発見とFクラス
最初にお詫びを。
すみません。前回の後書きに『月上視点』って書きましたが、無理でした(汗)。
一応書いたのですが、あまりにもひどかったためボツにしました。もう少しキャラを掘り下げてから掲載しようと思います。
本当にすみませんでした。
紅色さんと簡単な打ち合わせをした私は、職員室の中にいた。
職員室はかなりの大きさで、教室を4個ほど繋げた広さだ。少し視線を移せば、名立たる教師が視界に入る。あっ、あの人は護衛対象だ。
「黒沼?」
少し余所見をしていたのが悪かったのか、目の前にいる教師が怪訝そうに呼んでくる。私は仕方なく教師に目を向けた。
――――――塩長 護。
それがこの教師の名前だ。十二家の一つ、塩長家の長男で、将来は家督を継ぐことを約束されている。まだ26歳と若く、その整った容貌もあって女子生徒には人気があるらしい。毎年、告白する者もいるとか。体は均等に筋肉が付いており、無駄な脂肪は排除されている。身長もすらりと高く、190センチ前後だろう。この人も護衛対象だ。
「何ですか?」
私はお馴染みの営業スマイルで首を傾げた。その堂々としている態度が良かったのか、塩長は苦笑いをしたが何も注意はしない。
「俺は塩長護。黒沼の担任だ。これからよろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「よし、じゃぁ早めに教室に行くか。お前を紹介しないといけないとな」
塩長は「ついて来てくれ」と言うと、職員室を後にする。私もそれに続く。
廊下はまだ生徒で溢れており、喧騒が鼓膜を激しく揺らす。その中の女子生徒の何人かは、塩長のことを熱い目で見つめている。お盛んなことだ。私の方にも視線は来ているが、月上も言っていた通り物珍しいだけだろう。転校生で眼帯とくれば、嫌でも目立ってしまう。とっ――――――。
(……ああ)
廊下の向こう、距離にして80メートルほどだろうか。人と人の間から一瞬だけだったが、訓練されたこの瞳には確かに見えた。
腰まで伸ばした光沢のある黒髪を優雅に揺らし、威風堂々と胸を張って歩いていた。男女問わずその姿を追い掛け、クールにきりっとした表情をぽーっと見ている者もいる。
(大きくなったな~)
彼女は私の半身だったはずの存在。本来ならば、私も彼女ように優秀になるように運命付けられた存在。
しかし、一方は人生の絶望を、失望を与えられ
一方は人生の希望を、有望を与えられた。
――――――姫島 澪。
私と共に産まれ、双子の妹。二卵性双生児のため、顔はあんまり似ていない。正直に言って澪の方が断然綺麗だと思う。ずいぶんと雰囲気や容姿は変わっていたが、それでも一目見ただけで分かった。と言うか、彼女も護衛対象なので資料で見ていた。
「お~い、早くしろ~」
苦笑気味の声がしたのでその方向に首を回すと、塩長が階段の所で私を呼んでいた。
「黒沼奏です。よろしくお願いします」
この学園に来てすっかり言い慣れた『よろしくお願いします』を口に出し、軽く頭を下げる。パチパチとそこそこの拍手が鳴った。
「黒沼への質問は後にしてくれよ。今日は連絡事項がかなりあるんだからな。黒沼、あの空いている席に座ってくれ」
塩長がそう言って指し示した席は、一番窓側の列の一番後ろだった。私は「はい」っと短く返事をして、机と机の間を移動する。その間も眼帯に生徒たちが注目しているのが確認できた。いい加減ため息をつきそうだったが、息を飲むことでそれを我慢する。
私が席に座ったことを確認した塩長は、プリントを配って今日の全体的な説明を始めた。すでに紅色さんから聞かせれていた私にとって、とても退屈な時間だ。
外を見ようかと考えていた時に、唐突に肩をトントンと叩かれた。隣の席を確認すると、ワインレッドの髪をポニーテールにした少女が、勝気そうに口を歪ませながらこちらを見ていた。とてもスタイルがよく……って、この学園スタイル良い人多くない?胸とか、胸とか、胸とかっ……!!
「よっ、転校生。この学園には慣れたかい?」
ハスキーボイスの耳心地が良い声で、何の脈絡もなく質問してくる。
「まぁまぁ慣れたかな。少なくとも、自己紹介もなしに質問されるぐらいには」
少し皮肉気に言葉を返すと、少女はますます面白そうに表情を変えた。それと共に目をギラギラさせながら顔を近づけてくる。
「ははっ、それもそうだな。オレの名前は城道院 桜だ。よろしくな」
桜……容姿と全然会ってない気がする。
「桜……容姿と全然会ってない気がする」
「ははっ!お前はっきり言うな」
「あっ」
しまった。つい考えを口に出してしまっていたようだ。
「気にするな。オレもそう思っているんだからな」
バツが悪そうにしていた私をフォローするように、城道院はからからと豪快に笑う。今、ホームルーム中なんですけど。何で誰も注意しないわけ?塩長ー?
ちなみに城道院も十二家の一角であり、十二家の中でも最大の発言権をもつ家だ。だから本当は城道院桜のことは知っていた。
なんで名門家がFクラスにいるのか疑問を持つ人もいるだろうが、そこはおいおい話していくとしよう。
「オレのことは桜と呼んでくれ。似合ってない名前だろうが、オレは何気に好きなんだ」
「んっ、わかった」
「よし!これからの学園生活は、オレが面倒見てやるからな!」
桜はクラス中に宣言するように声を張り上げると、私に向けて手を差し出してくる。思わず微笑んでしまった私は、その意図を理解し握手をした。
今回は十二家のオンパレートでした。個人的には桜さんがお気に入りです。
感想・誤字の指摘など待っています。
今回も読んでくださって、ありがとうございます。