僕のせいだった
短いから見てって見てって。
僕のせいだった。
今、彼女は僕のせいで病院のベットで深い眠りについている。
彼女と言っても恋人というわけではない。
彼女は僕に関わるまで全くの赤の他人だった。
だけど、彼女は僕に関わったことにより、一種の植物状態になってしまったのだ。
医師によると起きる可能性は限りなく低く、起きないものとみていた方が気が楽かもしれないだそうだ。
僕があそこで横断歩道に飛び出さなければ…。
あそこで見知らぬ猫など見捨てていれば…。
彼女は僕を庇ってトラックにひかれることなど無かったんだ。
今の僕は高校の帰りで一輪のつぼみが開いた花を片手に持ち、彼女の寝込んでいる病院に向かっている。
暇がある日なら彼女へのお見舞いに費やし、そのたびに生花やプリザーブドフラワーなどを片手に彼女のもとへと持っていく。
おそらくこれは僕自身が彼女をこんな状態にした罪悪感から来た行動なのだろう。
彼女がこんな状態なのに僕はこんなにのうのうと生きて居る。
そこから来ているものなのだろう。
こんな行動も彼女への罪悪感を少しでも減らしたいがため。
このジクジク痛む心を少しでも和らげるためにやっていることなのだろう。
そうでなければ、めんどくさがりの僕はおそらくこんなことを進んですることはないだろう。
しかし、そんな邪な考えを持っているからなのか罪悪感は一切取っ払われず、心の痛みはさらに激しさを増す。
こんなことを考えてはだめだ。
頭の中ではそう思っている。
だが、その考えは消えることはない。
僕の深層心理は本当にこう思っているのだろう。
だから心の痛みは増すばかり。
これが僕の本音なのだろう。
相変わらず僕は最低な男だ。
彼女の入院している病院にたどり着き、彼女の病室へと向かって行く。
病室に入ると笑顔で眠っている彼女がいた。
何故彼女は笑っているのかはよくわからない。
僕を庇った時も笑顔でこちらを向いていた。
僕にはわからない。
彼女の笑顔を見た僕はここでさらに心の痛みが増した。
この痛みは彼女の笑顔で寝ているところを見るたびに激しさを増す。
それはほんとに酷いものだった。
普段の生活ではチクチクと爪楊枝に刺されているような痛みである。
病院に近づくにつれてその痛みは増していくが、彼女の笑顔を見た瞬間の心の痛みは心臓を握りつぶそうとしてくるような感覚だった。
このまま保てなかったら壊れてしまいそうだ。
僕が僕でなくなってしまうかもしれない。
それほどまでにひどい痛みだ。
これが来るたびに起きる。
それでも僕はここに来なければならない。
ここに来なければ僕は痛みのせいで日常生活もままならなくなるだろう。
本当に今でも思う。
なんで猫なんて助けようとしたのだろう。
猫なら逃げられたかもしれないのに。
僕が飛び出さなければ彼女が出てくることはなかっただろうに。
本当に、何もしなければよかったのに。
そして、彼女を見たらいつも思う。
そんな笑顔はやめてくれ。
それ以上は僕が僕でなくなってしまいそうだ。
君は何故笑っているんだ。
なぜ僕を庇ったんだ。
その理由を教えてくれ。
お願だ。
起きてくれ。
このままでは壊れてしまいそうだ。
お願だ。目覚めてくれ。もうこんな思いは…。
ごめんなんだ。
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