込む。
「時空ポケット!」
カケルは、考えが纏まったのか魔法を発動させる。
空間に黒いモヤのようなものが現れ、試しに1つの魔石をそのモヤに落とす。
地面に落ちることは無く、どこかに消えてしまう。
そして、おもぐろにそのモヤに手を突っ込み魔石を取り出してみる。
「成功だ。」
カケルは、魔法を成功させると急いで魔石をすべてその中に格納する。そして、ついでに手の甲も確認すると何故か30分も時間が残っていた。
「あれ?時間がおかしい??」
少し気にはなったが、ユキトもいる手前、それ以上深く気にすることはなかった。
「おにいちゃん。すごいや。なんでもできちゃうだね。」
ユキトは目を輝かせ、兎人族の喜びの舞なのか、ずっとぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。
見てると喜びが伝わってきた。
魔石を格納し終えると、ユキトの興奮も冷めぬ中急いで荒野の村に戻ることにした。
辺りは、夕日の時間も過ぎすっかり暗くなり始めている。
村に戻ると普段からは想像もできないほどの冒険者と思われる人達が村に集まっていた。
つい、30分前は誰もいなかったはずなのに謎である。
色んな所に人、人、人。獣人族の人ばかりだった。
ギルドに着くと逆に誰もいなかった。
普段から2,3人は、お酒を飲んでいたりと人がいるはずなのに、今日に限っては誰もいない異例事態だった。
安心して、受付嬢の元にユキトは歩いていく。
受付嬢は、ユキトが近づいたからか耳の長い兎人族の姿をしていた。
ユキトは、カケルに向かい話しかける。
「おにいちゃん。魔石出して、出して!!」
ユキトは嬉しそう。
言われるがままに魔石を出そうとしたが、誰が見ているか分からない。時空魔法で出してしまっては、ややこしい事になりそうな、危険を察知したので、
少しめんどくさいが、カバンに入っているかのように魔石を取り出した。
少し時間はかかったが、全ての魔石を取り出した。
受付嬢は、かなり驚いた様子ではあったが
「こんなにいっぱいの魔石どうしたのでしょう。」
ユキトは、当たり前のように冒険者の印を見る。
見た受付嬢は、
「確認しました」
と一言だけ、つぶやき、作業を開始する。
「おにいちゃん。見ててごらん。すごいから!!」
ユキトは、何故かわくわくしている。
何がすごいのかカケルには、その時は分からなかったが、黙って見ていることにした。
するとものの10秒足らずで、直接魔石を数えたわけでもなく、受付嬢の目が光っただけで答える。
「全部で38769個の魔石を確認しました。
大丈夫ですよ。問題ありません。再確認も完了しています。
現在、このギルドに保管している金貨で足ります。大丈夫ですよ。
支払額は、金貨5776枚になります。ギルド保有金貨の73%分になります。」
あっという間に、大量にあった魔石の数をカウントし、そして支払う金貨の枚数とギルド内の金貨の在庫を計算したのだ。
カケルも思わず、声に出てしまった。
「おお!すごい技術だ。触れもしないのに枚数が分かるなんて。すごい世界だ。」
「あの人は、メカ族の人で、なんでも目が光るのは、スキャンしているみたいです。そして、一気に計算をしてるんだって
自分1人では計算できない場合は、メカ族の仲間ネットワークを介して計算作業を分散させ瞬時に作業を終わらせるって、メカ族の人が言ってったよ。
なんど、見てもすごいや。この数は、今までもなかったのに同じ速さでできるなんて」
ユキトも関心している。
聞くとギルドで2度ほど見ているようだが、同じように速くて、自分でもやってみたかったらしい。
カケルは、こんな文化も無いような荒野地帯なのに、メカ族のネットワークの凄さがひときわ目立ち改めて感銘を受けた。
現代社会でも、こんなすごいロボットはいないと思っていた。
換金も済み金貨の配分について、ユキトは、10:0もしくは9:1で1は、ユキトで駄々をこねていたが、半分半分で何とかユキトをなだめた。
一応、ユキトの足が無ければあそこまではたどりつけず、魔物を倒す事ができなかったとカケルは説得するが、ユキトもなかなか折れなかったので、
最後は少し悪いと思ったが「半分じゃなきゃ、嫌いになるからね」と強い口調で言ってしまった。
ユキトも堪えたらしく、しぶしぶ半分で手を打った。(もしかしたら、名づけの効果によるものかもしれないと少し後ろめたかった)
村は、人で騒がしい中情報収集もせずに、限界時間に近づいていたので、帰ることにした。
ユキトには、今日のお礼ということで、ただでミルク飴をあげた。
(これも、なかなか受け取らなかったが、時間も差し迫っていたので、強制的に手渡しし、駅に向かい帰った。)
「今日一日疲れたな。この金貨どうしようか・・・」
かばんには、半分に分けた金貨がずっしり入っているまま、現代の世界へ帰った。