心繋がる
「それにしても何でロゼ達がステラ達の所に?」
遺跡から脱出した四人を入り口で迎えたのは後から場所を突き止めやって来たリュナとノゼスタだった。
とりあえず意識のないカイルを連れ先ほどやっとラーズレイに辿り着いた所である。
ステラは先程まで散々リュナに説教され涙目になった所でノゼスタが止めに入り少し気が済んだリュナはやっとロゼ達に話を振った。
「相変わらずねぇリュナ。私、忘れられてるのかと思ったわ」
ロゼが呆れた声をだす。リュナはごめんごめんと笑って手を振っている。この二人仲が良さそうだ。
「忘れてたら私ここにいないでしょ?貴方がステラの事私に連絡して来たんだから」
そう言われてステラはビックリした。知り合いだとは知っていたがリュナはどうもステラと会う前からステラの事を知っていたらしい。
「ロゼから知らせが直接届いたからね。貴方の側にいて欲しいと頼まれてたの。言うと気にするかと思って黙ってたけど」
リュナは悪びれる様子もなく淡々と言った。
ノゼスタを見るとノゼスタも決まり悪そうに笑った。
「儂は様子を伺ってただけなんだが。早々に絡まれておったんでな。自己判断でついて行くことにしたのだ」
そうだったのか。自分は知らぬ間にこれ程までに守られていたのか。
「まぁしかし我等冒険者は基本自分がしたくない事はしない主義だ。だからステラは気にするでない」
ノゼスタは優しく微笑んだ。ステラはまた泣きそうになって返事を返すと顔を伏せた。
「まぁ、間違いなくこの中で一番過保護なのはロゼだから。よっぽど貴方が気に入ったのね?ロゼでもここまで手を回すのは珍しいわよ?」
リュナの言葉にロゼはリュナを睨んだ。リュナは何食わぬ顔で飲み物を飲んでいる。
「まぁ。ステラの代わりにバッツをはっ倒したくらいだからな。相当気に入られているだろう」
エルディの言葉に皆耳を疑った。一番驚いたのは勿論ステラだ。
「え。え!?ロゼさんバッツに会ったんですか?っていうか、は、はっ倒した!?」
思わず目を剥いて身を乗り出した。そんなステラを見てロゼは居心地悪そうに肩を竦めた。
「確かにあれは私にも非があったと思うけどステラも悪いと思うわよ?バッツの事情を余り知らされて無かったから・・・・つい。カッとなって」
これは確実にはっ倒したに違いない。ステラは真っ青になった。
「バ、バッツは無事ですか?生きてます?」
「・・・貴方中々失礼ね。当たり前でしょ?ちょっと顔が変形したけど」
(ヒェェェェェェ!!!)
ステラは急にバッツに申し訳なくなった。
こんな事なら彼の詳しい事情をちゃんと話しておくべきだった。さぞかし驚いたに違いない。
「実はさっきまで一緒に居たのよ。貴方に呼ばれるまで」
ロゼは色が無くなったステラの首飾りを指した。
ロゼがステラに渡した首飾りである。
「貴方がどうしようも無くなった時、私が貴方の下へ瞬間移動できるよう作った特別製の代物よ?ルシフェルに協力してもらって作った甲斐があったわ」
そう。あの時ステラが首飾りに触れた瞬間それは発動した。だからあのタイミングで二人が現れたのだ。ステラは思わず首飾りを握り締めた。
「・・・・ロゼさん。ありがとうございます」
「構わないわ。いつか借りは返してくれるんでしょう?」
ロゼはニッコリ笑って微笑んだ。その辺りでノゼスタが口を開いた。
「して、そのバッツとやらは大丈夫なのか?だいぶ不安定だと聞いておるが?」
「そうね。制御装置は渡してあるし、今すぐ暴走、とかはないのだけど。なんせ心の成長期真っ只中だから手に負えなくて・・・」
皆これには意味が分からずどういう事かと言う顔をしている。
「私達にはそれぞれ課せられた役割があるらしいわ。バッツは枯れた大地を芽吹かせる役割を持っているらしいんだけど・・・・」
ロゼはチラリとステラを見た。ステラは嫌な予感がした。
「それにはどうも人の愛を感じる力が無いといけないらしいのよ」
「バッツには、それが理解出来ない?」
「そうね。かなり難しいと思う。なんせ根底から壊されているから」
「方法ならあるぞ」
皆が会話に夢中になっている背後から目を覚ましたらしいカイルが口を挟んだ。
「カイル?もう大丈夫なの?」
「ああ、悪い。その話の続きだがその感情だけを呼び起こす事なら出来るかも知れない」
カイルは皆の顔を順番に見て最後ステラの顔を見た。
「オルゴールでバッツの心は壊されたと言ったが厳密にはそうじゃない。抜きとられたんだ。バッツの心の羅列はオルゴールに書き込まれていた。全ては返せないがその一部なら何とかなると思う」
「カイルにはそれが出来るって事?」
「そうだ。まさか俺の能力がこんな事の為に存在したとは思いもしなかったが・・・・・・しかしそれには問題が一つある」
カイルはいまだにステラから目を離さず喋っている。
これはステラに言っているのだ。
「恐らくバッツは俺を拒絶する筈だ。しかし俺がバッツにそれを返す為には、ある程度の心の繋がりが必要になる。それにはステラお前が欠かせなくなる。出来るか?」
カイルは真っ直ぐにステラを見つめている。ステラにはそのやり方も何故バッツがカイルを拒絶するのかも分からなかった。しかし。
「やるわ。彼の心が少しでも戻るのであれば、何としてでもやり遂げる」
これはステラがやり遂げなければならない事だ。
その返事に皆笑って頷いた。
カイルはそれを聞いて満足すると、思い出した自分の事情を説明する為に椅子に腰掛けた。
****
「実はカイルが一番隠し事が多いんじゃない?」
ステラはその夜カイルと二人で話をした。
つまりカイルは父親にオルゴールを処分するように言われスタシャーナ家を捨てて来たが、実は彼こそ最もスタシャーナ家に必要な人物だったのだ。
そしてその家とその家が信仰するリーズ教は本来ステラを守る為にあるらしい。
しかし、ステラの出生がきっかけで内々で揉めた結果内部分裂したのだ。
ステラを守り世界を救おうとする者達とステラを手に入れ私利私欲を満たそうとする者達とで。
「いや、そもそも俺は家の事に余り興味が無かったからな。正直リーズ教とやらも信じてないと言うか興味が無いというか。だから折り合いも悪くて俺は問題児扱いされてたぐらいだ。まぁそのおかげであの家から脱走出来た」
(た、脱走?脱走って言った?)
さらっと言い放ったカイルにステラは慄いた。こうやって聞いているとカイルも中々壮絶な人生を送っていないだろうか?ステラが一人グルグルしているとそんな彼女をカイルが引き寄せた。
油断していたステラはそのままカイルの腕の中にすっぽりと収まってしまう。
「そんな事より、俺も結構怒ってるんだが?」
ステラは何事かとカイルを見上げる。カイルは眉を寄せてはいるが口元は笑っている。ステラは一瞬何を言っているのか理解出来なかった。
「お前。俺の事何とも思っていないんだって?それで俺の寝床に潜り込んできた訳だ?」
(ぐはぁ!!!)
そうだった。それどころではなくて忘れていたがカイルにした数々の問題行動を今、思い出した。ステラは嫌な汗がダラダラ出てきた。
「あ、あ、あのカイルさん?」
「で?お前は本当の所どうなんだ?まぁ気持ちを無理強いするのは無理だしな?ただ俺の気持ちを弄んだツケは払ってもらうからな?」
そう言ってステラをそのままベッドに押し倒した。ステラは真っ赤になって暴れた。
「ちょっ!カイル!?何?」
「お前が正直になるなら優しくしてやる。それでも意地を張るなら俺が無理矢理したことになるが、まぁその時は俺のしたいようにさせてもらう。だって無理矢理だからな?」
カイルの思わぬ仕返しにステラは顔を真っ赤にしながら涙目になる。無理矢理は嫌だ。嫌だが・・・・。
「ご、ごめんっ・・・カイル・・・意地悪言わないで」
カイルは態度に出さなかったが相当傷ついたに違いない。ステラは恥ずかしい気持ちを何とか抑えてたどたどしく口にした。
「うう・・・本当に好きで、すぅ・・・」
「何だそれは。嫌なのか?」
まだカイルは不満そうである。ステラは開き直った。
「もう!!!好きです!大好き!!」
そう言ってカイルの首に抱きつきカイルの首に顔を隠した。カイルはそれに吹き出し、じゃあ許してやるとステラのおでこにキスをしたのだった。




