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ステラとの約束

その日の夜四人は酒場でお酒を飲んでいた。ステラはジュースにしてもらう。


「しかしなんだ。それは恐らく迷ったのではなく呼ばれたのだな」


ノゼスタはビールを飲みながら興味深げに話している。


「しかしあの遺跡は開かずの扉の1つとして有名だ。よく開いたな?」


あの後そのまま道なりに進めば帰れると教えてもらいアッサリと入り口にたどり着いた二人は大まかな事情を説明して帰ってきた。ギルドの依頼は達成出来たので二人は大して怒りはしなかったが複雑な顔をしていた。


「それが私達にもさっぱりで・・・」


でも呼ばれたならルドラが開けてくれた可能性もあるが彼の様子だとそれもなさそうだ。姿は見えなかったので彼なのか彼女なのかすら分からないが。


「とにかく無事だったからいいじゃん!臨時報酬もあったし?本当に山分けでよかったの?」


そう。実は持ち帰った鉱石。かなりの値で売れたのだ。大分希少なものだったらしく数個を残して売りみんなでわけた。


「はい。急に居なくなった私達を探してくれましたよね。ご迷惑をおかけしました」


「まぁ確かに焦ったけど勝手に動いた訳ではないし、依頼品は採ってきてくれたんだからよかったのに」


そうはいかないだろう。ステラは苦笑いした。


「もしかしたらステラが見かけた蝶が俺達を彼方へ導いたのかもしれないな」


確かにそれは瞬く間に起こった。

もし瞬時にカイルがステラの手を掴まなかったら一人であそこまで行く事になったかも知れない。


「そうだね。カイルもありがとう。すぐに気がついてくれて・・・・」


ステラは素直にお礼を言う。

カイルはそれには軽口で返した。


「お前は自分自身の普段の軽率さに感謝するんだな。目が離せないお陰ですぐに気づけた」


「カイルって本当一言多いよね?というか、お小言が多い」


「俺はお前のお母さんじゃないぞ」


カイルはげっそりと言い返した。

お小言ってなんだ。お小言って。


「はいはい。分かったから喧嘩しないでね?料理が来たから食べましょ?」


その日、四人は少し豪華な夕飯を楽しんだ。


ご飯を食べると四人は一旦バラバラに解散した。

数日後また集まる約束をして。

ステラとカイルは宿屋が一緒だったので二人で移動する。


「私のこと黙っていてくれてありがとう」


帰り道。ステラはカイルにお礼を言った。

それにカイルは苦笑いした。


「俺が喋ったとしても信じないんじゃないか?」


それぐらい内容がぶっ飛んでいると思う。

カイルでさえ信じ難い。だがカイルはステラが普通の女の子ではない事を知っていた為、すんなり話を受け入れられた。そしてエルディがカイルに言った言葉の意味をやっと理解した。


「ずっとカイルを巻き込んでしまってるね、ごめん」


ステラが申し訳なさそうな顔をする。カイルはそんなステラの両頬を片手の指で挟んだ。


「うにゅ?」


頬を真ん中に寄せられて口が尖る。やめて欲しい。不細工な顔になるじゃないか。


「アホかお人好し。巻き込まれてるのは俺じゃなくてお前だろうが」


カイルの言葉にステラはビックリした。

言い方は素っ気ないのにすごく声が優しかったから。


「お前は何も悪くないんだ。だけどお前は頑張ったし今だって頑張ってるだろ?だから気にしなくていいんだ」


「・・・・カイルは、突然いなくなったりしない?」


その言葉に今度はカイルの眼が大きく開かれる。

きっとここでする返事はカイルにとってもステラにとっても大事になる予感がした。


「しない。もう俺達は仲間だろ?勝手にいなくなったりしないし離れてもすぐに会える」


ステラは潤む眼でカイルを見ている。きっと泣くのを我慢しているのだ。カイルは手を離すとその手で軽く彼女の頭を撫でた。


「お前も勝手に居なくなるなよ?ちゃんと俺について来い」


その言葉にステラは満面の笑みをみせた。

カイルはその顔を見てすぐに自分の発言を後悔したのだった。




****






「え?怪我人ですか?」


「そうなんです。何処の宿も部屋が空いていなくて。あなた方パーティを組んでらっしゃいますよね?一人分無料で構わないので今夜は一部屋譲って貰えませんか?」


宿屋に行くと二人は急にそんなお願いをされた。

二人は勿論別々に部屋をとっていた。


「えーと、でも。ベッドは1つしか無いんですよね?」


「はい。あとソファーがあります。女性なら辛うじて横に慣れますが」


なるほど。これはステラにソファーで寝て欲しいと言っているのだ。横をみるとみるからに顔色が悪い男性が座っている。ステラはカイルを見る。


「・・・・・お前。まさか了承するつもりじゃないだろうな?」


カイルの了承が得れなければ部屋を譲ることは出来ない。

ステラはしょんぼりする。


「あの、すみません。私達一応男女なので二人きりで一緒に寝泊まりするのはちょっと・・・・私は平気なんですが」


その物言いにカイルがギョッとする。宿屋の主人もそうですよねぇと溜息をついた。


「確かにこんな可愛らしい女の子と一晩二人きりじゃさぞお辛いでしょうね」


いやいやいやいや。待て。何だそれは。


「彼は私と違って繊細なんです。細かいことを気にするタイプなので・・・」


「ちょっと待て。何で俺が悪者なんだ。しかもその言い方ではまるで俺が見境のないケダモノみたいな言いようじゃないか?」


ステラと宿屋の主人は一緒に首を傾げる。

それにカイルはイラついた。


「別にコイツと二人きりで一晩中いたってなにも起きやしない!俺が言いたかったのは何でもかんでも安請け合いするなと言うことであって・・・・」


「じゃあ一緒の部屋でも大丈夫なの?なにもしない?」


「当たり前だ!誰がお前みたいなお子様にーーーー」


そこでカイルはハッと我に返った。

キョトンとしているステラとニッコリ笑っている宿屋の主人がこちらを見ている。


「ありがとうございます。では一部屋は譲らせていただきます。後で毛布をお部屋に届けさせていただきますね?」


はめられた。

カイルは片手で自分の目元を覆い隠した。


「いつまで怒ってるの?いいじゃない一晩くらい」


装備の確認をしつつステラが困った顔をする。

先程からカイルは無言でベッドに横になっている。

こちらを見ない。


「ねぇったら!もう・・・すぐ怒るんだから」


しかし確かにステラもカイルに悪い事をしたなと思っていたので強くは出られない。


ステラはしばし考えもう今日はこのまま寝たほうがいいなと思った。きっと明日になれば多少は機嫌が直っているはずだ。多分。


狭いソファーに一枚毛布を敷きその上に体を乗せる。野宿にも慣れているのでまぁ大丈夫だろう。

そう思いふと目線をあげるといつの間にやらカイルが横に立っている。


「カイル?」


カイルは不機嫌な顔でステラの腕を掴むと立ち上がらせそのままベッドへ連れて行く。


「お前はこっちだ。俺がソファーで寝る」


ステラはブンブン首を振った。


「それはダメだよ!カイルのとった部屋なんだからカイルはちゃんと休んで!それにカイルの背じゃあのソファーは狭すぎるでしょ!」


「お前でも狭いだろ。夢見が悪くなるからお前はこっちで寝るんだ」


そうは言っているがカイルはステラが体力的にも精神的にもヘトヘトな事に気づいていた。さっき泣き出しそうだったのもきっと限界が近いからだ。彼女はギリギリまで我慢する所がある。


「大丈夫だってば!絶対絶対絶対カイルがベッドを使って!じゃなきゃ私野宿する!」


この女!とカイルはまたもやイラついた。

素直じゃない。ほんっとに可愛くない。


「・・・・・そうか、わかった」


カイルは額に青筋を浮かべ部屋の電気を消すとソファーの毛布を掴みツカツカとステラの下に戻って来た。


「ベッドに横になれ」


ブンブンと首を振るステラの身体をベッドへ押す。

勢いで腰掛けたステラの身体を強制的に押し倒し、隅に押し込むと自分もその隣に横になった。


「・・・・・・・・狭くない?」


「うるさい。さっさと寝ろ」


カイルはステラに背を向けたまま横向きで寝ている。柔らかいベッドの感触とカイルの香りが近くてステラはすぐ瞼が重くなってきた。


(何だろう。本当にいい香り・・・・)


すごく安心する。ステラの意識はそのままストンと落ちた。

ステラが眠った事に気づいたカイルは、また深く溜息をついた。


(やっぱり疲れてたんじゃないか。お人好し)


ステラは安心したようにスヤスヤ眠っている。カイルはその顔を見ながら何故自分はあんな守れるか分からない約束をしてしまったのかと思う。

カイルは多分かなりステラに情が移っているのだ。


(出来ればバッツに引き渡すまでは一緒に居てやりたい)


そう考え、しかしその後少しの違和感を感じる。何だろう?分からない。ステラの顔をもう一度みる。

こうやって大人しく眠っている姿は可愛らしい女の子そのものだ。

カイルは苦笑いをしてベッドから出ようと身体を起こし・・・


ガシッ


「・・・・・・勘弁してくれ」


ステラは寝ながら無意識にカイルの服を握り締めていた。

無理矢理剥がしたら起きそうである。


「ーーーーーーーーーーーーーッ」


カイルは観念して横になった。

もう目は死んでいる。


(馬鹿らしい。寝よう)


もうどうにでもなれとカイルは目を閉じた。

カイルだって疲れているのだ。寝れないと思っていた彼もその後すぐ眠りに落ちた。



朝。ステラは鳥が鳴く声で目が覚めた。

何だろう。やけに温かい。ステラは寝ぼけた顔で、顔を上げた。するとすぐ目の前にカイルの顔がある。


「あれぇ?」


目の前のカイルは無防備な顔で眠っていた。

ステラは寝ぼけた頭でその顔を見つめる。

カイルの顔はバッツの人懐こい顔と違って、どちらかというと目元が少しつり上がってキツイイメージだ。肌はあまり日に焼けていない。多分焼けにくい体質なのだろう。

顔のパーツは男性らしさがあるのに少し中性的なイメージがわきやすいのはその為かもしれない。


(可愛いな)


カイルに言ったら激怒するであろう事をステラは思った。

ステラは寝てる間にカイルを抱き枕がわりにしてしまったらしい。いまだに抱きついたままである。

カイルがふと瞼を開けてステラを見、もう一度目を閉じた。そしてバチっと瞬きして大きく瞳を開く。


「おはようカイル。よく眠れた?」


ステラがそう声をかけた瞬間。カイルの身体は床に激しく滑り落ちた。


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