第五十七話
「イヴさん、怒ってますか?」
そりゃ怒ってる。
けど、私も抵抗しなかったのもいけなかった。
「ねえ、シィ」
「すいません」
シィがうなだれる。そんな表情、私だって見たくない。
「私も、シィのこと好きだよ」
シィが勘違いしてしまう前に、「でも」と続ける。
「恋とは違う好きだから。私がシィのことを恋愛対象として好きになるまで、ずっと近くにいるって約束する。それまで待っててくれる?」
感動的なセリフに、シィは笑った。そんな純粋な彼女に、私は罪悪感から目をそむけた。そばにいるから。そんな献身的ないいわけで、私は、シィを縛り付けた。
「シィ、これあげる」
そう言ってイヴさんが差し出したのは、一本のネックレスだった。装飾はそれほど凝ったものではないが、真ん中の宝石が強い存在感を放っている。
「もしかして、魔石ですか?」
「うん」
魔石は、魔術を行使する際の補助として使用されるが、魔力を込めるとその魔力の質に応じて色を変えるので、特にきれいなものは観賞用としても価値が高い。今、私の手の中にあるものは、金色だった。黄金のようでいて、透き通っている。魔力の質は先天的に個々人で違うから、こんなきれいな魔石なら、かなりの価値があるのではないだろうか。
「あの、私の勘違いなのかもしれないんですが……この魔石にこもっている魔力は、イヴさんの魔力ですか…?」
このことは魔石に触れた時点でほとんど確信していたが、それでも自信がなかったのは、魔力の操作は一朝一夕で身につくものではないからだ。
「うん」
もしかしなくても、このネックレスを渡すために今日家に呼んでくれたんだろうか?
「イヴさんっ……!!」
やばい。イヴさんが可愛すぎる。大好きだ。この感情はどうすれば――。
「はっ」
分かった。わかってしまった。
私は、居住まいをただす。
「イヴさん」
「何?」
「おっぱい。触ってもいいですか?」
「ごめん無理」
終わった…。私の人生とかその他諸々。こんなことになるならば、せめて少しでも触っておけばよかった…。
私は、これ以上ないくらい脱力して、ベッドに突っ伏した。あー、イヴさんの匂いだ。フガフガ。
イヴさんは、静かに私の体を起こしてくれた。
シィを、裏口の玄関で見送る。
「また、一か月後に会おうね」
「約束、です」
私は苦笑する。シィは欲張りだ。
「うん。約束」
「はい」
どうやら、お気に召したようである。何よりだ。
「バイバイ」
「バイバイです」
シィが満面の笑みで手を振る。私も、手を振り返した




