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作者: ネズミ王

 ネズミは気づけば檻にいた。名前はなかった。親はいなかった。彼には何も無かった。親もいず、友と呼べるものもいなかった。

 彼は、毎日されるがままであった。声をあげても、その声は届くことはなかった。

 彼は気づいた。私はこの世界に必要とされていない。

 そう思うと毎日の苦痛も和らいだ。

 ある日、くたびれた私の目に疑いたくなるような現実が飛び込んできた。檻が開いているではないか。

 彼は、初めてそこで欲を持った。

 外に出たい。私が生きている証を残したい。だが外にも居場所が無かったらどうしよう。

 彼は悩んでいた。一生に1度来るかもわからない機会が目の前にある。彼は、不安を残し外に駆けた。

 彼の不安は、的中した。数年檻の中で生活していたのだ。外の世界の理なぞ分かるはずもない。だが彼は歩んでいった。

 まず、友を作ろう。こんな私を受け入れてくれるような、何でも話せるような素敵な友を1人でもいい。そこに居たいと思えるそんな友を。

 彼は苦悩した。何も無い自分に当然、友なんて作れるはずは無い。そんな現実に。彼は悩んだ。頼り、頼られる男になるには…何も無い…いや…私には動かす体と檻を出た時の勇気があるじゃないか!

 そう、思いたった彼は、力を付けた。困っている人を助けれるよう。頼りたいのであれば頼れる存在になろうと思い。その後の彼は早かった。

 人と対話する力、身体的な力、精神的な力思いつく限りを考え、努力した。

 いつからか、彼の周りには友と呼べるものが沢山いた。色々な経験をした。色々な話をした。彼は外の世界で、居場所が出来たのだ。自分がいる証ともいえる場所が。

 彼は、初めて恋をした。彼女が大好きであった。友にも相談した。友は親身になって私の悩みを聞いてくれた。成功することも祝ってくれた。彼らの為にも必ず成功させようと思った。私には、力強い友がいた。そう思うだけで勇気が出た。

 ある日の夜、彼女を呼び出し告白をした。返事は良いものだった。すぐ友に話すと友はとても喜んでくれていた。とても嬉しかった。

 だが、現実は甘くはなかった。

 彼女には、既に相手がいたのだ。

 悲しみにくれる私に、友は暖かい言葉をくれた。私は泣いた。人目を気にせず、友の前で思いの丈を打ち明けて泣いた。

 私は、初恋と同時に裏切りを味わった。だが、悪い事だけでは無かった。私には、尊い繋がりがあった。そう思うとまた、私は泣いた。

 ああ、幸せだ。今なら死んでもいい。

 彼の、一生はどうであったのだろうか。今も生きているのか…その後の事を知るのは誰もいない。

 だが、彼は幸せであったろう。そう思う他ない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 辛いことや悲しいことがあっても、周りに思いを共有できるつながりがあれば幸せですよね 私も最近幸せに関するものを書いていたので、思うところのある作品でした。
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