5回目の訪問
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あれから、どのぐらい経ったのだろうか、別にメモっていたりしたわけではないので忘れていた。
カケルは別に几帳面ではない。ハンカチは必ず端を合わせて折りたたまないと気がない性格では全然ない。
むしろ適当な方である。なので、前回からどのぐらい経ったかはわからないが、ざっくり1カ月は立っていたに違いない。
そんなある日突然、異世界に迷い込んだ。
「どんな条件なんだろうか・・・謎だな。でも、今日は少し思い出したんだよな。ユキトどうしてるかなと」
ぶつぶつ言っている。
「もう。いいから!」
ピエロさんが話始めようとした瞬間、独り言のように吠えたかと思うと、すぐに結界の外へ飛び出す。
ピエロ
「・・・」
「なんか久しぶりだな。今日は何をするかな。朝の通勤だしリベンジでもするか。
魔法屋に行って魔法を覚えないと銀貨ならかろうじて持っている。安いナニカは買えるはずだ。そうじゃないと困る。きっと今日こそは買える。」
カケルは、珍しく気合いを入れる。久しぶりの美人エルフさんに会いに行くんだから男なら当たり前なのかもしれない。
「いらっしゃい。あら?どこかであったような。うーん」
あのエルフさんが店を開けたらほんと目の前に立っていた。美しさは変わっていない。
しかし、俺の事は覚えていないような反応だった。
半殺しにされてこっちは、鮮明に覚えているのに、向こうは覚えていないということは、どういうことなのだろう。
とにかく、カケルはまた美人エルフさんに会えてテンションが上がるが、覚えていないので攻撃されないように十分に注意する必要があった。
また半殺しにされてもかなわない。
「銀貨2枚で買える魔法ってありますか?」
「うーん?銀貨2枚か、あるにはあるけどきーみーの適正は何かな?」
悩む感じのエルフさん。
「適正?それって何ですか?」
カケルは、魔法の知識は0のため普通に返答する。
「え!適正も知らないのに魔法を買いに来たの?あなたの親は、どんな教育してるのかしら、生まれてすぐに適正を図る検査をするはず。
物心ついた時には、きちんと説明するはずじゃないのかな。人族はそんなことだから、魔法の威力も弱く冒険者の柄も悪くなって得意な魔法が
分からず冒険に出ていたのか、だから、魔法がどんどん衰退していくんだ・・・」
なにか、まずいスイッチを押してしまったのか後半は、かなり早口で猛烈に愚痴やら訳の分からないことまでぶつぶつ言って止まらなくなる。
「ごめんなさい。ちょっと止まって!!僕の事本当に覚えていないんですか?ほら、もう一度鑑定してみてくださいよ。何か思い出すはず・・・」
エルフさんは、不思議そうな顔をして、言われた通り鑑定を使ってみる。
「ん?鑑定!!・・・異世界人ん!!あ!・・あの時のか、もう一年以上も見かけないからてっきり死んだのかと思っていた。
ちょっと叩いただけで死にそうになっていたし、もう記憶自体消去していたわ」
「(消去しているのに思い出しているじゃないかと突っ込みたかったが)もうそんなに立つんですね。時間が過ぎるのは早いものですね。」
カケルは、1年以上立っていることは、スルーし思い出して貰えて少しほっとしていた。
「なるほど、だから、適正魔法を知らないわけね。そういうことならそう言ってよ。」
叩こうと手が飛んできたが、警戒していたカケルは何とか交わすことに成功した。
「おっとごめん。また、殺してしまうところだった。」
「(殺す気あるんかい!!)今度は、殺されませんよ。これでも学習したんだから!」
カケルは、避けられたことで調子に乗る。そして、エルフさんは何故か不機嫌になる。
「適正ね。もうちょっと鑑定させて、見て見るからじっとしてて!」
「はい。」
美人なお姉さんにじろじろ見られるのに何故か恥ずかしい。次第に変な快感を覚えるカケルがそこにいた。
そして、恥ずかしいからか、次第に顔が赤くなる。
突然、奥の方から
「何赤くなっているんだ?坊主」
あの太くて怖い声の狼男が現れる。カケルは心臓が止まるぐらいびっくりする。
「ギャー!食べられる!!逃げろー」
カケルは、慌てふためく、その驚きっぷりを見ていたエルフさんは、大爆笑している。
「あいつは、食べないから、もう少しじっとしてた。ほら!」
エルフさんの声に少し我に返るカケルだが、すぐ隣には狼男。心臓が口から飛び出る勢いだ。
「は、はははいいいぃぃぃ!!」
カケルは奇声を発し返事をする。エルフさんにはそこにじっとしてと言われているので、どうすることもできない。
狭い店内で逃げる場所も無いし、エルフさんを無視したら、それこそ魔法で殺されかねない。
カケルは、銅像のようにそこにただただ無心で立つ以外の選択肢はなかった。
数分のはずではあるが、カケルの中では、数十時間立っているような感覚に陥る。
「も、もう大丈夫ですか??何かわかりましたか?」
エルフさんも何故か固まっているようだ。
「あ?あー。さすがというべきなのか、サンプル個体が少なすぎて良く分からないが、君はなんと全属性持ちの魔法使いだよ。
魔法について、少し説明しようかな。
この世界には、火、水、風、土の4属性に加えて、神の加護を受けると光、魔神の加護を受けると闇と後天的に使えるようになる。
この世界には、全部で6属性の魔法が存在すると言われている。その6属性全てに適正をしてしていた、というかステータスにそう表示されていたよ。」
エルフさんは、笑いながら偉そうに魔法について教えてくれた。
「え?鑑定必要ありました?私がステータス開けばわかったのでは?」
騙された感があるが、言われてカケルは、ステータスを表示しじっくり見る。
言われた通り、魔法というにさらに適正魔法という項目に教えてもらった全属性の魔法が書いてある。さらに、時空という属性もあるらしく、表示されていた。
エルフさんは、気づいていないようなので、黙っておくことにした。
この世界の常識が覆る可能性もあるし、エルフさんに本気で追及されて実験材料にされても困る。怒って攻撃されても困る。
「早く教えてくださいよ。ステータスに書いてあるよって」
「はははは、君からかうと面白いから、別にじっとしている必要もないのに!ぷぷぷぷっ!異世界人というのは、本当のようだ。この世界の常識を知らなすぎる。」
「おい。坊主何か買うのか?」
狼男は、その場お空気を読まずに店員の対応をし、カケルにどんな商品を買うのか迫ってくる。
「ガロウ。少し休憩していていいぞ。私は、この子と話しているから店番する必要はない。」
「え!(さっきも休憩から帰ってきたのに・・・)わかった。外にいる。」
狼男は、エルフさんの言いつけ通りにぶっきらぼうに返事をして店の裏手の外に出ていく。
「あの子真面目でね。でも、あの怖い容姿でしょう。お店がつぶれてしまうよ。ははは」
「(じゃ?なんで雇ったんだろう?)そうなんですか。あの人は、バイトの人ですか?」
「バイト?なんじゃそりゃ?
あの子は、ガロウっていうんだ。私が名を付けた。荒くれ者でこの村に来ては暴れて困っていたからな、魔法でバインドしてとっつかまえた。
そして、名を与えたんだ。そしたら、落ち着いたというか、私の言うことはよく聞いてくれるようになったし、少し強くもなったみたいだ。」
どうやら、名を付けるということは、この世界では特別な意味を持ち、強さも分け与えられるらしい。
そして、名を付けた者に対して、敬意を払い忠誠を誓い言うことに従うようになるようだった。
といっても、相手の意思を捻じ曲げてまでの指示、命令系統は通じない。
かなり親しい友人といった程度の感覚になるようだ。
名を付けたからと言って、相手の自由を縛るようなことはできない。
それを聞いて、カケルは少しほっとした。
知らなかったとはいえ、ユキトには名を与えている。主従関係のようなものであれば悪いと思ったからだ。
ユキトに対して、特別に何かお願いをすることはないから、忘れるようにして、対等な関係で付き合うことにする。
「で。魔法か、全属性使えるのか。
では、まずは、基本からかな。火の魔法でも覚えてみるか。基礎中の基礎ができればあとは、属性が違うだけで難しい使い方は無い。
光と闇に関しては、分からないけどね。」
魔法について、色々聞いてみたが、エルフさんは2属性(火と風)が使えるらしい。
通常は、1属性のみで2属性使える人はかなりレアらしい。
でも、ヒールが使えたじゃないの?なんか光魔法っぽい気もするけどと思うかもしれない。
結論は、光魔法ではない。
魔法ではあるが、生命の再生力に魔力という餌を与え活性化する魔法らしい。
細かいことを言うと無属性魔法とでも言うらしい(エルフさんの勝手に作った魔法らしい)
例えば、火魔法の使い手であれば、何も考えずに火属性の魔力が自然と発生させられる。それを餌に人が持つ再生能力を活性化させるとフレイムヒールとなるらしい。
これが普通の使い方らしい。
エルフさんは2属性の魔法を使えるので使うときに火にしようか風にしようか考えるらしいのだが、それがめんどくさかったので魔力そのものを餌に与え活性化させたとのこと。
簡単に言えば、手抜き魔法ということだ。
魔法には、イメージ力がとても大切でその方法が魔法書に記載されている。
例えば、ファイヤーボールを使いたい場合、最初は、どんな魔法なのかイメージが付かないはず。
なので、簡単に言えば魔法書には、火のボールをイメージすると書いてある。
それを読み解き想像しイメージ力を固め高めることで同じ魔法が使えるようになるというものだ。
それだけって思うかもしれないが、魔法動作の所作が一通り記載されている一冊となっている。
ボールの大きさや魔力の込める量、どんなふうに飛ばすのかなどが記載されている。
魔法書の他に巻物がこの世界に存在する。
この巻物は、使い捨ての魔法みたいなもの。
特殊なインクで作成者の魔法を書き込み、購入者が魔力を通すことでその魔法を使えるというもの。
この世界の人は、1属性が基本であるため、不利属性との戦闘の場合どうしても撃ち負けたりしてしまう。
そういった戦闘の幅を広げる意味で開発されたらしい。
エルフさんに色々聞いているうちに、滞在可能な時間は無くなってしまったが、基本は学べたのであとは、自分で練習するのみとのことだった。
変な呪文のようなものを暗記させられなくてよかったと思うカケルであった。
エルフさんにお別れの挨拶を告げて帰るのだった。
「あ!教えるのに集中しすぎて、お金を貰うのを忘れたわ。
ま!私目当てでまた来るでしょう。ふふふ」
謎に、心を見透かされているカケルであった。