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紅き耳環の祈り人  作者: 叶 玄
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第10話 集落ゴドライ⑦ 豊穣の祈りと集落の長

 夜通し降り続いていた雨はすっかり止み、雲が晴れた空は薄いオレンジ色に塗られていた。太陽が顔を出し始め、早朝の日差しが世界を照らし始めている。露に濡れた地面が光を反射し、空の一部を切り取ったかのように映し出していた。

 集落の広場に立ったレイランは、心地よい朝の風を深く吸い込み、そして吐き出した。彼の頭上にはミラーファが宙に浮きながら待機しており、朝日を眩しそうに見ている。


 「頃合いだな。始めよう」


 レイランがそう言って、両手を前に突き出す。手の平を地面に向けて精霊術を発動すると、彼の両手がぼんやりと輝きを放ち始めた。レイランの頭上にいるミラーファの身体も同時に光り始め、彼女はまるで女神のような柔らかい笑顔を浮かべた後に両の目を伏せた。

 彼らの後ろにはリミィナが立っており、これから何が起こるかわからずに緊張した面持ちでその光景を見つめている。祈るように胸の前で手を組み、レイランの邪魔をしないように口を閉ざしていた。


 レイランの両手の光がどんどん強くなっていくと同時に、彼らの周囲がざわっと雰囲気を変えた。見えない力がうごめいているかのように、明らかに自然のものではない風が吹く。辺り一帯に何かが干渉していくのがリミィナにも感じられた。


 「君が本来の力を振るうのは久しぶりじゃないか、ミラーファ?」


 手を翳したまま、レイランが笑みを浮かべて頭上の精霊に話しかける。


 「まったくよ。あたしは豊穣の祈りで生まれた精霊なのに、レイランてば全然違う場面でしか力を使わないんたもの」


 ミラーファは目を閉じたまま、肩をすくめて返事をした。


 「久々にあたしの本業ってわけ。腕が鳴るわね」


 ミラーファの長い髪が、下方から風が吹いたかのようにふわっと浮いた。その直後、リミィナは思わず息を呑んだ。

 僅かな雑草しか見えなかった地面から、みるみるうちに植物が生えてきた。それだけではなく、荒れ果てた畑の中にもいつの間にか芽が顔を覗かせており、それらもどんどん成長して大きくなっていく。


 「こんな……ことが……」


 リミィナが目を見張って呆然と呟いた。荒廃した集落は瞬く間に緑に彩られ、道の脇には花が、畑には作物が、少し離れたところに生えている木には果実が実っている。昨日までの荒れた景色は見る影もないほど、周りは豊かな自然に囲まれていた。

 レイランが掲げていた手を下すと、両手を覆っていた光が消えた。ふうっと一息つくと天を仰ぎ、にこっと笑う。


 「さすがはミラーファだな。お疲れ様、ありがとう」


 労いの言葉をかけられたミラーファはくすっと笑って、レイランの横に降りてくる。


 「君の精霊術があってこそよ」


 そう言って二人は互いの拳を合わせた。人間と精霊では触れ合うことができないため、もちろん拳がぶつかることはない。それでも、二人はこうして形だけでもグータッチをおこなうのだ。

 レイランの精霊術が終わったことで、リミィナが彼の方に近づいていく。


 「今のが……レイランさんとミラーファさんの精霊術?」


 驚きを隠せない様子で尋ねると、レイランがリミィナの方を向いて「ああ」と頷いた。


 「これでゴドライの飢えの問題は解決に向かうはずだ。あとは住民たちの安否確認だな。飲み水と、栄養が採れそうな果実を持って行くのが良いと思う」


 平然と言ってのけるレイランに対して呆気にとられたリミィナが、ぱちくりと瞬きをする。しかし、はっとした表情になると、リミィナはレイランに背を向けて駈け出した。


 「私、みんなの様子を見てくる。お礼は後でちゃんと言わせてもらうわ」


 急がなければという様子の声には、微かに喜びの色も混ざっている。集落に恵みが蘇ったことを喜び、レイランには盛大な感謝を一刻も早く伝えたいところだろうが、それよりも住民の様子を確認することを優先したのだ。自分の感情を抑え、今優先的にすべきことをしっかりと選択して行動に移すことのできる冷静さを、リミィナは持っていた。

 走って去っていくリミィナの背中を見送るレイランは、ふっと微笑みを浮かべた。


 「おれらはゼンさんの様子でも見に行くとするか」


 一晩屋根の下を勝手に借りたのだ。家主にはお礼と謝罪をおこなわねばなるまい。レイランは広場を後にし、ゼンの眠っている家屋に足を進めた。





 レイランがゼンの家に戻り、彼の眠っている部屋へ様子を見に行くと、ゼンは相変わらずベッドの上に横たわっていた。部屋の窓からは朝の日差しが差し込んできており、数時間前とは違って視界には困らない。

 レイランがゼンの横へ歩み寄り、呼吸を確認すると、小さくだが胸の上下が確認できた。無事であるとは思っていたものの、生きていることを自分の目で確認できたことでレイランは安堵の息を吐いた。


 「……上手く、いったのですかな」


 突然、掠れた声がレイランの耳に届き、驚いてゼンの顔の方に視線を向けた。眠っていたゼンがいつの間にか起きており、うっすらと目を開けている。穏やかな表情で微笑んでいるように見える彼の口から、その声は発せられていた。


 「起きていたのか。ゴドライの土地は息を吹き返したぞ」


 レイランは自分の水を、この家で見つけて持ってきていたコップに移すと、ゼンが横たわっているベッドの傍らにあった小さな机に置いた。


 「水、飲めるか。何か食べられそうなら果実をすり潰して持ってくるが」


 「……お願いしましょうか」


 ゼンがそういうのを聞いて、レイランは部屋を出る。いくつか摘んで来ていた、テーブルの上の果実を手に取ると、家の調理器具を拝借してすり潰していった。

 小さなお椀がいっぱいになるほどすり潰し終わると、それを持ってゼンの寝室に戻る。ゼンはベッドの頭にある枠組に背をもたれるようにして半身を起こしており、手には水の少し減ったコップを持っていた。


 「起きて大丈夫なのか」


 レイランが尋ねると、ゼンはレイランの方を向いてにこりと笑った。


 「寝転がったままでは、せっかくあなたが用意してくれたものが食べられないでしょう」


 レイランがゼンに近づき、小さな机の上にお椀を置くと、「ありがとうございます」と礼を述べた。

 ゼンは窓の外に視線を向けると、感動したような表情になる。窓の向こうには緑が広がっており、レイランが果実を摘んだ木もここから見えた。


 「まさかここまでゴドライが息を吹き返すとは……。集落の皆さんも救われたことでしょう」


 そして、ゼンはレイランの方に向き直った。


 「見事な力ですね。さすがは勇者、精霊術師のレイランといったところでしょうか」


 それを聞いたレイランが思わず身構える。殺気を放つようなことはしないが、自分の素性を知っているとなると警戒はする。


 「――何故、おれがレイランだと? あなたとは初対面のはずだが」


 「実は昨日の夜中に少し目が覚めましてね。あなたがリミィナと会話しているのが聞こえてしまいました。盗み聞くつもりはなかったのですが、何せここは私の家でして」


 レイランはバツの悪そうな顔になる。


 「……ゼンさんがいるとは知らず、昨日一晩この家を勝手に借りた。申し訳ない」


 レイランの謝罪を聞いたゼンはにっこりとした笑顔でゆっくりと頷いた。


 「いいのですよ。世界の英雄を一晩家に泊めたとなれば、それはとても誇らしいことでしょう」


 そして、ゼンはレイランをまっすぐに見据えて続ける。


 「もっとも、今のレイランさんを『世界の英雄』と呼んでしまっては、侮辱していると受け取られてしまいますかな」


 「――それも聞いていたか」


 レイランが目を細めると、ゼンは「ええ」と肯定した。


 「もともとこの集落にも勇者拘束の通達が来ておりました。まあ、私は勇者の皆さんのご活躍に感銘を受けておりますし、そもそもそんな偉大な方々がゴドライを訪れるようなことはないだろうと思っていましたので、集落の皆さんに改めて周知するようなことはしておりませんでしたが」


 ゼンはお椀を手に取り、スプーンを使って数回中身をかき混ぜる。


 「ですので、特にあなたの不利益になるようなことをするつもりはありません。警戒いただかなくても結構ですよ。むしろ、ゴドライを救ってくださったのですから何かお礼を差し上げたいくらいです」


 スプーンで一口分を掬うと、ゼンは自らの口に運ぶ。美味そうに何度か口を動かして飲み込んだ後、「美味しいです、ありがとうございます」と一言礼を述べた。


 「礼は必要ない。一晩泊めてもらったのだから、それで充分助かった」


 レイランが微笑みながらそう言うと、ゼンは穏やかな表情で「そうですか」と返事をした。


 「本当はしっかりとおもてなしをして差し上げたかったのですが、昨晩はレイランさんにいろいろとご迷惑をおかけしたようだ」


 少し申し訳なさそうな顔でゼンが言う。


 「――ところで、リミィナの様子はいかがですかね」


 問われたレイランはぴくりと眉を動かす。


 「……集落の住民の様子を見て回っているところだ。いずれここに戻ってくると思う」


 「彼女にも苦労をかけさせてしまったようですね。リミィナは元気ですか」


 「ああ。問題ない」


 レイランが答えると、部屋に沈黙が訪れる。レイランはどう口を開くか迷っていた。

 ゼンは昨晩の会話を聞いていたらしい。「ご迷惑をおかけした」と言ってきたということは、リミィナに神聖術のことを話した時もゼンは起きていた可能性がある。集落の入り口で起こった騒動についてはさすがに詳細を知らないはずだし、だとすれば「迷惑」とはおそらくリミィナとの一件のことを指しているのだろう。

 口を開くことを躊躇しているレイランを見かねたのか、ゼンの方から話し始める。


 「あの子がゴドライに来た時、リミィナの瞳には光が宿っていませんでした。きっと壮絶な人生を歩んできたのでしょう」


 視線を下に落とし、当時を振り返りながらゼンは少し悲し気な表情で笑った。


 「ここに来てから、リミィナはたくさん集落のために働いてくれました。皆さんとても感謝しており、リミィナを褒めると彼女は照れくさそうに笑うのです。人の役に立てるというのが嬉しかったのでしょうね」


 レイランは黙ってゼンの話を聞く。


 「彼女の持つ不思議な力にも大いに助けられました。今思えば少し頼りすぎていたのかもしれませんね」


 異能を持たない人間からすれば、神聖術とは素晴らしく便利で神秘的な力に見えるだろう。そして、リミィナにとって神聖術とは自分自身の誇りだ。自身の最大の誇りである神聖術で集落の役に立てていると感じた時、彼女はどれほどの喜びを感じていただろうか。


 「やがて、ゴドライに異変が訪れました。あんなに豊富だった作物や木の実が瞬く間に枯れ、澄んだ水が流れなくなり、一切雨が降らなくなったのです」


 『食の集落』というくらいだ。食べ物や飲み物が急激に枯渇することなど、今までに一度もなかったのだろう。


 「原因がまったくわからず、動ける人間もどんどん減っていき、遂には私も動けなくなりました。リミィナは最後まで解決策を探してくれていましたね。おかげでレイランさんを連れてくることができた」


 レイランがゴドライに来たのは偶然だ。しかし、ずっと奔走していたリミィナにとっては奇跡に感じられたことだろう。神の遣わした救世主が訪ねてきたかと思ってしまうほどに。


 「――リミィナの力についても、昨晩聞かせていただきました。彼女の心中を思うと胸が痛みます」


 レイランはぎゅっと自らの拳を握りしめた。予想はしていたが、リミィナの神聖術がきっかけでゴドライに異変をもたらしてしまったことをゼンは聞いていた。


 「ゼンさん。完全に部外者のおれが言うのは間違っていると承知の上でお願いする」


 レイランがゼンの目をまっすぐに見据える。


 「許してあげてほしいとは言わない。ただ、リミィナを恨まないであげてほしいんだ」


 ゼンは少し驚いた表情になった。ただ、何も言わない。


 「確かにリミィナはゴドライに危機をもたらす原因となった。だけど、彼女は集落を助けたい一心だっただけだと思うんだ。住んでる立場からすれば許せることではないとわかってはいる。それでも、リミィナの気持ちはわかってあげてほしい」


 レイランが言える立場ではないことは彼自身が充分にわかっている。ほんの数時間前に訪れただけの部外者が、集落を荒れさせた張本人とも言える娘を庇うなど、ゴドライの住民にとっては到底納得できる話ではない。

 それでも、リミィナが不憫だとレイランは思ってしまった。彼女が人生そのものだとまで言うほど大事にしている力を使って人々のために生きていた日々が、すべて恨みや憎しみによって塗り潰されてしまうなんて、なんと救いのない話か。


 「……お優しいですね」


 ゼンはレイランの目を見つめ返してそう口にした。言葉通りの意味なのか、都合の良いお願いに対する皮肉なのか、レイランには判断できない声色だ。

 少し張り詰めた気まずい雰囲気が漂いかけたところで、ゼンはふうと一息吐いた。


 「今回の一件で命を落とすような方が出てしまった場合、残念ながらリミィナにはある程度の責任を取ってもらう必要があるかもしれません」


 ゼンの言葉は、ゴドライの長としての言葉だ。間違ったことは言っていないため、レイランは無言でそれを聞く。集落の長が、集落の状況を達観的に見て判断するのは当然のことだ。

 部屋には再び沈黙が訪れる。レイランは、これ以上口を出せばゴドライの問題に足を踏み入れ過ぎになってしまうと考え、ゼンの次の言葉を待っていた。ゼンは先程から目を伏せたまま、口を閉ざしている。


 「ただ――」


 そして、ようやくゼンが口を開いた。


 「今のはあくまでゴドライの長としての意見です。長というのは、感情で物事を判断してはいけない。万が一私が言ったような結果となってしまった場合は、集落を治めるものとして、リミィナの処遇を粛々と決めねばなりません」


 「ですが」と、ゼンはにこりと笑った。


 「私個人としては、リミィナを恨むつもりはございません。彼女はゴドライのためにたくさん力になってくれましたし、彼女は故意に集落を貶めたわけでもないですしね。逆に、神聖術が原因だというのであれば、ずっとそれを頼ってきた私たちも無関係であるとは言えません」


 レイランは僅かに目を見開いた。


 「それに、私が長として判断しなければならないのは、集落の方が犠牲になってしまった場合です。ゴドライが荒地になってからそんな長い時間は経っていないので、手遅れになっている方はまだいないと私は信じています」


 それにはレイランも同意見だ。外の作物が全滅したとはいっても、備蓄が少なからず残っていればしばらくの間は生きていくことができる。レイランがこのタイミングでゴドライに来たのは幸運だった。


 「ありがとう、ゼンさん」


 レイランが少し安堵した表情で礼を言うと、ゼンが首を横振った。


 「お礼を言われるようなことは何もしていませんよ。むしろこちらが礼を言わねばなりません。ゴドライを救ってくださりありがとうございました」


 ゼンが深く頭を下げた。

 話が一段落着いたところで、レイランは一度大きく深呼吸をした。


 「もう少ししたらおれはゴドライを発つよ。世話になったな」


 「いえいえ、お世話など何もできておりませんよ。またゴドライに活気が戻ったらいつでもいらしてください。今度は盛大におもてなしいたします」


 レイランは「楽しみだ」と笑顔で答えると、ゼンに背を向け、部屋を後にしようとする。


 「――そうでした」


 レイランの背中に声がかかる。レイランが振り返ると、ゼンが穏やかな表情で右手を小さく胸の位置で挙げていた。


 「リミィナをどうぞよろしくお願いします」


 リミィナが集落を出るつもりであることも知っているのか、そのような願いをレイランに託す。レイランは一度頷くと、にっと笑った。


 「必ず守ると約束するよ」


 そうしてゼンの家を出たレイランは、遠くの方から歩いてくる少女を視界に捉えた。ゼンの家に向かって近づいてくる少女は、レイランの姿を見つけると小さく微笑んだ。


 「無事に確認が終わったのか」


 レイランが問いかけると、リミィナはこくりと頷いた。集落の人口はそれほど多くないため、少女一人でも回りきれる規模だ。


 「みんな無事だった」


 安心したような表情のリミィナの目は、何度も泣いたのか少し腫れている。


 「――何か言われたのか?」


 何を言われてもすべて受け止めると言ったリミィナだが、何度も責められれば精神的ダメージは大きくなる。泣いた形跡を確認したレイランが心配した様子でリミィナに尋ねると、彼女は一瞬また泣きそうな表情になってから、潤んだ瞳を閉じてかぶりを振った。


 「いいえ。みんな私を気遣ってくれたの」


 リミィナは震える声で、自らが見てきた住民の様子を語る。


 「一人一人無事かどうかの確認をして、水と食べ物を渡したの。それて、全部話して必死に謝った。そしたらみんな、私を責めることもなく優しくしてくれて……」


 ゴドライの住民は皆、優しい心の持ち主だったようだ。言い方を変えればお人好しなのかもしれないが、その気遣いでリミィナが救われたのは言うまでもない。


 「それなら安心した。――この集落から出ていく意志は変わらないのか?」


 集落からの拒絶を受けなかったということは、リミィナはまだゴドライに居場所が残っているということだ。無理にレイランたちについて行って危険な場所に踏み込むような真似をする必要はない。そう考えたうえでのレイランの質問だ。

 リミィナは目元を拭ってレイランの目をまっすぐと見つめる。


 「もしみんなが許してくれるとしても、私が何も罰せられないのはやっぱり耐えられない。これは私なりの責任の取り方なの。それに……」


 リミィナは自らの拳をぎゅっと握った。


 「私は自分を見つめなおしたい。神聖術に依存してきた人生だったけど、神聖術に頼らなくても生きていける力が欲しい。そして、誰かの力になりたい」


 レイランはふっと笑った。


 「やりたいことがたくさんあるな。少なくとも、すぐに野垂れ死ぬのは勿体なさそうだ」


 リミィナははっとしたような表情になると、照れくさそうに笑った。


 「少し、生きる希望が見つかったのかもしれない。レイランさんのおかげかな」


 「人が前に進めるのは本人の気持ちがあってこそだ。リミィナの強さだと思うよ」


 そう言うと、レイランはリミィナの横を通り過ぎて歩き始めた。


 「おれは先に、ゴドライの外に行ってるよ。準備が整ったらまた合流しよう。急ぐ必要はないからな」


 ゴドライはもともと、フィリア―ナの故郷である魔法都市スモールメに向かう途中で立ち寄った中継地点だった。思いがけず集落の抱える問題に直面したが、精霊術によってそれも解決した。犠牲者も結果的に出なかったようだし、レイランがゴドライに滞在する理由はなくなった。むしろ、仲間の安否を考えれば悠長に滞在しているような余裕はないとまでいえる。

 また、昨晩拘束した野盗たちも、入り口付近で放置したままだ。そこらのごろつき程度に破られるような拘束ではないものの、しっかりと然るべき機関に突き出す必要もある。


 「ええ。また後で」


 憑き物が落ちたような、あるいは未来に対する希望に溢れたような、レイランが見た中で一番明るい笑顔でリミィナは笑った。

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