いざ、獰猛なる怪鳥退治へ
『キューリィイイッ』
「"二匹目"なんて、そんな……ジャンキ・ルトバーは群れを作らない筈……っ!」
『キュリリリィイイッ』
誰彼構わず襲いかかる故に、同族でも争いの絶えない怪鳥が二匹もいて、片方の窮地をもう片方が助けた。その事実に動揺しているレオラに、二匹目のジャンキ・ルトバーが襲いかかる。
(しまっ……)
「んっ!!」
「きゃっ!?」
猛毒の棘が生えた尻尾がレオラに命中する寸前、急に彼女の身体が持ち上げられ、その場から離れる。
「レオラさんだいじょーぶ!?」
「く、クラミオさんっ……?」
ジャンキ・ルトバーの攻撃からレオラを救ったのは、クラミオだった。咄嗟にレオラの元まで跳んで、彼女を抱えて避けたのだ。
「あ、はい……」
先達としてサポートする相手である筈のクラミオに全然良い所を見せられず、それどころか自分が窮地に陥りそれを救われる。そうした己の不甲斐無さから、レオラは顔を歪める。
(情けないっ……騎士として恥ずかしい……もっとしっかりしなさい、私!!)
此処は戦場、不測の事態は起きて当然。それなのに気を取られてしまった未熟な自分に心の中で喝を入れ、レオラは自分の得物である大槌を構えた。
「すみませんっ、もう大丈夫です!!」
そう語る彼女の顔には、凛とした覚悟が浮かんでいた。
「んっ、よかった」
『『キュリリリィイイッ』』
二人の話が終わったタイミングで、クラミオに足元を掬われた最初の個体も起き上がり、二匹の巨大怪鳥が威嚇の雄叫びを挙げる。
「問題は二匹いる事ですね……」
本来、一匹だけでも手強いジャンキ・ルトバーを二匹同時に相手取る。とてつもない困難になる事は明白であった。
「レオラさん、ちょっとだけでいーから方っぽお願いできる?」
「えっ?」
「ちょっととっておき使うっ」
「とっておき……? 分かりました、任せてください!」
詳細は分からないながらもクラミオの頼みを聞き入れ、レオラは大槌をジャンキ・ルトバーに向けてかざし声を挙げる。
「縛り上げよ、焔の縄! "フレアバインド"!」
レオラの詠唱に応じて、ジャンキ・ルトバーの周囲に紋章が現れ、そこから炎が吹き出す。
そしてそれは、片割れの身体に絡み付かれて動きを制限する。もう片方は、その炎に大きく驚き飛び退いた。
『キュリリリィイイッ!』
「クラミオさんっ!」
「んっ!」
そうして片方の引き離しと片方の拘束に成功したレオラの呼び掛けに応じて、クラミオが拘束を逃れた方のジャンキ・ルトバーに向かっていく。
『キュリリリィイイッ』
「んっ!」
放たれる嘴攻撃を回避して、巨大怪鳥の懐に潜り込んで大剣を構える。そして、振りかざす直前の踏み込みで地面が大規模に粉砕される。
「っ……」
その様と、クラミオから瞬間的に溢れ出した物凄い殺気に、レオラは一瞬戦慄した。
「やぁああっ!!」
『キューリィッ!!』
叫び声と同時に、クラミオの大剣がジャンキ・ルトバーの胴体に直撃して、そのまま胴体部分の大半を吹き飛ばした。