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友達と奇異の目

展開遅いですかね?

 そんなこんなで4月8日。始業式の日だ。


 いつも通りに6時30分に目を覚ました私は顔を洗い、ビニールに包まれた新品の制服を取り出す。制服は男女共にブレザーで、黒を基調としている。赤いラインが襟などに走っていた。


「っと」


 ネクタイをキュッと締め、洗面所の鏡で形を確認する。バッチリ決まっていた。


 椅子にかけている眼帯を取り、するすると左目を隠す。次に後ろ髪をキッチリとゴムでまとめ、まだ形が崩れていない学生鞄を引き寄せる。


 準備完了だ。


 時計を見ると、まだ15分しか経っていない。でも、計画通りだ。


 玄関の方へ歩いて行くと、コンコンと軽いノックがされた。


「黒沼さん?」


「は~い。ちょっと待ってね」


 ドアの向こう側にいる少女にそう言うと、昨日きたばかりの学生靴を私は履いた。中々履き辛い。


「行ってきます」


 誰もいないから、ぼそりと小さく呟く。


 ドアをドーンと開けると、そこには月上が太陽の光に反射しながら立っていた。……天使かっ!


 私の姿を確認した月上は、ふんわりと微笑んだ。


「おはようございます、黒沼さん。今日も時間ぴったりですね」


「おはよう。じゃぁ、行こうか」


 私たちは並んで廊下を歩き出す。


 私が月上に不審者扱いされてから、ずいぶんと仲良くなった。と言うのも、月上があれから毎日私に会いに来てくれたからだ。それは謝罪からか、それとも転入生のことを心配してくれているのか。どちらにせよ嬉しいものだ。他人から会いに来てくれるなんて、人生でも数回しかない。ちなみに、母さんは別だ。


「すみません。私の時間に合わせてもらって」


 月上が申し訳なさそうに私を見た。まるで、飼い主に怒られるような犬だ。


 思わず苦笑した私は、気がつくと月上の頭をポンポンと軽く叩いていた。


「別にいいの。私だって早く行かないといけないし、それに月上以外に友達がいないからね。友達と一緒にいたいのは普通でしょ?」


 少し照れくさかった私は視線をそらしたが、視界の端では月上が満面の笑みになったのを確認出来た。


「ありがとうございます」


「んっ」


 短く頷いて、月上の頭に乗せていた手を下ろした。


 階段をトントントンとリズム良く降り、食堂に入る。まだ時間が早いためか、座っている生徒は少ない。しかし、その誰もが私たち、いや私の方に意識を向けていた。敵意は一つも感じられないが、良い気分はしない。


 きゅっ。


 そんな私の心情を察したのか、月上は私の手を引くとさっさっと食券販売機に進む。


「どれが良いですか?」


「えっ、じゃぁAランチで」


「わかりました」


 私がお金を渡すと慣れた様子で購入ボタンを押し、出てきた二人分の食券を持ってカウンターに移動する。食券とランチを交換して、近くにあった空いている席に私たちは座った。


「あまり気を悪くしないでくださいね。みなさん転校生が珍しいだけですから」


 目の前に座った月上が、困ったように微笑みながらフォローをする。


 確かに、この学園に転校生は珍しい。ただでさえ難関の試験を合格して入学しているのだ。編入試験はその数段は上の試験で、合格した者はかなり優秀でないといけない。それに、それほど優秀なら普通の試験を受験した方が、合格する確率は上がる。よって編入をする利益はあまりなく、転校生はよっぽどの理由がない限りいない。


「気にしていないよ。分かってたことだし」


 私は何でもないように言うと、ランチについていたコーンスープを一口飲んだ。











「えっ、黒沼さんFクラスなんですか!?」


 朝食を取った私たちは、高校区画の正面玄関の前にいた。そこにはすでにクラス編成が張り出されており、生徒の一人一人が様々な反応をしている。


 と言うか。


「月上ってAクラスだったんだね~……わっ、しかもSクラスにも入ってる。って同じ2年生だ。敬語使っているから年下と思ってたよ」


 風紀委員ってことでそうとうな実力者だとは分かっていたが、まさかSクラスにも入っているなんて。


 皇総合魔法学園の高校区画では、A・B・C・D・E・Fまでのクラスがある。振り分ける基準は生徒の成績で、Aに近いほど優秀というわけだ。私が転入するFクラスは最下位。このクラスの他にもSクラスと言う特殊なクラスが存在して、成績上位の生徒や才能のある生徒がそこに所属している。と言っても特殊クラスなので、選択授業の時しか機能しないらしい。なのでSクラスに所属する生徒は、同時に別のクラスに所属していることになる。


 私が感心したように月上に視線を移すと、彼女は驚愕した様子で固まっていた。


 まぁ、書類上では編入試験したことになっているから、それに合格していると言うことは成績が良いと思われていたのだろう。現実は試験なんて受けてないし、魔法もほとんど使えないんだけど。


「月上~?」


 私が月上の目の前で手をひらひら振ると、彼女はハッと我に返る。


「風紀委員会いかなくていいの?そのために早起きしたんでしょ」


「え、いや……でも」


「ほらほら時間ないよ。私も職員室行かないといけないから」


 何か言いたげにしている彼女の背を押した。月上は渋々といった感じで、早足に歩いて行った。


 月上の姿が見えなくなるまで見送った私は、朝の新鮮な空気を肺に取り込んだ。


「ん~~~~~……っと。仕事の打ち合わせに向かいますか」

護衛対象30人ぐらい居るのにまだ一人。

おかしいですね。


たぶん次は月上視点ですかね。たぶんですけど……。


読んでくださってありがとうございます。

感想・誤字の指摘など待ってます。

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