月上と可愛い
色んな物語を読んでみましたが、やはり寝取られ系のお話は苦手です。
自分の恋人が、別の恋人とイチャイチャするなんてイライラするーーーーー!!
あっ、今回のお話とは何の関係もないです。
「ど、どうしよう……」
私は自室のベットの上で頭を抱えていた。
いくら桜達の戦う姿勢に腹が立っていたからといって、本気で叱ってしまった。しかもそのままクラス代表になるなんて……!
外部からの人間が多く入り乱れる皇祭では、やはり死角というものが複数産まれる。なのに、参加までしてしまうとは愚の骨頂だ。
「う~ん……紅色さんに頼んで、カメラとか設置しないとな~」
盗撮じゃないよ?……ホントダヨ?
そりゃ、私も年頃の女の子ですから?男子の裸とか気になりますけど、これは仕事です。うん。あとでじっくり鑑賞しようとか考えていないです。はい。
それにしても、また機器を調達しないといけない。まぁ、経費は全て依頼主が払うらしいけど、果たしてそれでいいのだろうか。正直に言って、経費だけでも相当な金額になるのだが。
「……まぁ、しょうがないか」
命を守るためだ。安いものだろう。
そう結論付けた私は、部屋の隅に置いていた救急箱を手に取った。蓋を開けてガーゼと消毒液を取り出す。
「いつつつっ」
消毒液をガーゼに染み込ませ、それを患部に押し当てた。その後、別のガーゼで患部を保護する。
学生同士の模擬戦とはいえ、やはり無傷ではいられなかった。擦り傷、打撲、火傷などなど。まったく、魔法がほとんど使えない自分が恨めしい。
保険教諭の鏡原先生が『よぅしっ!今から保健室に行こう。ほらほら治療して上げるから~』『結構です。見た目ほど酷い怪我ではありませんから。自分で処置します』『いやいや遠慮しないで~。ねっねっ先っちょだけ』『援交!?教師が何言ってんの!?ちょっ先生!名前が出ていない体育教師の先生!!助けてー!!』などと治療を申し出たのだが、やはり傷だらけのこの体見せるわけにはいかない。会話の内容?触れませんよ。
蛇のように絡んでくる鏡原先生を振り切るのは、中々苦労した。あれほどしつこく追ってくるのは、日本の特殊部隊に以来久しぶりの経験だ。
治療、と言うよりは応急処理を終えたところで、ピンポーンとチャイム音が鳴り響いた。
「っと、はいはーい」
急いで部屋着用の黒いTシャツを身に着け、玄関へと向かう。
「あなたの街の奏ちゃんですよー」
なんてことを言いながら、来訪者と対面する。ドアの向こうには、満面の笑みを浮かべた月上が待っていた。
「奏さんっ。Fクラス代表、おめでとうございます!!」
そう言葉を発した月上は、私の手を取って興奮した様子で上下に振り回す。まるで、自分の子供が受験に受かったようなテンションの高さだ。
「あ、ありがとう。でも、何で月上が知ってるの?授業があったのは今日なんだけど」
「風紀委員はそういう情報が集まりやすいんです。大会や行事などは色々と準備がありますから」
月上はそう言うと、えへんと胸を張った。なにこの子、かわいい。と、腰に当てた手にビニール袋がぶら下がっているのが見えた。どうやら、食材が入っているらしい。
私の視線に気が付いた月上は、少し焦ったかのように言葉を紡いだ。
「いや、その……ですね。奏さんのクラス代表を、その~……一緒に祝いたいと思いまして……。私の手料理を食べて頂きたいです。いや、あのお料理には自信?がありますので……き、期待は裏切らないと思います」
ダメ、ですか?と月上は上目づかいで訪ねてきた。
ぐっはぁ!?これは天使以外の何もでもない。頬を朱色に染めながら、不安そうな表情でこちらの顔色を伺うその姿はまさに女神。天使であり女神である!!
男だったら絶対惚れてる。惚れてまうやろーーーーーーーっ!!的な。
「いや、全然ダメじゃないよ。すごく嬉しい」
私は心からの笑みを浮かべて、素直な気持ちを月上に伝えた。食費も浮いて、可愛い娘の料理も食べられるなんて。一石二鳥とはこのことだ。
私の笑顔を見た月上は惚けた様子で停止していたが、次の瞬間にハッとすると顔をみるみる赤くさせる。
「あ、ああああああのあのあのっ!絶対おいしくしますからっ!!」
小さく握り拳を作って、月上はやけに意気込んで言った。かわいい。何回でも言おう。
その後、プロ顔負けの料理を作ってくれた月上と楽しい一時を過ごした。私が「おいしいね」と言うたび、顔を赤くして照れる月上も絶品でした。いや、目の保養だわ。
このような駄文を読んでくださり、誠にありがとうございます。
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