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アートゥ国 童話「はじまりの王様」より
アップする内容間違えて修正しました。
小さなオアシスが枯れ果てて、そこに住む家族は命の源を失った。男は父を亡くし、母を亡くし、今日妻を看取って項垂れた。
絶望の淵に立つ男を見つけた水棲馬が、面白がって男に取り引きを持ちかける。
男の最後の家族である娘を欲したのだ。男は娘を易々と差し出した。慌てた水棲馬は代わりにオアシスを渡そうとしたが男はそれを断った。
「この絶望が再び起きる程度の幸運なら、授かるだけ無駄と言うものです。それより娘に生きる希望を授けて頂きありがとうございました。これで心置きなく旅立つことができます」
深々と頭を下げた男の言葉に水棲馬は短慮を恥じた。そして望む限りの水源を与え続けることを約束する。
男はもう一度立ち上がり、その傍で水棲馬は娘を愛して幸せに暮らしたのだった。