学園と門
最近、寒くなりました。
さむっ!
というわけで5話目です。
「……でっか」
8時間ほど空の旅を満喫した私は、太陽が垂直になる直前に皇総合魔法学園の正門前にいた。
鉄の門の横幅は大型トラックが2台並んでも余裕がありそうで、高さは私の10人分ぐらいあるだろうか。敷地の境界線を表している煉瓦の壁は、門よりも高く、左右に広がっている。監視カメラが所々に設置しており、門番が門の向こうでこちらに睨みを利かせていた。
「それに魔法障壁と赤外線、対空用の魔法まで空に展開しているなんて……ずいぶんと厳重な警備ね」
私でも感知出来るほどの魔法だ。相当な魔力を込めているのだろう。赤外線や監視カメラは匠に隠してあるが、これは経験の上で気づいた。
ぼーっと突っ立っていても仕方がないので、とりあえず門番に話しかけようと思う。
第一村人発見!とな。
「あの――――――」
ガコンと鈍い音を立てて、重厚そうな門が左右にゆっくりと開いていく。
えぇ~、私話しかける直前だったんですけど。このにっこり営業スマイル全開の顔はどうすれば?
ぎぎぎっと軋むような動きで顔を無表情に戻す。
「……」
さて、これは歓迎されている証拠なのだろうか?門番は相変わらずこちらを睨んで、今にも魔法を放ってきそうだ。
怖いので、ちょっと様子を見ることにした。
――――――5分経過。
状況に変化なし。
――――――10分経過。
門は開いたまま。門番は睨んだまま。私は立ったまま。
――――――15分経過。
門は開いたまま。門番は以下略。
――――――20分経過。
門は以下同文。
――――――25分け――――――
「って、待ってられるかーーーーい!!」
春の陽気に当てられるのも気持ちいいが、すでに太陽は頭の上に到達していて少し暑い。
この状況に耐え切れなくなった私は、風を切るように走って門を潜った。若干門番にひやひやしたが、門番は変わらない眼光で見守っていてくれる。
えっ?あの目つきがデフォルメなの?
門を通過し、桜の並木道を通り過ぎた私は、綺麗に清掃された石畳の上を歩いていた。どうやら、この石畳は学園のど真ん中を走っているらしい。右には小学校区画、左には中学校区画が広がっており、子供たちの喧騒がすごい。あと、魔法の起動音と破裂音がドッコンドッコン聞こえてきた。さすが魔法学園。喧嘩も想像を絶する。
学園の区画の間は、障壁で区切られており、決められたところからしか出入りが出来なくなっていた。
「本当にすごい設備。私の護衛は必要なのかな」
正直に言って、この学園の守りを崩すには軍隊が必要だ。それでも、何日かは籠城できるだろう。内部も何かあったら警報が鳴るように出来ているし、警備員が一定間隔で巡回している。だが――――――。
「逆にきな臭い」
まるで、ここには大切な何かを隠しているかのような念の入れ方だ。それとも、ただ単に生徒を心配しているだけか。
「っと、そんなことはどうでもいいか。仕事に集中集中」
仕事に害がなかったら、それでいいかな。あまり首を突っ込まないほうが良いかも。
それからしばらく歩いていると、ようやく高校区画が見えてきた。その向かい側に建っているのが大学区画だろう。
「……広すぎ」
昔、母さんから貰った腕時計を見ると、門を抜けて20分は経っていた。
少しだるくなった両足を動かし、高校の正門に近づく。20分前に見た門と同じように、ある程度距離が縮まったところで開いた。
「私は学習する」
鼻でフンッと笑い、高校区画に足を片方入れた。
「止まってください!!」
あれー?
――――――side ???
皇総合魔法学園の中学校、高校、大学には風紀委員会が存在している。その名の通り、生徒の風紀を守っているわけだ。ただ、魔法中心の学園なので魔法によるトラブルが多い。そこで風紀委員会の生徒は、この学園の中でも優秀な者が所属している。
基本活動は区画間の生徒監視、校内パトロールなど面倒なものばかりだ。
当初は各区画で独自に活動していたが、学校行事などで連携ミスが目立ち、その対処法として委員会は一本化された。この連携ミスはほとんどの委員会であったので、今では一本化されたものが多い。
「……ふぅ」
少女は肺の中の空気を換えるように、軽く息を吐いた。
高校の正門にすぐ横にある詰所に少女は座っており、気の抜けた様子で門を見つめている。腕に巻かれた腕章は、風紀委員の“風”が装飾されていた。微かに春の風が少女の茶髪を撫で、徐々に眠気を誘ってくる。
「だれもいない……」
少女は風紀委員の仕事でも一番暇な仕事、区画間の生徒監視をやっていた。
通常、別の区画に行くためには、許可書を各区画の事務室から貰わなければならない。それを詰所にいる風紀委員に渡すことで、移動の許可を得ることができる。門は自動ドアと似て勝手に開くのだが、風紀委員が詰所で見ているので違反をする生徒は少ない。ようは、とても楽な仕事なのだ。
少女は春特有の暖かい気温に、こくりこくりと船を漕ぎだした。
ピーーーーーーーーーーーー。
もう夢の旅に飛び立とうとしていた時、違反者が出た合図である電子音が詰め所に鳴る。
「っ!」
一瞬で目を覚ました少女は、壁にかけたあったロッドを手につかんだ。
「“フェン”」
少女が短く詠唱すると魔法陣が空中に浮かび、次の瞬間には正門に移動していた。彼女の目の前には黒髪の少女が校内に入ろうとしており、学園指定の制服を着てないのを見た茶髪の少女は、不審者と判断しロッドを突きつける。
「止まってください!!」
やっと学園のキャラクターを出せました。
バトル描写とかやりたいです。へたですけど……。
こんな駄文を見てくださってありがとうございます。
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