第二十五話
宿場町の、冒険者組合と同じ鷲のマークが描かれてある店で、素材を買い取ってもらった。分け前は一人銀貨一枚と銅貨二枚。私にとっては今までで一番いい稼ぎに内心で喜んだが、すでにはしゃぐほどの元気はなかった。これからまた街へ戻らないといけないと思うと、憂鬱になる。
シィとベルも、似たようなものだった。
「公衆浴場に行きましょう」
「公衆浴場?」
「はい。ディラーレンに戻ったらみんなで公衆浴場に行きましょう」
元気を出すためか、シィがそう言った。ちなみにディラーレンというのは町の名前だ。シュナイツが語るには初代ハーレン家当主の妻の名前と、ハーレンの名が合わさった名前だという。
「ああ、いいね…」
私は、深く考えずにうなずいた。疲れていたからか、ベルの驚愕した表情と、シィの口から垂れたよだれには気付かなかった。
公衆浴場は、町の南西部。つまり住宅街の少し東よりにあった。迷惑そうな視線がシィとベルに降りかかる。私はそのたびに、諫めるような視線を送った。「大好きですっ」シィがそう言って抱き着いていたので、気まぐれで少し頭をなでてあげた。
「じゃ、上がったらここで集合な」
建物の前でベルがそう言って男湯の方へ入っていった。私たちも、使用量の銅貨五枚を払い、女湯の入り口をくぐる。
もう夜といっても差し支えない時間帯で、ピークは過ぎていたが、脱衣所の中にはまだたくさんの女性がいた。
シィに、一斉に注目が集まる。私はかばうように前に立ち、睨み返す。女性たちは、ぎこちなく視線をそらした。
私たちは、隅っこの棚を使うことにした。
「そんなに見つめられると脱ぎにくいんだけど」
「気にしないでください」
「いや、気にするよ…?」
公衆浴場に行くことを提案したのはこのためかと、ようやく思い至った。だが時すでに遅し。ここで気にする気にしないの押し問答をしても仕方がないので、私は勢いよく服を脱いだ。
シィが「おぉぉっ」と歓声を上げた。鼻血を噴かずにいられたのは、単に一緒にお風呂に入るという欲望のためか。
桶にお湯を組んで体を流してから、私は湯船に体を沈めた。体中の筋肉が弛緩して、ため息が出た。
「あの、おっぱいを触ってもいいですか?」
私と同様湯船につかったシィが、大真面目な表情で言う。
「だめ」
「ダメなんですか?!」
「え?いいと思ったの?」
シィの驚きの声に、私も思わず驚きの声を上げた。
「だって、好きな人のおっぱいが目の前にあるのに触れないなんて、まるで生殺しじゃないですか!!」
そんなことを言われてもなぁ……。
「一応言っとくけど、私十二歳だよ?普通に子供だからね?」
「愛に年齢は関係ありません」
そう言う問題じゃないんだよなーと内心で深いため息をついた。
「とにかくダメ」
「勝手に触ったりしたら次の金曜日は一日口きかないからね?」
そろりと手を伸ばしたシィに察知して、手を打つ。シィは渋々といった感じで引っ込めた。
よし、そろそろ上がるか、と立ち上がると、シィがとうとう鼻血を噴いた。お風呂にのぼせたせいも少しはあった。ついでなので、シィが炎狐の血を引く獣人であり、熱に耐性があることを追記しておく。
シィを肩で支えながら建物を出ると、ベルはやっぱりこうなったかという表情でため息をついた。
「ご飯はギルドでいい?」
「ああ」
「イヴさんのおっぱいが……いっぱいぃ………」
「シィは少し黙ってようか」
ベルはおっぱいという単語を聞いて赤面した。それを悟らせないようにそっぽを向いたが、余計に分かりやすかった。




