第五十一話
シィたちと合流して、ほかの冒険者が来る前に、さっさと冒険に出かける。先週の話題を持ち出すものは、いなかった。
私たちは、修復中の南東門から街を出る。そこに、声をかけるものがいた。
「あら、イヴ。ようやく町から出てきたわ」
「何か用ですか、セイリカさん」
私の失礼な言い方にも、セイリカさんは苦笑すら浮かべなかった。
「うん、ちょっとね。できればもっと町から離れたいのだけど…」
いい予感がしない。私たちは、さっと武器に手をかけた。
「その様子じゃ無理そうね。いいわ、ここで」
セイリカさんは、グイッと身を乗り出してきた。
「ね、イヴ。貴方ここの領主の娘なんですってね」
「それが、なにか」
貴族に反感を持つものは、一定数いる。シュナイツに悪感情を持っている人も、少ないながらいるはずだ。もしかしてセイリカさんも……。
「ああ、勘違いしないでね。別にそれがどうこうというわけじゃないの。ただ……そのことも私の誘いを断る理由になってるのかな、と思って」
誘いとは、例のパーティーメンバーになれ、という奴か。
「もちろん一番の理由は、そこにいるお友達のためでしょうけど、もし仮に、仮によ?そのお友達が全員死んじゃって、その領主様も死んじゃったら、イヴは私のパーティーに入ってくれるのかしら?まあ、仮に、の話だけれどね」
「そんな仮定はあり得ませんね」
私は、答えとしてそう返した。
「あら…どうして?待遇はよくするわよ?」
「そういう問題じゃなくて、仮定だとしてもそんな話をする人とは仲良くなれないってことです。そこをどいてもらえますか?私たちは早く出発したいんですけど」
「パーティーメンバーになってくれさえすれば、別に仲良くしなくてもいいのよ?」
私の放つプレッシャーにも、セイリカさんは動じた様子はない。
「だから、そんな仮定はあり得ません」
「じゃあ、仕方ないわね」
私は、ほっと安堵した。思ったより、あっさりと引いてくれたことに。
「人質でも取れば、言うことを聞いてくれるのかしら」




