転生先が新興宗教だった件、らしいのだが
【注意!】
ブラックジョークが、かなり(?)含まれています。
そして少し後味の悪いお話になっております。
それでも大丈夫!という方のみ、お進みくださいませ。
――天に導かれし主、目覚めよ!
その声で、俺は起きた。
俺が居るのは……日本家屋特有の畳造りの部屋だ。
「芽斗殿、お目覚めか」
白い和服を着たじいさんが、部屋に入ってきた。
は、芽斗殿?
俺の名前は違うのだが………
「転生に成功したようじゃな」
じいさんの後から、もう一人入ってくる。
なんとも『魔術』が使えそうな、ばあさんだ。
「転生、それはどういう事です?」
俺がそう聞くと、じいさんはこちらを向く。
「ここは、弥霞神乃社という場所じゃ。お主は、弥霞神様に導かれて、転生をしたのじゃよ」
……いや、さっぱりだ。
なんで俺が、転生の的になったのか。
「きっと、いい廻り合わせがあったんじゃろうぉ」
ばあさんが言う。
▪▪▪
……本当に、何が何やら分からん状態なのだが、俺は弥霞神乃社という場所で働く事になった。
ちなみに、じいさんは『天名織』と呼ばれる、云わば神主や坊さんの立場らしい。
そして、ばあさんは『尼織』と呼ばれる、術を操る人物だってさ。
「で、俺はこれからどうしたら良いのか?」
天名織に聞く。
「そうじゃな、里に降りて説法でもするかの」
そう言うと、天名織は網戸の方へ歩く。
そして部屋の網戸を開けると、眼下に街が見える。
……あれ、どこかで見たことがある街並みだが、気のせいか?
「どうかしたかや」
尼織が俺に聞く。
「……いえ、何も」
「それじゃあ、行くかの」
俺と天名織、尼織は街へ繰り出す。
……やっぱり見たことがあると思ったら、俺が住んでいる街だ。
「天名織様~!」
「尼織様!」
街の広場に向かうと、周りに人だかりが出来る。
少なく見積もっても、20人は居そうだ。
「それでは、説法を始めるぞ」
▪▪▪
「……っ!?」
俺は、目を覚ました。
いつもの、自分の部屋だ。
時計は、朝の8時。
仕事は休日だったから、これくらいに起きても大丈夫だ。
「俺、一体……」
疲れているのか、不思議な夢を見た。
……のだが、ふと気になって夢の中に出てきた宗教団体について調べてみた。
一件、ヒットした。
恐る恐る、そのページを開いてみる。
……そこには、あの二人がページに載っかっている。
俺は、冷や汗をかき始める。
夢だったはずの、宗教団体があるのが驚きだ。
(あれ?)
俺はふと、もう一つ気になった。
同棲している彼女が居るのだが、今日は休みだから家に居るはずだ。
この日は特に用事はないと言っていたのに、家の中は物音がしないのだ。
「どうしたんだろう……」
俺はリビングに出た。
扉を開くと、彼女の姿が見えたのだが―――
首を吊っている姿、だった。
「……お、おい」
俺は彼女に近づく。
反応は無く、息はしていないような………
足元に、何かあるのに俺は気が付いた。
何かの札みたいだ。
(何だ、これ……)
手に持って、見てみる。
その札には、『弥霞神乃社』と書かれていた。