46話 不穏な影
「「「ギルドマスター!!?」」」
「……?」
マーサと名乗る女性の言葉に、いまいちわかっていないレイラを除き驚愕の声を上げた。多分俺と同じく秘書とかだと思っていたんだろう。知らんけど。
でもさっき警告って言ったよな。何かヤバめな問題でもあるんだろうか……。ヤババババ……。
「まず初めに、近頃不審な動きをしている他国の組織がいることはご存知ですか?」
「別に軍事関係者とかじゃないんでそんなこと知らないです」
「ハジメさん!?絶対アレのことですよ!あの商会のことですよ!」
「あぁ〜……」
ロレッタに言われてようやくピンときた。クーデリー商会のところの人類解放同盟であるなら大ビンゴだ。
「その組織に忍ばせていたスパイから、この料理コンテストでテロを起こす計画をしていると連絡が入りました」
「テロ!?」
あの胡散臭そうで狂ってる商会にスパイを仕込んだことも聞き捨てならないが、流石にテロはマズイ……。もしそんなことが起こされてみろ、町中大パニックで商売どころじゃあ無くなってしまう。ましてラーメンの布教なんて夢のまた夢だ。
それにあの集団のことだ。絶対に俺達亜人種に責任をなすり付けて、只人の民衆を焚きつけて弾圧してくるぞ。そうなったら一体全体どうなるんだよ俺のスローライフ……。最悪人生ゲームオーバーになりかねない。
「彼らの目的・規模などは掴めていませんが、帝国では名の知れた商会がバックについているようですし、かなり大規模な戦闘が起こる可能性が極めて高いのです。そこで、料理コンテストに参加する方々には、不審な人物がいないかなどの警備活動も、並行して行って欲しいのです。よろしいですか?」
「まあ…俺ら一応冒険者ですし」
「そうですね!」
「……ん。わかった」
「そういうことなんで、喜んで引き受けますよ」
俺達の返事に、安堵の表情を浮かべるマーサさん。まあなんとかなるでしょ。最悪“創造”で一網打尽だ。どうするのかは、事件が起こるまでのお楽しみ。
………
テーブルに置かれた少し小振りの椀。その中には、湯気立つ褐色のスープが見える。
「これが俺達のラーメンです」
マーサさんの目の前に置かれた1杯のラーメン。使い慣れた厨房で作った試作品と同じような出来。これなら本番も大丈夫だろう。
「一体どこから、そんな寸胴鍋が……」
収納スキル自体初めて見るのか、マーサさんは目を丸くして銀色の大鍋を凝視していた。まあ、仮にもユニークスキルだしね。初見でも無理はないか。
「……いただきます」
マーサさんは目の前のラーメンを、スプーンで自らの口元に運び……飲み込む。
「!?」
その瞬間、大きく目を見開き、そしてスイッチが入ったように一心不乱にスプーンを動かす。器の中身はみるみるうちにマーサさんの胃の中へ消え、残ったのは空の器とかすかに残るラーメンの匂いのみ。
「……合格です。素晴らしい完成度ですね」
次の瞬間、会議室っぽい雰囲気のギルマス室は、俺達の歓喜の叫びで満たされたのだった。
………
「では、出店場所は中央広場の角でよろしいですね?」
「というか、そこしか空いてないから…」
出店のルールや禁止行為などの説明をあらかた受け、出店場所(ちなみにほぼ選択肢はない)も決め、出店手続きは終わりだ。勿論、料理ギルドの会員登録も済ませてある。あとは、残った時間で麺とスープの量産をするのみ。地道だけど、やらなきゃ店は出せない。
「では、当日はよろしくお願いしますね」
「あ、はい」
「任せてください!」
マーサさんに念押しされながら、俺達は料理ギルドを後にしたのだった。
◆◇◆
麺を捏ね、製麺機にかけ、また麺を捏ね…。
「ああああああああ!地味!地味すぎる!!飽きるわこんなの!!」
「あーもう煩い!こっちだって、無心でずっっっっっとやってるんですよ!!」
隣でスープ作りをしているペイルにブチ切れられてしまった。クソ……ッ!昔はこの類の作業は楽しんでやっていた筈なのに……。
ちなみに、ロレッタはレイラの面倒という名目で苦行を回避している。ロレッタに一番懐いてるからしょうがないのだが、なんだか腑に落ちない……。というか疲れた。どうしたものか……。
…
……
………
ピンと来た!うん。ただ……正直あまり気は進まないけどね。
「ペイル、もうリビングに戻ってていいよ。どうせ保管場所は俺の収納の中なんだし、後は全部俺がやるから」
「え……マジで言ってるんですか?この作業で気でも狂いました?」
「狂ってないわ!ただいい案が浮かんだだけ!ただし見るなよ。鶴の恩返し方式だ」
「そう言われると健全な日本男児なので覗きたくなりますねぇ……ふっヘッヘッヘ」
「その気持ち悪い笑い方やめろ。とにかく出ろって。ほらほら」
「うわああ、もう、押さないでくださいよ……わかりました!出ればいいんでしょ出れば!」
そう言って不機嫌気味に台所から出て行くペイル。
さあ、邪魔者もいなくなったことだし、作戦開始だ。
(ペディ、収納の中にあるスープと麺と全く同じものを“創造”できるか?)
<材料さえあれば可能です>
(んじゃ、頼むわ)
<了。しかしよろしいのですか?主は以前食品の“創造”に乗り気では無かった筈ですが>
(状況が状況だからね……しょうがないさ)
<了。“創造”を開始します>
ペディに身を委ね、いざ量産作業再開だ。と言っても……。
「材料を収納するだけでいいとか、流石に便利すぎない……?」
そのあまりの手軽さに思わず声に出してしまった……。何? もしかして俺の身体は便利家電でできていた……?
しょうがないから、できるまでの間読書でもしていようかな。
「ハジメさーん、何か手伝うこと……何やってるんですか?」
「どうも俺の身体の中で作ってるらしい」
「えぇ……?? どういうことですか、それ……」
胡座をかいて完全にリラックスしている俺を見て、ロレッタも困惑気味だ。ちなみに俺も困惑してる。
チン!
(うわ煩っ!)
突然俺の頭の中に響いた軽い音……もしかして……。
<料理ができました>
(本当に家電じゃねーかよ!!!!)
そんなこんなで無事に量産も終わり、料理コンテスト当日を迎えるのだった。
次回からコンテストスタートです!あのキャラも出るかも……




