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第四十六話

 私は、ストエルも置き去りにして駆け抜ける。

 目の前の、闇色のドラゴンめがけて跳躍した。

「テンペスト!!」

 刃は、正確に首をとらえたが、僅かな傷さえもつかない。

 ドラゴンの翼から、細い光線が放たれる。空中で身をひねって、地面に触れるなり受け身をとって転がる。

 私が着地した地面を、光線が溶かした。

 立ち上がって、突進する。

「テンペスト!!」

 足に剣技を放っても、鱗に跳ね返された。

 再度放たれた細い光線を、ドラゴンの股下を潜り抜けることで避け、再度跳躍。

「テンペスト!!」

 金属をぶつけ合うような音が響く。相変わらずダメージは入らない。

 固いところに攻撃が通らないなら、柔らかいところを攻撃するまでだ。光線をよけながら、しっぽを伝って、その巨躯を駆け上がる。

 目を狙って、「テンペスト」を放つ。ドラゴンの血が噴き出る様を想像した私の目には、掌を貫通する光線と、自分の血が映った。

 手の真ん中に風穴を開けられた激痛に、レイピアをとり落とす。

「ぐあっ……」

 悲鳴を上げることもかなわず、ドラゴンの羽ではたかれチリのように吹き飛ばされる。何十メートル、何百メートルも空を駆けて、私の体は家屋をいくつも突き破って、最後にすさまじい衝撃を残して止まった。

 光が、私に向かって放たれる。あまりの眩しさに目を細めた。

 迸るエネルギーの波動。その光が、遮られた。

「ストエル…」

 シュナイツが、片腕を失って、シィが膝をついて、ベルが倒れた。何百人も死んだ。これ以上ストエルまで。

 光線が、ストエルの体をとかした。跡形もなく、なんの痕跡も残さず消えていく。その光景を見た。無駄な妄想力が。

 これ以上、奪わせるわけにはいかない。

 その激情をトリガーに、深淵の魔法が紡がれる。

 地面に広がった血液が集まって、漆黒に一滴の紅を垂らしたような刀が生まれた。

 引力に引かれてそのつかに手を触れた途端、怒りが、憎しみが、殺意が沸騰する。

 叫べ。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 殺せ。

 地を蹴る。邪魔なものはどかして、このうざったい光も断ち切って。私から奪おうとするこの下等生物の。首を。

 空が染まった。

 私じゃない何かが、嗤い声をあげた。

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