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 あたしは人付き合いが苦手な人間だ。言いたい事ははっきり言うし、いわゆる空気が読めないタイプだ。言葉に詰まったり、恥ずかしくなったりするとどうしたらいいのかわからず、今でもよく睨んでしまう。威圧でその場をやり過ごそうとする、最低の人間だ。

 中学生になってから周りの人との衝突が増えた。よく言い合いになったりした。あたしはそんなつもりじゃなかったのに。気付けばあたしは、学校に行く事をやめていた。

 勉強は大して困らなかった。自分で自分が頭がいい方であるのはわかっていたからひとりで出来たから。それにネットの動画投稿サイトにいくらでも解説が上がっている。

 オムニスに出会ったのは2年生の頃だ。この頃にはあたしはもうほとんど外に出る事は無くなり、ずっと家の中に閉じ籠っていた。

 それは、あたしの世界を一瞬で広げてくれた。目標も出来た。それからあたしはあたしを捨てた。あたしは目付きも口も悪い桜井テン子ではなく、ウォーリアーの剣士マルクとしてこの世界で生きていこうと決めた。

 しばらくオムニスをプレイしていく内に、少しくらいは社交性も身に付いた。だってマルクは目付きも口も悪くないから。そんな時に、瑠璃と出会った。

 何となく、ほっとけなかった。可愛らしい女の子だったし。彼女にあれこれ教えながら親睦を深めていった。

「結婚……しないか」

 プロポーズをしたのは、あたし達の関係を形として目に見える物にしたかったからだ。とても勇気が要った。でも、彼女はすんなりと受け入れてくれた。

 それから、あたし達は夫婦になった。


『仮想世界の真想(メンタリティー)』▼


 だから、リアルで会った時は凄くショックだった。この娘なら、素顔の自分を晒け出してみてもいい。マルクではなく、テン子として会ってみてもいい。もしかしたら、捨てていったあたしを受け入れてくれるかもしれない……そう思っていたから。

 なのに裏切られた。

 でも、あいつの言っていた通りそれはあたしも同じ事だ。自分の事を棚に上げてあたしはあいつを攻撃した。やっぱりあたしは最低の人間なんだ。


 あたしは戸惑った。オムニスではあたしはマルク。なのに一度テン子としてあいつと会っちゃったから、どうしたらいいのかわからなくなった。あたしはあの世界ではマルクでいなきゃいけないのに。でもあいつはテン子(あたし)を知っている。ならあたしはどうすればいいのだろうか。

「これまで通りだって話だっただろうが」

「うるさいわね! そう思ってたけど無理な物は無理なの! ……あたしだって……」

 あたしだって、わからない。わからなくなって、恥ずかしくなって、少し調子が狂ってしまった。


 暗闇は、今でも怖い。昔、クラスメイトの男子に学校のゴミ捨て倉庫の中に閉じ込められた事があったから。そこは一切の光が入らない、本当の暗闇。だから、暗いのは嫌だ。

【俺はな、お前ほど頑張って生きてねーんだよ】

 が、頑張ってる……? あたしが……? 学校にも行けてないあたしなんかが、頑張ってる……の……?

【お前は俺なんかよりもよっぽど凄い奴だなって思ってんだよ。お前のそういう所は、素直に尊敬出来んだな】

【そ、尊敬……?】

 尊敬だなんて、そんな事、初めて言われた。どうして。あたしはただの、登校拒否の人間なのに。みんな当たり前にやってる事を当たり前に出来てない、出来損ないの人間なのに。

 でも、この言葉であたしの心は安定した。

 こいつはあたしの事を認めてくれている。いいのかもしれない、と思えた。この世界で、あたしとして少しずつ生きていっても。


 この日の前の夜はいつもよりも念入りに髪と体を洗った。少しでもいい匂いが残る様にって、張り切って。それなのに、それなのにあいつという奴は……!

「お前はもう少し! 自分が年頃の女子で! 同い年の男子と密室にふたりきりって状況を理解しろっ!! 近過ぎんだよお前は!」 

 ま、まままったく! 男ってのはすぐに変な事を考えて……! あ、あああたしはがが頑張って教えてあげてたっていうのに……!

 だってしょうがないじゃない! しばらく家族以外の人間と接してこなかったんだから! そんな、人との距離なんてわかってたらあたし、こんな事になってないもん!

 凄く、恥ずかしかった。ドキドキして、身動きが取れなくて……トイレに駆け込んでも、落ち着くまでにしばらく時間がかかった。鏡を見ると顔が真っ赤になってたけど、あたし、笑ってた。あたしを見てくれてるんだって思っちゃって。感じちゃって……マルクじゃない、あたしを見てくれてる。それがたまらなく嬉しいんだって事に、この時気付いたんだ。自分で自分を捨てておきながら、誰かにそれを拾ってもらえたらって、どこかで望んでたんだって。自分を見てもらえる事に焦がれていたんだって。

「……やっぱりあんたとは二度と会いたくない」

 これは半分ほんとで、半分嘘。

 ……ううん、ちょっとだけほんとで、ほとんど嘘。

 ……。

 …………………………………………ごめん、ほんとは全部嘘。

「……ね、ねえ……」

「ん?」

「………………や、やっぱり何でもない」

 あたし達って、もしかしてともだ……聞こうと思ったけどやっぱり恥ずかしくって、やめた。まだ無理だ。まだ、もう少し、ゆっくり時間をかけて、聞ける様になろう……。


 ……やっぱりあたしは最低の人間だ。カッとなって取り返しのつかない事をしてしまった。図星を突かれて、それを認めたくなくて。自分を見たくなくて……ほんとは見て欲しいのに、見せたくなくて……訳わかんないでしょ? あたし。うん、知ってる。訳わかってたらあたし達、きっとこういう風にはならなかったもの。

 ああ、これであいつに嫌われた。やっぱりあたしは、ここにいちゃいけないんだ……。


 あたしみたいな人間なんか、消えて無くなっちゃえばいいんだ。











 ……………………うっ…………うあっ、うああ…………ううっ……………………うあああああんっ! うあっ、うっうっ、うあっ、うわああああああんっ!

CONTINUE.

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