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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その25~遺体不明

作者: 天海樹

雨が降りしきる中、

登山客が

「死体を見つけた」

と交番に駆け込んできた。

「はっきりわかりませんが」

と言って、警察官が広げる地図の

ある地点を中心に小さい円を描いた。


土砂崩れの影響もあり、

捜索は2日後に開始された。

捜索隊を結成し辺り一帯を探すが、

遺体はどこにもなかった。

捜索から1時間、痕跡らしきものが発見された。

重いものを引きずった溝のような跡が。

それにより、事件性が一気に高まった。


聞き込み調査が始まった。

現場から一番近い民家を尋ねた。

雑木林の中のその家は、

塀も柵も何もなくひっそりと佇んでいた。

呼鈴を押すが誰も出ない。

外から中の様子を伺うが

どこもカーテンが閉まっていてわからない。


仕方なくそこから500m先にある別の民家を訪ねた。

変わった様子はないと答える男性に

例の民家の住人について聞くと

「40歳代の女性ですかね。

 たまにゴールデンレトリバーを連れて

 散歩しているのを見かけます」

との情報が得られた。

遺体がその女性である可能性がでてきた。

それと同時に、引きずったような跡が

女性の家の近くまで続いていて、

それが玄関ではなく

家の脇の方へと続いていることがわかった。

遺体を運び庭に埋めたのだろうか、

だとしたら持ち去った者が

この家に潜んでいるかもしれない。

家を厳重に取り囲み

まずはその引きずったと思われる跡の延長線上一帯を

遺体が埋まっていないか調べることになった。


「でました!」

ある捜査員からの報告に皆が集まった。

聞き込みで得た情報に似た女性の遺体があった。

すぐ横には白骨化したものもあった。

頭部の骨から推測すると

飼っていた犬のものらしかった。

辺りを捜査していた隊員が見つけた

太い枝をクロスさせて括ったものが、

恐らく十字架に見立てたもの。

ここはお墓だったのだ。


家を見ると、

カーテンの隙間から

覗いている人影がちらりと見えた。

急いで玄関に行きドアを叩いた。

執拗に叩いていると

中から3人の子供たちが顔を出した。


捜査報告によると、

遺体の女性は子供たちの母親であり

心臓に疾患を抱えていたようで、

現場付近で倒れたまま

息を引き取ったのだろうと。

そして帰ってこない母親を子供たちが探し出し、

3人でなんとか引きずって家まで連れて帰り、

犬の墓に埋めたということが分かった。


「他に家に誰かいる?」

と尋ねると一同に首を振った。

よく見れば三つ子らしく、

着ている服は泥だらけだった。

「お母さんはどこ?」

「クーちゃんと遠いところに散歩」

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