ムーンウォークの英雄
ある王国に、伝説がある・・・
後ろ向きに相手に前進するだけで、敵を殲滅できたという護国の勇者の伝説が・・・
彼は・・・
銃撃を・・・
砲撃を・・・
剣を・・・
矢を・・・
全てことごとく、相手にそのまま返した。
「後ろ向き」で。
ただ、彼はまだ若い少年だった。
やがて、彼に続けとばかりに義勇軍が立ち上がり・・・
民の自主性に任せておけぬと、国王が王国軍を結成した。
だが・・・
ある酒場で・・・
「なあ・・・
ジョニー・・・
恥ずかしくないのか?
「後ろ向き」で。」
ある義勇軍の将軍が言った。
「はは。
別にいいんですよ。
僕は、みんなを守れればそれで。」
「後ろ向きの勇者」ジョニーは、名性欲には無縁の男だった。
「ただ、武功をあげたら王様やみんなが褒章をくれるので、それで生活できるのがありがたいです。」
ただ、無欲だ。
ある日・・・
国防将軍が言った。
「ジョニーよ!
前向きに進軍するのだ!
勅命である!」
こう言われては、仕方ない。
ジョニーは、その日・・・
「前向き」に進軍した。
彼は、あっさり撃ち抜かれて即死した・・・
報を聞いた王は、王国軍と義勇軍を率いて自ら出陣。
「英雄の仇を取るのだ!
国は・・・
絶対に守るのだ!」
軍は、これまでが嘘のように果敢に戦い・・・
勝利を得た。
時を経て・・・
彼の進軍は、「ムーンウォーク」として伝えられ・・・
彼は勇者「ジョニー・ムーンウォーカー」と称され・・・
「後ろ向きの勇者」と、伝えられるようになったという・・・
「嘘や!」
ミリアム女王は、机につっぷした。
「おおう!
この反応、いいにゃ!」
短篇を書き上げた、リケ神は早速出版社に持ち込んだ。