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バッツの行方

あれから数日後ステラはとりあえず短期間ノゼスタとパーティを組む事にした。

話せる範囲で話をし、自分が魔物に狙われている事も伝えておいた。


「まぁ手に終えなければ皆んなでダッシュだ」


中々適当である。


「声をかけたもう一人も、もうすぐ此方へ来る。そやつもロゼの知り合いだ。彼女の方がロゼとは長い付き合いになるな」


(ロゼさんって顔が広いんだなぁ)


ふと、気になる事を聞いてみる。


「因みにロゼさんっていまギルド査定幾つくらいなんですかね?」


「ロゼか?確かS9の筈だぞ?」


「え、え、えす・・きゅ・・・」


そりゃ強い筈だ。

ほぼMAXレベルに近い。


「しかしなぁ。あれも当てになるのかどうか・・・昨年初めて冒険者になった者がSS1判定され皆疑いを持っておる」


SS・・・・ステラには考えられないレベルだ。


「しかも判定されたのが魔術士でも魔法使いでもなく剣士だったのだ。今まで歴史上そんなレベルの剣士など見たことも無い」


剣士・・・・・剣士?ステラはある人物が頭に浮かび上がった。


「あの〜その人もしかしてエルディって人ですか?」


「なんだ、知っておったのか。まぁ有名だからなぁ」


いや。違います。つい先日までその人と一緒に居ました。

とは言いづらかった。


「まぁ、あんまり気にし過ぎない事だな。冒険者レベルが高いからと言って絶対敵わないとは限らないぞ?」


(いえ。絶対負けると思います。100%死亡確定です)


ステラはそこは笑って流しておいた。


「ノゼスタ!お待たせ」


そんな話をしてる内約束の人物がやって来た。


「この子が新しくパーティに入った子?私リュナ!貴方は?」


「あ。私はステラです。よろしくおねがいします」


リュナは背が高く細身で銀色に薄ピンクが混じった長い髪をしていた。前髪は束ねて後ろの方へ留めている。


「貴方ロゼに鍛えられたんだって?大変だったでしょ?」


(大変だった。軽く30回くらいは脱走したくなるくらいはしんどかった。怖いからしなかったけど・・・)


「あはは。はい。お陰で初期ランクが上がっていました」


しかし下手な事は口にしない。

後で知られたりしたら大変である。


「あの子が人に指南するなんて珍しいんだよ?よほど貴方の事気に入ったのね」


それは違うと思う。

恐らく仕方なくだったのだろう。


「そんな事・・・ご迷惑ばかりかけてしまってましたし」


「そうなの?じゃあ、いつか返せばいいよ」


ちょっと捻くれた気持ちになったステラにリュナは当たり前の事のように笑って言った。


「ロゼもそう言わなかった?それに、ロゼが勝手にした事でしょ?貴方が気にする事じゃないわ」


ステラはその言葉にビックリした。

確かにロゼは借りを返したいならいつか助けてくれと言った。でも強要はしなかった。


「そうですね。いつかそんな日が来るといいなぁ」


自分が彼女の役に立つ。

そんな日が来たらいい。

そうしたらステラはもっと自身が持てるのではと思った。


「それでな、とりあえずステラの探しているバッツという青年を探して仲間にしようと思っとるのだが」


それはすごい助かる。

元々二人は冒険者になり自分達の事を調べるつもりでいたからだ。


「どうも彼はもう、ここには居ないらしい」


「・・・・・・・・・・・はい?」


ステラは目が点になった。


「どうも、ステラ達より早くここに着いたらしいんだがな?すぐに旅立ってしまったらしいんじゃ」


何故ノゼスタがそんな事知っているんだろうか。

ステラは嫌な予感がした。


「冒険者登録してすぐにレベル6の仕事をこなして金を手に旅立って行ったらしい。レベルが高いほど報酬金が高いからなぁ。笑いながら嵐のように去って行ったらしいぞ?」


ステラはプルプルと身体を震えさせ右手で握りこぶしを作った。


(ぜっっっっったい忘れてる!私忘れられてる!?)


酷い。これは流石に酷い。

森の中に置き去りにされた事は百歩譲ってまだ許すことが出来る。だがその後真面目に探す事も待つ事もせずに旅立ってしまうなど考えられない。

自分で約束した癖に。


「バッツの・・・・バッツのアホーーーーーーー!!!」


ステラは次あったらこの拳をぶち込んでやろうと心に決めた。






****





カイルは何件目かのギルドを出ると溜息をついた。


「やはりもう居ないか」


話を聞く限りバッツという青年はすでにラーズレイを出てしまっている。

どこに行ってしまったかは結局分からない。

手掛かりが無くなってしまいカイルはしばしステラの事を考えた。


(あいつこれが分かったら怒るだろうな・・・・)


ステラを命がけで守ろうとする筈だとエルディは言っていたがそうは思えない。

だがカイルはバッツと話した事がないので何か理由があるのでは?とも思う。オルゴールはバッツが持っている可能性が高いからだ。


(やはり、あのオルゴールが関係しているんだろうか?)


カイルは自分の父を思い出す。

そして首を振る。


(いや、違う。きっとあいつの事じゃない。それにあいつは俺とほとんど歳が変わらないじゃないか。父さんが言ってた聖女なんかじゃない)


カイルの父親は2年前に亡くなった。

その時初めて、家に代々伝わるオルゴールの話を聞いたのだ。



「カイル・・・そのオルゴールを探して処分して欲しい」


父はか細い声でカイルに懇願した。

父の最期の頼みをカイルは受け入れた。


「もし、見つけても決して開けてはいけない。誰にも見つからない所へ隠すか処分してくれ」


その時の父はあまりにも真剣で笑い飛ばすことは叶わなかった。


「あのオルゴールは破滅の箱。禁忌の産物なんだ」


オルゴールは開けると音が流れるおもちゃだと聞いている。それが破滅の箱などと、と。


「それがどこにあるかは分かっている、それはーー」






「あれ?カイル?」


急に声をかけられカイルはハッと顔を上げた。

目の前には先日別れたステラが立っていた。


「ああ。まだいたんだな?」


カイルはドキドキとなる鼓動を誤魔化しながら軽口を叩いた。


「その様子だとカイルもバッツと会えなかったのね?」


どうやらステラも置いてかれたことが分かったらしい。

しかし思ったより怒っていない。


「しかもどこの依頼も受けていないらしい。どこに向かったかも分からない。かと言ってずっとここで待ち続けるわけにもいかないしな」


待つにしても路銀がさほど無い。

バッツを探す依頼を出すにしてもお金がかかる。

仕事をしてお金を稼がなければならない。


「なんだお主。ステラと共にここに来たのか?」


「そうだ。ちょっと訳あってここまで一緒に行動することになったんだ」


「ふむ。ではこの後も一緒にきたらいい。金が必要なのだろう?」


そう言われカイルはしばし沈黙した。

正直自分はステラといた方が動きやすいし目的も早く達成出来ると思う。

それにステラの事だって気になっていた。

そんなに長くはないが、ここまで一緒に旅をしてきた。

ステラがいい子なのは分かっている。

だが一緒にいない方がいい気もする。

なんだか嫌な予感がするのだ。

それにエルディに言われた事も今だに引っかかっている。


「だが。ステラは迷惑なんじゃないか?」


カイルの言葉にステラは「え?」と首を傾げる。


「あの教会の物を俺が探してるの嫌がってただろ?」


そう言われステラは「ああ!」と握った右手を左手の手のひらにポンッと乗せた。


「だってあれはレイヴァン様が誰にも言うなって言ってたから・・・・」


ステラはそこまで口にして、そのまま固まった。

カイルはニヤリと笑った。


「やっぱり。あるんだな?オルゴール」


(は、は、は、はめられたぁぁぁぁぁ!!!)


口がひくりと歪むステラの肩にカイルの手がポンと乗る。


「と、言うわけで俺はやはりお前に着いて行く」


色々気にかかる事はあるが、やはりステラといるのが一番動き易いだろう。カイルは無理矢理自分を納得させた。


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